スタートアップのバリュエーションの変遷とIPO市場の変化~日米VC比較、CVC編~
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ユーザベースによる買収前から、アントレペディアを運営するジャパンベンチャーリサーチの年次資料はウォッチし続けてきました。
いかんせん、未上場企業の資金調達は非公開情報ですし、ここに記載されているデータも正確なものではありません。新しい資料が出ると、過去の数値がブレているといったことも往々にして生じる不完全な内容ではあります。それでも、スタートアップのファイナンス環境の変遷を、大まかに掴むにあたって、本稿で挙げられている資料は大変有用な内容だと思います。
社会全体におけるスタートアップの存在意義は、世の中の変化に伴って生じる新たな課題、既存の組織では対応しきれない課題に対して、迅速かつ柔軟な解決策を提示すること、また、そうした解決策の確立を通して、後世に遺すべき新たな産業を創出することだと捉えています。
一方で、スタートアップに資金を提供する投資家が社会全体から求められている役割が何かをステップバックして考えてみると、アセットオーナーからお預かりしている資金を大きくしてお返しすること、並びに、世の中に偏在している資金を、必要とするところに移していくといったことではないでしょうか。
有効活用されていない資金をひっぺがして、必要とする起業家や企業に移すこと、謂わば社会全体のリソース最適配分を図る、バランサーの機能だと思います。
こうした役割を全うするためにも、VCがアセットクラスの一つとして認識されることが重要です。その点で、一部の機関投資家がVCに投資するようになってきたことは、非常にポジティブな傾向だと感じます。10年前と比較するとスタートアップの資金調達環境は相当変わりました。ベンチャーキャピタルのファンドサイズの大型化や、ラクスル、SansanのようにプレIPOラウンドで機関投資家から資金調達してIPOする事例もでてきています。プレIPOとIPOの境目がなくなってきていると思われます。
オファリングに参加可能な機関投資家のプライベートラウンド参加においては、金融商品取引法の事前勧誘行為に該当しないよう留意が必要です。LPがVCのリターンに興味を持っていないから、VCがパフォーマンス重視しないのではなく、
まだ十分にパフォーマンスを上げられていないから、パフォーマンス以外のリサーチやオープンイノベーションといった付加価値で差別化しようとしている、というケースの方が多いように感じます。
ちなみに、国内でトップクラスのIRRを叩き出しているあるファンドは、余計なリサーチやレポーティングなど一切しない、それでも入れたかったら入れていいよ、と言っているらしいです笑