【新】「モチベーション」をビジネスにした男、小笹芳央の先見力

2018/12/15
【小笹芳央】「金銭報酬」に加えて「感情報酬」を大切にせよ
人間の判断や行動には、経済的な利得だけではなく、感情的な側面が果たす役割が大きい。
こうした人間観を前提としているため、「金銭報酬」に加えて「感情報酬」を大切にすることを啓蒙しています。
【小笹芳央】「NO SIDE」の精神が個人と組織を成長させる
私は1961年、大阪市阿倍野区の生まれです。四畳半一間のアパートで、いわゆる産婆さんに取り上げられたそうです。
当時でも、同級生たちのほとんどは病院で生まれていたので、子どもながらに「うらやましいな」と思ったのを覚えています。
ラグビー部を選んだのは、その中学で一番強い運動部だったからです。ラグビーを通じて様々なことを学びました。
「One for All, All for One」もそうですし、「NO SIDE(ノーサイド)」もその1つです。
【小笹芳央】ラグビー漬け、学年ビリからの早稲田政経合格
成績は、学年に552人いた中で552番。つまり、最下位です。テストの問題の意味すら分からないんですよ。
大学入試までは3カ月弱。現役で受験した大学はことごとく落ちてしまいました。
唯一、合格したのが、京都にあった駿台予備校の私立文系コースです。
それでも、周囲には「よく受かったな」と驚かれ、自分でも「猛勉強のおかげで駿台に受かった!」といううれしさがありました。
【小笹芳央】サークル創設。「モテ期」にビジネスの基本を学ぶ
早稲田祭は、大学の学園祭の中でも人気があり、大勢の人で賑わいます。
自分で言うのもおこがましいのですが、ラグビーの花形選手だった中高時代と、イベントサークルの代表を務めていた当時は、人生の中で最もモテました。
特にサークルの代表としては、より多くの学生に集まってもらいたいという想いがありましたから、「どうしたらみんなに喜んでもらえるか」ということを常に考えていたことも、その要因だったかもしれません。
【小笹芳央】大手商社を蹴ってベンチャーのリクルートに入社
当時のリクルートは成長途上のベンチャー企業でしたから、大手商社の内定を辞退してリクルートに入社するなんてと、周囲からはかなり心配されました。
母はリクルートなんて会社は知らなかったんでしょうね。「ヤクルトに行くの?」と言っていました。
【小笹芳央】リクルート事件、ダイエー傘下…渦中の想い
リクルート事件発覚時には1000人ほどが内定していました。事件後にはやはり内定辞退者も出ましたが、最終的には800人程度が入社しました。事件の影響を考えると、なかなかの結果だったと思います。
彼らは平成元年入社になるのですが、骨太な人材が揃っていましたね。
私自身はリクルート事件のときよりも、その3年後に、江副さんが持ち株をダイエーの中内功さんに譲渡し、ダイエー傘下入りしたときのほうが、衝撃的でしたね。
周囲には「ダイエーの店舗に配属されたらどうするの?」などと言われることもありました。
【小笹芳央】社員の「モチベーション」は経営者共通の課題
広告の営業ではなく、コンサルティングによってフィーをいただく部署を創ろうと決意した私は、取締役に「机1つ、電話1つでいいので、組織人事のコンサルティングを行う部署を創らせてください」と直談判しました。
業務を通して、私は1つの確信を持つようになっていました。それは、企業の規模や業種に関係なく、経営者は社員の「モチベーション」に課題を抱えているということです。
【小笹芳央】念願の上場に「待った」をかけた理由
リンクアンドモチベーションは2000年4月、銀座6丁目にある銀座UKビルの8階にオフィスを構えて創業しました。私を含めて7人のメンバーでの船出でした。
創業当初から株式公開を視野に入れて、2003年にはJASDAQ上場を目指して体制の整備を行ってきました。
しかし、審査部門への書類提出という最終段階まで進んだときに、私の中に迷いが生じてしまいました。
現時点での株式公開は本当に必要だろうか。資金調達なら間接金融でも十分間に合うのではないか。
【小笹芳央】創業以来の危機を乗り越えた「サバイバルプラン」
リーマンショックに端を発した未曾有の世界不況の中、創業以来、拡大成長を続けてきたリンクアンドモチベーションにとって、危機的な状況が訪れました。
危機を乗り越え、生き残るための「サバイバルプラン」を策定し、決行していきました。
振り返ると、この時期を耐えきれずに消えてなくなった同業他社も多数ありましたが、リンクアンドモチベーションは拡大成長期の「過剰設備を抱えた高コスト経営」から、「損益分岐点の低い筋肉質経営」への転換に成功。危機的状況を乗り越え、再び成長軌道に乗ることができました。
【最終話・小笹芳央】目標や夢があるからこそ、人生は輝く
今、国や企業を挙げて「働き方改革」を推進していますが、単に長時間労働を是正することだけを求めても、成果を上げることはできません。
労働生産性の向上は、「エンプロイーエンゲージメント」を高く維持できてこそ実現できるものです──。
連載「イノベーターズ・ライフ」、本日、第1話を公開します。
(予告編構成:上田真緒、本編構成:田村知子、撮影:遠藤素子、デザイン:今村 徹)