線虫でがん検査、20年実用化へ 東京のベンチャー、約85%特定
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この手の報道で、しばしば単一の数字により検査の「精度」が表記されるのですが、これが感度を示しているのか特異度を示しているのかによって、可能性のある検査の用いられ方は大きく異なります。
なお、これが感度としても特異度としても、85%という数字は、多くの既存のがん診断法を大きく上回るものではなく、どのような用途を想定されているのかは、あまり想像ができません。まして、該当する方法は診断プロセスがブラックボックスであり、現場の医療従事者に好まれにくい方法です。(15%の障壁をなんらかの思考過程で克服することが全く不可能だからです。)
さらに、既存の検査方法を大きく上回る可能性のあるcell free DNAなどの技術が開発される中で、提示された検査方法は現時点では将来性にも乏しいのかもしれません。ただし、この線虫ががんを嗅ぎ分けるメカニズムを研究し追求することで、将来的により精度の高い検査方法の確立や臨床応用の可能性がないわけではないと思います。リキッドバイオプシー(血液などの体液による検査手法)によるがんの早期発見に関する市場は、海外有力VCもこぞって出資をしているホットな領域です。
(有名なのは、SVFが出資するGuardant Health社、ビルゲイツ/ジェフベゾス/GVが出資すGrail社、a16z/Sequoia Capitalが出資するFreenome社等)
国内では、先日東レより精度95%(感度なのか特異度なのかは不明ですが)の血液一滴による診断薬が今年度中にも承認申請されるとのニュースがありました。
東レや上記3社が血液の中に含まれるctDNAやmiRNAをを検出するのに対し、HIROTSUバイオサイエンス社の手法は、線虫を使った尿検査というアプローチがユニークです。
現時点での精度はやや低そうですが、コストも比較的抑えられている手法ですので、更に研究が進んでいくことを期待しています。非常に画期的かつ素晴らしい技術です。
今回は検診などでの利用とのことで、健康保険外の部分から実用化されていきますが、ぜひ保険適応になる日が来ることを願います。
これまでがんの検査といえば基本的には機械の中での分析でした。それが虫により、物によってはこれまでの検査を超える精度で発見されるのですから、これぞ生命の神秘でしょう。
応用的にはがんへの薬剤の運び屋としての線虫利用も可能かもしれませんし、応用性もまだまだあるでしょう。
現実的な問題もあります。
実用化されるにあたっては、どれだけのがんを区別でき、どのがんは見逃すのか、それぞれがどれだけの確率か、というのを仔細に調べていく必要があります。少人数の実験的段階から、市井に出回ると新たにわかる問題も多々あります。相手にする人数が圧倒的に多くなることで、これまで観察されていなかった問題も判明します。
それをもってして、病院で扱うレベルまでの制度や安全性があるならば、保険収載される日は遠くないかもしれません。
またこの検査があるからといって、ほかの検査が不要になることはありません。既存の検査も活用しつつ、一つの手立てとしてこの検査を使っていく、今後そのような展開になると思います。