【直撃】なぜ、アートとサイエンスの両方が重要なのか

2018/10/31
「人々は、モノを買うのではなく、体験を買うのだ」
アドビのシャンタヌ・ナラヤンCEOは近年、このメッセージを強く打ち出している。「体験」という言葉は今や、アドビの企業ミッションにも掲げられ、アドビのビジネス全体を語る上で欠かせない要素となっている。
その背景にあるのが、Photoshopなどクリエイティブ・クラウドと並ぶ事業の柱であるデジタルマーケティング事業の急成長だ。2017年には、デジタルマーケティングのクラウドを、デジタルエクスペリエンスとブランド変更したほど。
【完全解説】爆走アドビを生んだ「ビジネスモデル大転換」
次の成長ドライバーとしての期待は大きく、今年もマルケトなど大型買収に乗り出している。
だが、一体なぜ、アドビは「体験」をこれほどにまで強調するのか。また、そもそもクリエイティブの企業だったアドビがなぜ、わざわざデジタルマーケティングに本格進出したのか。
デジタルエクスペリエンスを統括するシニアディレクターのスティーブ・ハモンド氏に直撃した。

クラウド化で起きたシナジー

──アドビが急速な成長をしていますが、デジタルマーケティング事業の伸びも大きいですよね。
元々、デジタルマーケティングのウェブ解析企業のオムニチュアにいたのですが、2009年に買収を通じてアドビに入りました。アドビにとってこれは、クリエイティブ製品のクラウド化と並ぶ大きな変革でした。
──オムニチュア創業者のジョシュ・ジェイムズには取材したことがあります。
はい。私はジョシュと一緒に、オムニチュアにいて、ビジネスをSAAS(Software as a Service)で展開していました。オムニチュアでは、当時からすでに機械学習や、AIを組み込んだサービスにも力を入れていました。
それで、我々がアドビに買収されたとき、アドビはちょうど、クリエイティブ製品の箱売りを辞めて、クラウドベースのサブスクリプションに変えようと検討していたところだったんです。
アドビが素晴らしかったのは、その時に、彼ら強みを持つ「アート」と、我々の持っていた「サイエンス」をつなげることで、新たなビジネスチャンスを生み出そうとしていたことでした。