ベンチャーキャピタルの急成長戦略に、起業家たちが「NO!」

2019/1/19

スタートアップの憂うつ

晩秋のある晴れた土曜日の朝、ニューヨークのロウアー・イーストサイドのバーに、スタートアップの創業者50人が集まった。湿っぽい地下のフロアで、長いテーブルに座ってメモを取りながら、コーヒーやミネラルウォーターをすすっている。積み上げられたピザの箱から、温かいガーリックの香りが漂っていた。
彼らが話題にしていたのは、IT業界ではほとんど“神聖なる”と言ってもいい存在だ――つまり、ベンチャーキャピタルである。
ソフトウエア開発のスタートアップ、バブルの共同創業者ジョシュ・ハースは、「自分とベンチャーキャピタルは、会社の成長に対する考え方がまるで違う」と語った。
衣料品会社プロパー・クロスの創業者セフ・スケリットに言わせれば、気前のいい資金調達の申し出は罠だ。「自分たちの申し出に乗ってこないやつは二流だ――こちらにそう思わせるのが、彼らの作戦なのさ」
イベントを企画したフランク・デンボウ(33)は、Tシャツの製造販売を行うスタートアップ、インカの創業者で、ニューヨークのIT業界では知られた存在だ。彼の呼びかけにより、この日は加熱するベンチャーキャピタルの投資戦略に疑問を抱き始めた起業家が集まっていた。
「ベンチャーキャピタルは、僕らに急激な成長を煽ってくる。その結果、僕らの多くは真っ逆さまに墜落するんだ」と、デンボウは言う。