【世界初独占】「AIの時代」を作った男、初めて口を開く

2019/10/21
その「始まり」をたどっていけば、必ずこの一点に行き着く。
あなたのスマホの顔認識も、好きな曲や動画を教えてくれるレコメンドも、どんな質問にも答えてくれる音声アシスタントも、新時代を彩る自動運転車やロボットも、その爆発的な進化をたどるAIの「ターニングポイント」はここにあった。
2012年9月に行われた画像認識の世界大会「ImageNet(イメージネット)」チャレンジ。
膨大な画像データから、写った対象物を認識するこのコンテストで、ノーマークだったカナダ・トロント大学の研究チームが、2位以下に圧倒的な差をつけて優勝した。
世界の度肝を抜いたのが、そこに使われたモデルだった。
「ニューラルネットワーク」。当時、時代遅れだと思われていたこのAIテクノロジーが、人間の想像を遥かに超える能力を叩き出したのだ。今、このテクノロジーは、ディープラーニングとして知られている。
ここから「AIの爆発」が始まる。
研究チームの3人は即座に米グーグルに引き抜かれ、さらにフェイスブック、マイクロソフト、バイドゥ、ウーバーなど、巨大IT企業が一気にディープラーニングへと巨額をつぎ込み、AIの時代が幕を開けた。
その後、多くの分野でAIが人間の知能を超え始めたのは、ご存じの通りだろう。
しかし、人類の歴史にも影響を与えうるこの大きな「転換点」には、一つだけ語られていない歴史がある。というのも、この革命的なモデルAlexNet(アレックスネット)を発明した「張本人」が、表舞台に一度も姿を現していないのだ。
トロント大学の研究チーム3人のうち、指導教授のジェフリー・ヒントンは「AIのゴッドファーザー」として称賛を浴び、2019年3月にコンピュータサイエンス界のノーベル賞と呼ばれる、チューリング賞を受賞する。
もう一人のイリヤ・サツキーバーも、囲碁でプロを叩きのめした「AlphaGo」の開発に携わり、その後はイーロン・マスクらと共にOpenAIを創業した。
ともにAI界の誰もが知るトップスターだ。
AlexNetでAI時代を開花させた、トロント大学のジェフリー・ヒントン教授(右)、イリヤ・サツキーバー(左)、アレックス・クリジェフスキー(中央)(写真:John Guatto/トロント大学)
しかし、その革命的モデルに名前を冠したアレックス・クリジェフスキーだけは、素性は謎に包まれたまま。その偉業を語ったことさえない。
NewsPicks編集部は今回、世界中のメディアがこれまで成功してこなかったアレックスへのインタビューを、世界で初めて実現した。
特集「AIカナダ」第1回の本日は、歴史の転換点を綴った、彼の貴重な証言のすべてをお届けする。同日公開のショートドキュメンタリーと共にご覧いただきたい。
世界が変わった「7年間」
第一印象は「不器用なソフトウエアエンジニア」だった。
引き抜かれた先のグーグルを2017年に辞めた後も、アレックスは米サンフランシスコに居住している。そのサンフランシスコでなら会えるという返信が突如、アレックスから届いたのだ。
急遽NewsPicks取材班はトロントから日帰り便でサンフランシスコへ飛び、彼の住むマンション前の広場で対面した。そして彼は、言葉を一つ一つ丁寧に選びながら語り始めた。
アレックスへのインタビューを行ったマンション前の広場(写真:池田光史)
──なぜ今回、インタビューを受けてくれたのですか。脚光を浴びるのは、あまり好きじゃないのでは。