不動産の不況は「目前」だ
2019/11/17
今回の『The UPDATE』では「2020年 不況は来るのか?」と題して、エコノミストの崔真淑氏、GFリサーチ合同会社代表の泉田良輔氏、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏、WealthNavi CEOの柴山和久氏、計4名のゲストを迎えて議論を交わした。
番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、番組内での参加者からの発言「おい、若者よ…現金(かね)を握ってな。」に決定。
不動産コンサルティング企業の代表をつとめる小室議右氏。この道三十年という彼にとって、東京オリンピックと景気の関係はどのように捉えているのか。番組放送後にお話を伺った。
金融機関と密接に関わる「不動産」
小室氏は、36歳のときに不動産業界へと足を踏み入れたという。
小室 大学卒業後、検察官をめざし司法試験の勉強をしておりましたが、断念。
36歳の時に、遅れて来た社会人として不動産企業に入社しました。
特に不動産業界にこだわりがあったわけではなく、大学の教授のつてで紹介してもらったんです。
それがちょうどバブル崩壊期のスタート時(1990年)で、それからは不動産下落の一途。
ピークからの落ち目を肌で感じることができたのは、今から思えばその後の人生の役にはたったかもしれないし、貴重な思い出ではありますが、給料遅配、契約決まらずと、その当時はとんでもない状況でした…
そんな小室氏は、番組内で2020年不況は「来ます、すでに不況です」と答えた。
小室 そもそも、オリンピックがあるかどうかに関わらず、すでに不況だと思います。
それをオリンピックでごまかしているような状態が現在、という認識です。
番組内でもお話しした通り、不動産業界というのは、金融機関のお金の動きと連動した業界です。
金融機関が、お金を出さなくなってしまえばストップしてしまう。
金融機関は、不動産が安定した担保価値を持っているものと評価し、お金を出してきました。
政府も、派生の経済効果の大きさから、国民のお金が不動産に流れるよう住宅ローン減税を含め、そのような政策を続けてきました。
今、金融機関のサラリーマン大家向けの、投資用不動産融資のお金の流れが止まっています。
スルガ銀行の不動産投資の不正問題は、金融機関の安定的な融資先が不動産であるという象徴的な事件です。
その貸し先が、サラリーマン大家だったということです。
ただ、現在も大手不動産筋、ファンド系、金持ち筋にはしっかり金融機関からの不動産向け融資は行われ、大きなお金が動いています。
海外投資ファンドから見れば、日本の収益不動産はまだ買いです。
銀座や青山などは、思い切り動いている。
資産家の相続性対策がらみの収益不動産購入の動きも相変わらずで、表面利回り2%台、数十億円台が動いているという状況です。
この動きだけ見ていると、状況の全体像がつかめませんが、中小不動産業者の動きを見れば現状が景気が良いのか、悪いのかは一目です。
不況をどう捉えるかは個人によるかもしれません。
ただ、自分の生業の収益の動きが今までとは違う形で減じてきているなら、不況だと思うのではないでしょうか。
不動産は都心で駅近、三階を買う
しかし小室氏は、不動産自体は投資の対象としては良いものだとも言う。
小室 不動産の強みは、やはり一つしかない特定物という点です。
賃貸付けしやすい、外国人にも貸しやすい条件の良い物件を手に入れれば安全でしょうし、これは自宅購入のときの条件の一つでもあります。
実際に、私が買った物件もこのような条件のものはしばしの保有後、2倍3倍、6倍で売れた物件もあります。
タワーマンションブームでしたが、眺望の良さはもって3ヶ月、とよく客には言います。
タワーマンションも立地です。ちなみに、ワンルームマンションは今がピークなので、持っているなら今が売り時です。
最近でも不動産投資を煽る人たちが多く、利回りが低くても買う人がまだおりますので…。
このあたりの不動産投資を間違えてはいけませんね。
