顧客が本当に欲しいものを創出する

急成長企業を築くには多くの方法がある。
2018年のInc.5000リストを見てほしい。米国で急成長している未公開企業ランキングには、缶詰ワイン製造会社や運輸会社、カヤックメーカー、トラックのバンパーメーカーまで、幅広い企業が含まれている。
だが、こと革新的なビジネスモデルとなると、次の6企業が群を抜いている。
病院ユニフォームの再発明であろうと、驚くような観光ツアーの提供であろうと、これらのスタートアップはすべてある共通点を持っている。それは、顧客が本当に欲しいものを生み出しているということだ。
2018年のInc.5000から、最も革新的なビジネスモデルを紹介しよう(順不同)。

1. ミュージアムが嫌いな人向けのミュージアムツアー

Inc.5000リスト第1304位のMuseum Hackは、直感に反した前提に基づいている。というのも、このスタートアップは「ミュージアムが好きではない人々のためのミュージアムツアー」を販売しているのだ。
1回分の価格には、ミュージアムの入場券と数時間のガイド付きツアー、そして時おりワインが含まれている。
ガイドは客に対して展示の説明をするが、そうした説明には皮肉な要素も盛り込まれている。たとえば、天井から吊り下げられた実物大のシロナガスクジラの展示が、実際どのくらい安全かについて考察したり、アーティストの奇妙な趣味を深掘りしたりなどだ。
家族向けのツアーもあれば、大人専用のツアーもある。同社は2017年、270万ドルを売り上げた。ツアーは、ニューヨークのアメリカ自然史博物館やシカゴ美術館などで開催されている。
創業者のニック・グレイは2018年『ニューヨークタイムズ』紙のインタビューでこう語っている。「ミュージアムは、他のミュージアムと競い合っているのではない。競合相手は、ネットフリックスやフェイスブック、iPhoneだ」

2. 手術や検査を「比較ショッピング」

「世界初の医療サービス取引市場」を自称するスタートアップ、MDSaveのウェブサイトでは、レンタカーやホテルを探すのと同じように医療処置を比較して購入できる。指定した金額範囲内で、治療価格を比較することが可能だ。
血液検査や生体検査などの追加費用は料金に含まれているため、利用者が後になって合計金額に驚かされることはない。同社は2013年に立ち上げられ、2017年には1550万ドルの売り上げを記録。2018年のInc.5000リストで152位の座を獲得した。

3. スマートな医療用ユニフォームをネットで販売

Figsの共同創業者トリーナ・スピアとヘザー・ハッソンは、これまで見過ごされていたアイテム「手術着」に目をつけ、収益性のあるビジネスに変えた。手術着をユーザーに直接販売する初のeコマース企業のひとつである同社は、病院のユニフォームがどう見えるべきかを再考している。
サイズが合わず、大きすぎたり窮屈だったりするユニフォームはもう終わりだ。よりスマートな素材から作られ、よりスリムで性差を考慮した服をデザインした。結婚指輪を入れるためのポケットといった工夫もある。
同社は俳優のウィル・スミスや、ファッションブランド「Lululemon」の元CEOクリスティン・デイの関心を引き、両者とも同社に投資している。2017年には2310万ドルを売り上げ、2018年は1億ドルを上回ると予想されている。2018年のInc.5000リストでは22位だった。

4. 珍しい動物たちを集めた、ジュラシックパークのような「牧場」

創業者のブレント・オクスレーは、自身のスタートアップであるウェブホスティング会社、HostGatorを2億2000万ドルで売却した後、テキサス州中心部に1万8000エーカー(約73平方キロメートル)の大牧場を建設することに決めた。
さまざまな動物を輸入し(動物園から運搬されてきた動物もいるし、絶滅危惧種の動物もいる)、床面積6000平方フィート(557平方メートル)のロッジや、プライベート滑走路、キャビン、高級レストランなどをビジネス用に建設した。
Ox Ranchを訪れた人たちは、カンガルーやキリン、ヘラジカ、ヌーなどと一緒の滞在を楽しめる。物議を醸していないわけではないが、ゲストは最高3万5000ドルを支払い、特定の種を狩る権利を得ることもできる。
オックス牧場は2017年に620万ドルを売り上げ、Inc.5000リストでは246位にランクインした。

5. ブランド名のクラウドソーシング

あなたがビジネスアイディアを思い浮かんだとする。必要なのは、クリエイティブで記憶に残る名前だ。
SquadHelpは、あなたの企画案をクリエイティブな人たちやブランディング専門家数千人が集まるネットワークに流してくれる。彼らはそれぞれ、自分の提案を提出する(提案されたURLが使えるかどうかについては、同社が自動的にチェックする)。
あなたがその中から勝者を選んだ後、その提案者に支払いがなされる。その後、商標のリスク評価、言語分析、オーディエンステストを実施される。
キャンペーンは、199ドルから始めることができる。同社によると、通常は数十から数百の提案が得られるという。2017年には250万ドルを売り上げ、2018年のInc.5000ランキングで247位にランクインした。

6. 不動産屋を介さない、学生向け賃貸物件サイト

ほとんどの19歳は、不動産について多くを知らない。Inc.5000リスト第514位のRent College Padsは大学生向けに、キャンパス外にある学生対象アパートを探せる場を提供する。
大家は自分の物件を直接サイトに掲載し、学生は質問を送ることができる。このように仲介者を省くことで、プロセスがより効率的になり、費用も安くなる。
同社は2015年に立ち上げられ、2017年には280万ドルの売り上げを記録した。ペンシルベニア州立大学、コーネル大学、テキサスA&M大学などの大学近辺で利用可能だ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Kevin J. Ryan/Staff writer, Inc.、翻訳:新多可奈子/ガリレオ、写真:gremlin/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.