[ドバイ/ロンドン/リヤド 30日 ロイター] - サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの取締役会がニューヨーク証券取引所への上場について、法的なリスクが多過ぎるため現実的な選択肢ではないと判断したことが、複数の関係筋の話で明らかになった。

関係筋によると、アラムコの新規株式公開(IPO)が昨年、一時棚上げされる前、ムハンマド皇太子はニューヨーク市場への上場を望んでいた。トランプ米大統領もサウジアラビアに対し、ニューヨークでの上場を呼び掛けていた。

しかし、IPO計画を巡る事情に詳しい関係筋はロイターに対し、閣僚とアラムコ幹部で構成する同社の取締役会が8月の会合で、「アラムコがいかなる法的措置からも保護される免責特権を与えられない限り」米国での上場は検討しないとの結論に達したと明らかにした。

関係筋は、アラムコに免責特権が与えられることは「完全に不可能ではないが、当然実現し難い」と述べた。

ムハンマド皇太子はアラムコの企業価値が約2兆ドルに上ることを期待しているとされるが、一部インサイダーや銀行は過大評価と指摘。関係筋は、ニューヨーク証券取引所への上場検討を取りやめるなどの動きは、サウジ政府がIPOに対しこれまでよりも現実的になっていることなどを示唆しているとしている。

関係筋は、サウジ政府がアラムコの株式95%を維持するとみられることから、ニューヨークに上場すれば、情報公開のプロセスのほか、複雑な各種規制がサウジ政府の主権と相いれない可能性があると指摘。米国の「テロ支援者制裁法(JASTA法)」のほか「石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法」により、アラムコが米国で訴訟を起こされるリスクもあるほか、気候変動を巡り米国で石油会社を相手取り起こされている訴訟にアラムコが巻き込まれるリスクもあるとしている。

アラムコのIPOは当初は2017年に予定されていたが、繰り返し延期され、現在では石油化学大手のサウジアラビア基礎産業公社(SABIC)<2010.SE>の過半数株式取得完了後の2020年か21年になるとみられている。

アラムコの主要上場先はリヤドになるとみられているが、この他にロンドン、香港、東京も候補に挙がっている。

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