不動産業界は下り坂が見えている
小室氏は今日の放送に来た動機をこう語る。
小室 不動産動向は売買の動きが止まり、肝心の金融機関の融資状況が渋い昨今、不況に入っているという認識です。
オリンピックを契機としたインバウンドブームで、新たな賃貸市況の方向性も出てきていますが、全国的な不動産動向は、オリンピックに関係なくさらに沈んで来ています。
しかし、一方で「不況なんて冗談じゃねえ」と思うような業界、お若い方もいるでしょう。
だから、そういう若い方の景気の良い話を聞けたらなと思って参加しました。
私の会社のお客さん筋は、30代社長の中小不動産会社が多いですが、彼らが続々と潰れていくのを目の当たりにしています。
潰れた会社の若い社員さんも、行く先の不動産会社が無い。
とはいえ、この6年近く、サラリーマン向け収益不動産市場はおおいに賑わった。まさにバブルといってもよかった。
だから、30代社長の不動産会社が雨後の筍のようにできたとも言える。それが下落の状況に入りこんでいるということです。
リーマンショックの時もそうでした。六本木ヒルズにあった不動産会社は、かたっぱしから消えていきました。
私が不動産業界に入ってから、会社の収益や地価の上がり下がり、契約本数などをすべてチャートにまとめてみました。
結論から言うと、金融の動きとリンクしているんですよね。
バブル崩壊もリーマンショックも含めてすべて経験した上で、いつ崩壊が来るかと仲間たちと話をしていて6年。
そして、今回の象徴的なスルガその他の金融機関の不動産向け融資の不正が発覚し、融資が絞られている。
過去の教訓から言うならば、不動産はサイクルです。
それは、いずれまた好況が来ることも意味しています。不動産で成功している者は、底で買っているわけではありません。下落途上で買っている。
その見極めは難しいですが、不動産は特定物。
それぞれに売却事情があり、買える物件は必ず目の前に現れます。
築古のワンルーム、何故かひかれる地方の空き戸建て…その時、さっさと動けるかどうかの鍵が「げんなま」です。
それは、100万でも50万でもいいのです。タイミングです。
若者よ、現金を握ってな、とはその意味です。ただ、私はそのターゲットを不動産一本に絞ってきた。
最後に、小室氏は、番組で出た「時間への投資」について自分を省みてしまったとも語る。
小室 時間は有限だ、若者は時間に投資しろ、というお話はなぜか心にしみるものがありました。
いや、もちろん後悔はしていないですよ。人生、先に進むしかないですから。
それに、時間の配分という点では、やはり目標を持つことが大切です。
その目標をどこに定めるかも含め、NewsPicksに登場する若い方たちの意見も参考になります。
逆に私の見解も何らかのお役に立てば、という気持ちで、本日は発言いたしました。
その結果が本日の賞につながりました。ありがとうございます。
11月19日のテーマは「体調管理」
「体調管理も仕事のうち」と言われる日本。
度重なる激務の結果、体調を悪化させて退職するケースも見受けられます。
昨今では、もはや体調管理は自己責任ではなく、会社が責任をもって社員の体調を管理すべきとの考え方も広がりつつあります。
果たして、体調管理は自己責任なのでしょうか?
忙しいビジネスパーソンにとって、ベストな体調管理方法とは何なのでしょうか?
DeNA平井孝幸氏、フリーアナウンサーの大橋未歩氏、産業医の大室正志氏、パーソナルトレーナーで、デポルターレクラブ経営者の竹下雄真氏を招き、徹底討論します。
<執筆:富田七、編集:佐々木健吾、デザイン:斉藤我空>
第一生命ホールディングス株式会社(だいいちせいめいホールディングス、英称:Dai-ichi Life Holdings, Inc. )は、日本の金融持株会社。2016年10月1日に第一生命保険グループが持株会社体制に移行し、第一生命保険株式会社から商号変更した。 ウィキペディア
時価総額
1.97 兆円
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