【ルノー日産座談会】わたしたちは、ずっと「仮面夫婦」でした

2018/11/30
「日産とルノーって、なんでこんなに憎み合っているんですか?」
絶対君主カルロス・ゴーンの失脚を、ルノー日産の「中の人」たちは、なんとも言えない複雑な心境で眺めている。
仏ルノーとゴーンには、経営危機時に救ってもらった恩はある。しかし、フランス人は上から目線で偉そうだし、あまりにも長く居座るトップと社内政治には、もううんざりだ──。
そうした感情は、長年ともに過ごしてきた中の人にしかわからない。NewsPicks編集部は、ルノー日産関係者や元幹部など複数名に接触し、決して他では語られることのない数々の証言を、匿名を条件に得た。
ゴーン事変の背景にあった「本当の話」を、包み隠さず語っていただこう。
A氏 ルノー日産アライアンス関係者
B氏 日産自動車・元経営幹部
C氏 日産自動車・元開発幹部
D氏 自動車ジャーナリスト
(写真:SOPA Images / LightRocket / GettyImages)

手際の良すぎる「ゴーン解任劇」

──「ゴーン逮捕」のヘッドラインを見たときの第一印象は。
A氏 信じられない、という気持ちでした。なにかの間違いかと思いましたよ。
C氏 何がなんだか分からなかったな。全然、情報が出てこないし。
ゴーンさんには、悪いことをやったという認識はなかったんじゃないかな。
「報酬を少なく見せていた」「投資の私物化」「経費の私的流用」。どれをとっても、「絶対クロ」といえるものなのかが、よくわからない。横領や脱税なら、明らかな犯罪だけど。
B氏 ゴーン逮捕となった瞬間、ゴーンさんのこれまでやってきたことがみんな悪い、みたいに言われているのも変だよ。
確かにコストカッターだったけど、2万人のリストラや、村山工場の閉鎖をいまさら批判するメディアも、どうかと思う。
だって、ゴーンさんを刺した側の西川(廣人)社長自身が、リストラをやってきた急先鋒。ゴーン・チルドレンなんだから。今のメディアは、そんなことも知らないのかな。
それに、ゴーンさんが来ていなかったら、2万人では済まなかったはず。あのタイミングでは、正しい判断だったからね。
C氏 だいいち、早速ゴーンさんの会長職、代表権を解いたけど、手際が良すぎる。
これは私の見立てだけど、ゴーンさんの解任が一番の目的で、そのためにゴーンさんのいない取締役会を開催したかったのでは。
仮に無罪であろうと、逮捕があればゴーン不在の取締役会が成立する。だって、普通は会社側は、トップを守るものでしょ?
実際に、ルノー側はまだ、ゴーンさんのトップ解任を保留しているしね。
【衝撃】日産ゴーン逮捕。これは「クーデター」だったのか?
D氏 振り返れば、異変は今年5月にあった。突然、ジョセフ・ピーターCFOが辞めたんです。それ以降、社内調査が一気に進んだとも報じられていますよね。