バークシャー・ハサウェイ傘下のファストフード・チェーン「デイリークイーン」では、アイスクリームを独特な方法で提供している。「既存の枠組みにとらわれずに物事を考える」という教訓を与えてくれるものだ。

短いシフト勤務に挑戦

先日開催されたバークシャー・ハサウェイ年次総会の際、互いに億万長者で大親友のウォーレン・バフェットとビル・ゲイツはこっそりと抜け出し、近所にあったファストフード・チェーン「デイリークイーン(Dairy Queen)」へ向かった。
ランチを取り、短いシフト勤務に挑戦するためだ(バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、デイリークイーンを1998年に買収している)。
デイリークイーンのマネジャーは、ソフトクリームのコーンへの盛りつけ、レジ打ち、客とのやりとりなどについて、辛抱強く、このパワフルなコンビを指導した(その間、この有名人たちはずっと、互いに悪態をついていた)。ゲイツはこの楽しげな様子を録画し、自身のブログ「Gates Note」で公開している。
デイリークイーンは、顧客に「ブリザード(Blizzard)」というアイスクリームを提供するとき、独特な方法をとる。カップに盛ったアイスクリームを、逆さまにして手渡すのだ。
これは、このアイスクリームがとても濃厚でしっかりしていることを示すパフォーマンス・アートだ。とても濃厚なので、逆さまにしても落ちないのだ。
ゲイツは自身のブログで、デイリークイーンのトレードマークであるこの変わった提供方法が、友人のバフェットと共通点があると考察している。
「ウォーレンに会うたびに、彼が物事を見る際の『逆さまの』視点に感動する。あっと驚くし、洞察力がある。彼は、物事を違うふうに考える。ほとんどすべてのものに対してだ」

「逆さまの視点」の意味

ゲイツは、バフェットの「逆さまの視点」の例を続ける。もしバフェットがそう望むなら、彼は自分の比類無き成功について、自分にはできて他人にはできない数々のことのおかげだと言うことはできるだろう。
しかしバフェットは、自分の成功は一日中オフィスで座りながら読書をすることの結果であると考えている。つまり、誰でもできることだ。これも逆さまの考え方だ。
ゲイツは続けてこう書いている。「生活のあらゆる側面で即時の満足が切望される時代で、ウォーレンは、私が知るなかで最も忍耐強い人物の一人だ。望む結果を得られるのを、喜んで待てる人物なのだ。彼はかつて、こう話していた。『遠い昔に誰かが木を植えたから、誰かが今日、その木陰に座ることができるのだ』と」
これも逆さまの考え方と言えるだろう。
バフェットは、その食生活さえも逆さまに考えているとゲイツは言う。バフェットは一日をデザートで始めるのだ。デザートで一日を締めくくるのではなく(彼の朝食は、オレオとアイスクリームだ)。
これらすべてから、私は考えさせられた。逆さまに考えることが、なぜそれほど力を持つのだろうか。

逆の条件で問題を考える

意図的に通常とは逆に考えることは、普段は決して思いつかない解決策を発見する素晴らしい方法だ。
「ほとんどの人はこう考えることはわかっている。しかし、問題をひっくり返して、逆の条件で考えてみたらどうだろう」という思考を自分に強いる。
問題に対する答えとしては、役に立たず実用的でないときもあるが、多くの場合は思考をとても解きほぐしてくれる。
ウーバーの創業者であるトラビス・カラニックは、タクシー業界を見てこう言った。「より多くのタクシーや高額なタクシー免許証を購入してタクシー車を路上に増やすことよりも、この問題を逆に考えるのはどうだろう。つまり、一般の人に自分の車を使ってもらって、互いに乗り合ってもらうのだ」
ワールド・レスリング・フェデレーション(WWF)は「リアルな」レスリングの試合を何年も提供してきて、そうした試合すべてが演出であることを認めたくなかった。そこで、ファウンダーのビンス・マクマホンとチームは良い考えを思いついた。
逆に考えて、すべてがフェイクであると認めるだけでなく、ストーリーラインや登場人物を構築し、その演出を活用するのはどうだろうか、と。WWFはWWE(ワールド・レスリング・エンターテイメント)に改名し、今日では数十億ドルを売り上げる企業に成長した。

従来の思考法に向かう前に

かつて私が企業の世界にいて、コングロマリット企業が消費者から何百万ドルも儲けられるようにするために途方もない時間を費やしていたとき、私はひらめきを得た。
もしこのことをひっくり返し、この会社で費やした数え切れない時間をもとに、自分自身でビジネスを築き、自分よりも大きいものの役に立つことができるとしたらどうだろうか。
当時の自分は、まだ日々の仕事に最大の力を尽くしていたが、このスイッチの切り替えにより、私はスピーキング、コーチング、ライティングのスキルを磨き始めた。
会社を辞め、自分の講演ビジネスを始めるころには、出版した本が受賞し、ベストセラーとなっていた。100の講演をこなし、何百人もの個人のコーチングに全身全霊を注いでいた。
私は会社に貢献している間に、会社も私に貢献してくれるような逆さまの計画を意図的に立てていたのだ。
あなたも、もうおわかりだろう。従来の思考法に向かう前に、立ち止まって自分に聞いてみてほしい。「これをひっくり返して考えてみたらどうだろう」と。たくさんの人たちに注目される結果になるはずだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Scott Mautz、翻訳:新多可奈子/ガリレオ、写真:jetcityimage/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.