人気瞑想アプリの開発者に聞く

マインドフルネス瞑想は、自己啓発の実践として過小評価されがちかもしれない。しかし、多忙な起業家にとって、仕事に関する問題をマネジメントする有益な手法になりうる。
天井知らずに増えるストレスや、つきまとう疲労感、ぼんやりとした頭では、つねに最善の決断ができるかどうか怪しいものだ。とはいえ、わかってはいても、仕事中に瞑想する時間があるだろうか。
そこで便利なのが、マインドフルネス瞑想用のアプリだ。実は、私も仕事中に脳を休める必要があると感じたときに愛用している。気分も新たにアイデアを思いつき、問題を解決できるというわけだ。とくに、時間を設定できるところが気に入っている。3分間しか静かに落ち着く時間を取れないときでも、瞑想ができる。
これらのアプリは数分間~30分間ほど、瞑想とマインドフルネスのガイダンスを提供する。睡眠や暴飲暴食、人間関係などの問題と向き合うためのプログラムもある。
多くの社会人にとって、瞑想アプリは気分を落ち着けたり、集中力を高めたりするのに役立つだろう。ビル・ゲイツも瞑想と瞑想アプリを実践している。
ヘッドスペース(この記事の情報源として、偏りがあることは認めよう)とスタンフォード大学(こちらはやや偏りが少ないはずだ)による調査では、39人がマインドフル用アプリのセッションを10回、計100分間、実施した後、より前向きな気持ちになり、いらだちが鎮まったと回答している。
私はヘッドスペースの共同創業者アンディ・パディコム(元僧侶でもある)とリッチ・ピアソン、そしてバディファイの創業者ローハン・ガナティレイクに話を聞いた。いずれもマインドフルネスの人気アプリだ。
彼ら自身が起業家として、マインドフルネスをどのように仕事に取り入れているのだろうか。4つの重要なポイントを紹介しよう。

1. 価値観を羅針盤にする

多くの起業家は価値観を中心に据えて事業を立ち上げるが、会社が成長するにつれて、これらの価値観を守ることは難しくなる。機会(そして、エゴ)が必然的に訪れると、脇に追いやるのだ。
ガナティレイクは、マインドフルネスの実践が最初の目的に集中し続けるために役立っていると語る。
「自分の動機をつねに明確にしておかなければならない。『理由があってこのようにしている』と言っても、実際は明確な理由に基づく判断ではない。だからこそ、自分の価値観を紙に書いて壁に貼るだけでなく、つねに意識して行動すれば、価値観がすべての行動を貫くようになる」
私自身も、仕事ではまさにこの点を意識している。何をするのか、なぜやるのかを考える際に、時間をかけて自分の目的と価値観を定義することが重要だ。それが私を導く光となる。
仕事上で判断を下すたびに、自分のコア・バリューに照らして現在地を見直し、価値観に沿っているかどうか確認している。

2. フィードバックを受け入れる

ピアソンは、マインドフルネスが従業員との交流に役立っている。
たとえば、瞑想をすることによって気持ちが落ち着き、打ち合わせに100%集中しようと自分に言い聞かせることができる。また、エゴに邪魔されずに、フィードバックに素直に耳を傾けようという気持ちになる。
「私のチームからのフィードバックを受け入れて、ほかの人のさまざまなアイデアを学びやすくなる。簡単なことだが、それによって周囲の人との結びつきが深まる」
そのためには、打ち合わせには携帯電話など気が散る原因になるデバイスを持ち込まないようにしている。

3. 成功には代償が伴う

成功とは何かという考えは、人によって異なる。あなたの仕事の最終目標が何であれ、そのために何が必要で、目標を達成するために何をあきらめなければいけなくなりそうか、率直に考えよう。
ビジネスの世界は成長に固執して、不都合な可能性を無視しがちだと、ガナティレイクは指摘する。
「10億ドル規模の会社にしたいのか。その目標は否定的な結果をもたらさずに実現できるのか。物事はつねに代償を伴う。投資家にとっていいことは会社の顧客のためにならないかもしれないし、その逆もあるだろう」
自分にとって成功とは何か、最終的に目指すものは何か、つねに意識すること。たとえば、私が経営しているヨガスタジオは、富を生む道具である以上に、目的に導かれたビジネスだ。経費の採算が取れて、顧客に健康をもたらし続けるかぎり、私の目的にかなっている。

4. 自分の経験を語る

ピアソンとパディコムによれば、仕事にマインドフルネスをより広く取り入れる最善の方法は、自ら強力にアピールすることだ。
「自分にとってどのような効果があるかを伝えれば、周囲の人も信用する」と、パディコムは言う。「みんなの役に立つと説明するのではなく、どのように役に立つのかを見せるのだ」
「私はこんなことをしていて、こういう効果があって、それをみんなにも経験してほしい。そう話せばいい」と、ピアソンは言う。
あなた自身のマインドフルネスのやり方が、誰にでも向いているわけではないだろう。それでも自分の経験を伝えることによって、人々が自分なりの向き合い方を見つけるヒントになるだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Amy Vetter/Keynote speaker, entrepreneur, CPA、翻訳:矢羽野薫、写真:SIphotography/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with Jeep.