【佐藤亮子】育児は「仕事」と割り切るべき

2019/8/24
8月20日の『The UPDATE』は「#ママキャリア 本当の敵は何なのか?」。
サイバーエージェント執行役員/2児の母の石田裕子氏、LiB代表取締役CEO 松本洋介氏、東大理IIIに子ども4人を合格させた佐藤亮子氏、産業医の大室正志氏、計4名をゲストに迎え、ママキャリア形成を阻むものとは何か?について議論した。
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古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、佐藤氏の「敵は社会制度と自分!」「てか、自分」に決定。
「専業主婦」の道を極めた佐藤氏は、「育児」と「仕事」の兼ね合いについてどう考えているのか。番組放送後、お話を伺った。
全力で「専業主婦」をやろうと決めた
佐藤氏は、もともと学校で英語の教師をしていたが、子どもが生まれると同時に、退職し専業主婦になることを決める。
2年間のキャリアを捨てることに対して、躊躇などはなかったのか。
佐藤 2年間、生徒とその親御さんと向き合ってきて、生半可な気持ちじゃ子育てはできないってことをずっと感じていたんですね。
母親になるなら、子どもが大学に入るまでは教育に全力を注ぎたいと思って、専業主婦の道を選びました。
自分で決断したことですから、ためらいは全くなかったですよ。
それに、自分がどれだけ仕事を頑張っていたとしても、振り返ってみたときに自分の子どもがどうしようもない状態だったら、それは良くないでしょう。
自分の子どもをちゃんと育てて社会に出す、それだって「仕事」じゃないか、と思えたんです。
たとえば、家で勉強を見ていて、問題の丸つけを私がしているときに、子どもから話しかけられたら、「ママはいま仕事中だから」って言ってましたよ。
子どもたちのためにノートを作ったり参考書を買ってくるのも、すべて仕事という感覚でやっていました。
もちろん、私の場合は夫が働いていて、稼ぎも普通にあったから、自分が働かずにできたということも事実です。
ただ、夫がいつ働けなくなるか、という危機感はもっていました。
ですから、いま私が専業主婦として全力でバックアップできるうちに、しっかり勉強しなさい、とは子どもたちに伝えていました。
育児も「仕事」と捉える
育児を「仕事」と捉えると、心持ちも変わる、と佐藤氏は言う。
佐藤 たとえば子どものテストの成績が悪かったとして、仕事の感覚がなければ、落胆したり苛立ったりするかもしれない。
でも仕事として捉えてみれば、子どもの点数というのは仕事による「成果」になるんです。成果が出ないというのは、仕事のやり方が悪いということですよね。
だから私が反省するんです。
「あなたが勉強しないから点数とれないでしょ!」って怒る親もいると思います。
そうじゃなくて、親のやり方がいけない、そう割り切って考えるようになる。
悩みは割り切るしかない
仕事と育児のバランスが取れないというワーママの悩みについては、一貫して「割り切るしかない」と答える。
佐藤 外で仕事をするか、家で仕事(=育児)をするか、一人の人間に出来るのはそのどちらかでしょう。
どちらも完璧にやりたいと言ったって、それは「ふたつの仕事を同時にできるんですか」という話です。
多くの人にとっては無理じゃないですか。私は答えの出ない問いの間で悩んでいるように見えてしまう。
佐藤氏は、そう言い切りながらも、自身の仕事が教師だったことが大きいと話す。
「私の場合は前職と育児の方向性がかなり近いものだったから、簡単に割り切れたのかもしれませんが」と付け加える。
佐藤 人を育てるという点で、教師と育児はリンクする部分がありました。
キャリアを捨てることが嫌だというワーママの中には、仕事の性質が育児とはまるで違う、という方も多くいるでしょう。
ただ、それって「仕方がない」ことではないですか。ふたつの道を一度きりの人生で歩むのは無理ですから。
中途半端になってしまったら、子どもに対しても仕事に対しても失礼じゃないですか。
そこは割り切らないと。割り切り方が中途半端なんだと思います。
人と比べなければ「孤独」にならない
番組内では、育児をする上での母親が抱きやすい「孤独」についても言及されていた。
