(ブルームバーグ): ドイツ銀行は国内競合のコメルツ銀行との合併に対して、行内で強硬な抵抗に直面している。両行が合併に向けた動きをとる中で、乗り越えなければならない障害があることを浮き彫りにした。

ドイツ統一サービス産業労組(Ver.di)幹部で、主要労組代表としてドイツ銀行監査役会メンバーでもあるヤン・ドゥシェック氏は合併に反対を表明。合併が成立すれば多くの雇用が脅かされるほか、ドイツ金融業界の強化にも役立たないと指摘した。合併協議が水面下で次第に加速する中で、同氏は態度を硬化させている。

2016年から監査役会メンバーを務めるドゥシェック氏は「われわれは合併を拒否する」と電子メールで配布した発表文で言明した。合併後に誕生する統合銀行は外国からの敵対的買収にさらされやすくなり、「ナショナル・チャンピオンを生むことにはならない」と述べた。

ドゥシェック氏はさらに、合併なら「少なくとも1万人の雇用が直接的に脅かされる」とし、「現時点で構想に上っている統合銀行は見込まれた成長を達成できないだろう。このため将来的に恐らく、より多くの人員削減を強いられる」と語った。

合併合意に必要とみられる人員削減は特に高いハードルだ。両行が3年近く前に非公式の合併協議に取り組んだ際には、2万-3万人の削減が見込まれていたと当時の協議に関与した関係者1人が明らかにした。同様の規模の人員削減が今回も必要になる可能性が高いと現在の協議について知る関係者は話した。

ドイツ銀の監査役会メンバーで、金融サービス業界の労組DBVのシュテファン・ズカルスキ委員長は同労組の発表資料で、合併は「経済的に無意味」となり、多くの雇用が犠牲になると指摘した。

労組指導者だけが慎重なわけでない。事情を知る複数の関係者によれば、ドイツ銀の大株主の代表らはコメルツ銀との合併に疑念を表明し、代わりに米国事業の縮小を支持している。

金融規制当局も慎重だが、両行が実行可能なビジネスモデルを提示して新組織が十分な資本を備えることを示せば、立場を変える可能性もあると一部関係者は述べた。ドイツ銀は規制当局と合併に関して連絡を取っているが、非公式レベルであるため開示は必要ないという。

ドイツ銀とコメルツ銀はコメントを控えた。

原題:Deutsche Bank Faces Pushback to Potential Merger on Job Cuts (2)(抜粋)

(DBV委員長や関係者の話を追加して更新します.)

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