証券各社の予想を上回り、株価上昇

米製薬会社サレプタ・セラピューティクス(Sarepta Therapeutics Inc.)は、筋ジストロフィー患者を対象にした遺伝子治療の初期的な治験で、良好な結果を得た。この発表後、同社の株価は時間外取引で上昇した。
治験で使われたのは、遺伝子治療薬「MYO-101」だ。主に肩と腰に症状が出る、あまり知られていないタイプの重症型の筋ジストロフィーの患者に投与したところ効果が見られ、3つの基準値で有効性が示された。
ただし、患者2名に副作用が表れたため、投資家からは疑問の声が出た。治験に参加した患者3名の筋繊維の発現検査では、全員に改善が見られ、ウォール街の大方の予測を上回る結果が出た。
ニューヨーク証券取引所では、取引開始の鐘が打ち鳴らされる前の時間外取引で、同社株価が12%も急騰したが、その後は落ち着き、8時57分時点では6.4%の上昇となった。
同社株価は2018年に125%以上も上昇し、その状態を維持している。一方、NASDAQのバイオテクノロジー指数は、わずか2.7%の上昇にとどまっている。
初期的な治験に参加した患者3名は、筋肉が破壊された際に放出される酵素「CK(クレアチンキナーゼ)」が、平均で90%減少するという結果が出た。この数字は「減少率は50%以上」と見込んでいた証券会社各社の予想を超えていた。また、筋肉の発現が標準と比べて36%となり、20%という予想を上回った。

筋繊維の壊死が起きる進行性の病気

サレプタはスライドショーの中で、患者2名に肝酵素の上昇が見られたのに加え、患者1名に重度と言える副作用が表れたことに言及した。
肝酵素の上昇については、肝臓で炎症が起きたか細胞が壊れた可能性があるとしたが、2名ともステロイドの追加投与後に、酵素の値は通常レベルに戻ったという。
同社マネジメント側は、副作用に関する懸念をただちに退け、遺伝子治療の研究では、肝酵素の上昇はそれなりに起こるものだと強調した。
キャンターフィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)のアレシア・ヤングをはじめとする一部のアナリストは、治験が成功すれば、サレプタの株価は12%から17%上昇するだろうと予測していた。一方、治験の結果が芳しくない場合は、下落率は上昇率より若干大きく15%から19%になるとしていた。
今回の初期的な治験では、最も重度かつ最も一般的な肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)の患者に、遺伝子治療薬MYO-101が一度だけ投与された。
筋ジストロフィーは、筋繊維の壊死を引き起こす進行性の病気だ。筋ジストロフィー全般の発症率は「1万4500人に1人」から「12万3000人に1人」の間となっている。

戦略買収ターゲットの有力候補に

サレプタのダグ・イングラム最高経営責任者(CEO)は、今回の結果を発表した電話会議で、今後はアメリカの規制当局と会合を持ち、同社が行う肢帯型筋ジストロフィープログラム5種の次の段階について話し合うつもりだと述べた。
遺伝子治療薬MYO-101を実際に開発したのは、閉鎖的所有企業(株のほとんどを、売るつもりのない少数の株主が所有している企業)のマイオネクサス・セラピューティクス(Myonexus Therapeutics)である。
今回の治験に関するニュースは、サレプタがマイオネクサスを1億6500万ドルで買収する権利を行使したことを発表した直後に明らかになった。サレプタはまた、2月27日に市場が引けたあと、第4四半期業績報告書を発表した。
ブルームバーグがまとめたところによれば、サレプタ製のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬「Exondys 51」(2016年に米食品医薬品局〔FDA〕によって承認された薬)の第4四半期売り上げに関して、アナリストたちの推測は平均で約8500万ドルとなっていた。
サレプタの遺伝子治療薬ポートフォリオは業界トップとされており、DMD患者のための新型遺伝子治療薬の開発競争では、頭ひとつ抜きん出ている。
こうしたパイプライン(新薬候補)によって同社は、バイオテック企業の買収が相次ぐなか、ウォール街の戦略買収ターゲットの有力候補として一気に最前線へと躍り出ている。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Bailey Lipschultz記者、翻訳:遠藤康子/ガリレオ、写真:©2019 Bloomberg L.P)
©2019 Bloomberg L.P
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.