【サバイバル】スタートアップは「アップルカード」と戦えるのか

2019/10/10
アップルがアメリカで始めたクレジットカード「アップルカード」のように簡単に送金できて、支払額に応じてポイントが貯まり、年会費が無料のカードがある。
VISAブランドのプリペイドカードをスマホのアプリ上で発行する「Kyash(キャッシュ)」だ。アプリから申し込めば、リアル(物理)カードも発行できる。
Kyashは、2015年1月に設立されたばかりのFinTech系スタートアップ企業で、2019年4月にはVISAがKyashを「プリンシパルメンバー」と呼ばれる、VISAカードを発行できる企業に選んだ。
日本のスタートアップとしてVISAから「プリンシパルメンバー」に選ばれたのは初めてで、取引量を急速に増やしたことが認められたからにほかならない。
その一方で、仮に「アップルカード」が日本に上陸するとすれば、Kyashのようなサービスは太刀打ちできるのだろうか。Kyashの鷹取真一社長に話を聞いた。
彼らの取り組みからは、スタートアップ企業がGAFAなど巨大企業への挑み方が見えてくるかもしれない。
鷹取真一(たかとり・しんいち)Kyash代表取締役CEO
1985年生まれ。早稲田大学国際教養学部卒業後、三井住友銀行に入行。 法人営業を経て、経営企画にて海外拠点設立、金融機関との提携戦略の担当として国内外の銀行モデルを研究。その後、米系戦略コンサルファームの日米拠点にてB2C向け新規事業に携わる。次世代の通貨を構想し、2015年にKyashを創業。一般社団法人Fintech協会の理事も兼務。(撮影:谷口 健)
「2%還元」の破壊力
──Kyashは2017年4月にウォレットアプリを発表し、2018年6月に2%還元策を始めて、ユーザー数が急成長しました。2%還元は、どう影響しましたか。
ユーザー獲得もそうですし、Kyashを説明する時に、浸透効率のいい形容詞を手に入れたことは大きかったです。「一番お得なVISAカードだ」と、ひと言で説明できるようになりましたから。
実は、2017年4月に最初のアプリをリリースした時は、「個人間送金アプリ」として出しました。クレジットカードや銀行口座からアプリ上のバーチャルなVISAプリペイドカードにチャージして、送金できるというものでした。
ただ、正直なところ、個人間送金アプリは早すぎました。
(写真:iStock/YakobchukOlena)
お金を送るためには相手もアプリを持っていなければならないのに、ユーザーは周りにいない。貸し借りが発生する場面で、送り手と受け手を同時にユーザーとして獲得しなければならないのは難しかったです。