キャリアを捨て、家に入ることに決めた佐藤氏は、専業主婦として孤独に感じる瞬間はなかったのか。
佐藤 一切感じなかったですね。孤独を感じているということは、誰かと比べているっていうことなんですよ。私は誰かと自分を比べることがありませんでしたから。
たとえば同世代の女性が留学に行っていたり、バリバリ働いている話を聞いて、いいなと思う瞬間は確かにありましたよ。
彼女たちが外に出ている間、私は家で子どもたちに勉強を教えていたりする。でも、彼女は彼女、私は私、と完全に割り切れていましたから、いいなあと思う程度でしたね。
私は私で自分の道を選んだんですから、他人の人生と比べたってキリがない。
それに、自分で子どもを産んで育てると決めた人が「孤独を感じる」って、それは子どもに対しても失礼じゃないですか。
ママが安心して働ける社会制度は必要
佐藤 上の三人の子が東大医学部に通ったときに本を出したんですね。
そのあたりから一ヶ月に二回くらい講演会が入るようになりました。末っ子の娘が高校生くらいのときですね。
基本は専業主婦だし、月に二回程度の講演会がある生活はうまくいっていました。
ただ、ある日講演会に行こうとしたら、娘が「熱が出てしまった」と言うんです。
その時、つい「なんで今日に限って熱を出すかな」と思ってしまった。これは、母親になって初めての経験でした。
それまでは、子どもの具合が悪くなったら心配で仕方なかったのに、その時ばかりは、自分の講演会を優先して考えてしまったのですね。
高校生だったからまだよかったけど、もし2歳とか3歳だったら大変だったなと思います。
あのとき初めて「仕事しながら子育てしている人って、こういう大変なことがあるんだ」って実感したんですよね。
だから、たとえばちゃんと医療機関と連携された保育園や施設など、社会的にもっと制度が充実することは必要だなって思うんです。
具体的なスケジュール管理が大事
よくワーママから「仕事もしたいけど、子育てちゃんとしたい。仕事は辞めた方がいいんでしょうか」という悩み相談を受けるという佐藤氏。
「私が辞めろって言ったら辞めるの?」って聞くと、「辞めないです」と返ってくる。
今回は働くママ約50名が議論に参加した。
そういった悩みをもつワーママに対して、
「やめないと決めたなら、自分の24時間をちゃんとスケジュールとして組み立てる。」
「どうやって子どもに時間を費やせるか、具体的に考えればいいんです」と語る。
佐藤 私は決して、子をもった母親は全員専業主婦になれ、なんて思っていません。
仕事を辞めたくないけど育児も手を抜きたくない、というどっちつかずのところで悩んでいることに、疑問を感じているだけです。
自分で選んだ道であれば、それが現状どうすればうまくいくのか、自分自身で具体的に考えてみればいい。
働いているお母さんが社会に増えているからこそ、昔に比べて少しずつ女性が生きやすい社会に変わっていっていると私自身も実感しています。
だから、働く女性が増えるのはいいし、尊敬もしている。でも、子どもを犠牲にして働くのは、やめてほしいなと思う。
そのためにも、犠牲にしなくてもいい社会制度は必要だなと思っています。
8月27日は「東京パラリンピック」
東京パラリンピックの開催が、来年に迫ってきました。東京パラリンピックへの関心度が61%となった一方で、実際に現地に観戦に行きたい人の割合はわずか1%だともいわれています。
ロンドンのパラリンピックは史上初のチケット完売という偉業を成し遂げましたが、東京パラリンピックは同様に熱狂を生むのか?
パラリンピックを一過性の祭典として終わらせないために、私達は何ができるのか?
"百獣の王"の異名を持つ武井壮氏、パラ・クリエイティブプロデューサー栗栖良依氏、車椅子インフルエンサー中嶋涼子氏、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の夏野剛氏、社会起業家/パラリンピック銀メダリストの上原大祐氏をお招きし、東京パラリンピックの成功について、様々な角度から議論します。
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<執筆:富田七、編集:木嵜綾奈、デザイン:斉藤我空>