【完全解説・保存版】あなたの「市場価値」を知るための9の質問

2018/10/7
コンサルタントは、とりわけ自身のキャリアについて、よく考える必要がある仕事だ。外資系コンサル会社の多くに、長期雇用の保証はないし、「Up or Out(昇進するか、退職か)」の価値観は根強い。
では、コンサルにとってベストな「転職の思考法」とは? コンサルはもとより、あらゆるプロフェッショナル職や就活生に役立つキャリア戦略の技法を豊富な図解を用いてお届けする。
転職するかどうかはさておき、自分の職業人生を設計する上で、まずやるべきなのは、自分のマーケットバリューを知ることです。
自分を「いつでも転職可能な状態」にする市場価値が持てれば、何も苦行のような仕事を続ける必要はなく、精神的に自由でいられます。

1. コンサルの「技術資産」

自分の市場価値を考える上でまず重要なのは、「他の会社にも展開できるスキル=技術資産」の棚卸しをすることです。
技術資産とは、一言で言うと「他社からも必要とされる、高い技術力」のことです。そして、その中身は「専門性」と「経験」の2つに分類されます。
専門性は「職種」に近く、片や「経験」は「職種に紐付かない技術」とも言えます。
専門性は誰でも学べば獲得可能ですが、「貴重な経験」は誰しもが簡単には得られません。そして20代などの早いうちに「専門性」を身につければ、30代で「貴重な経験」が回ってきて、おのずと「技術資産」が豊富になります。
たとえば、多くの若手コンサルの場合。専門性と経験は、以下のようなものだと思います。
繰り返しになりますが、重要なのは、「他の会社で展開できないと、技術資産とはいえない」ということです。そこへいくと、コンサルタントが持つ「技術資産」は、問題解決能力を筆頭に他社にも展開しやすく、いきおい市場価値は総じて高い、といえます。

2. コンサルの「人的資産」

次は、マーケットバリューを構成する要素の2つ目「人的資産」についてです。私が考える、人的資産とはたとえば以下のようなものです。
コンサルの場合、若手のアソシエイト・レベルだったら、転職しても仕事をくれる顧客がいるとは考えにくい。でも、コンサル会社は基本的に、優秀な人が多いという特性上、豊富な社内人脈があります。
また、コンサル会社はアラムナイ(卒業生)同士の交流も盛んです。こうした社内や卒業生同士のネットワークが、転職後の仕事につながる可能性もあります。
さらに、コンサルは同期などの仲間に優秀な人が多いため、彼らに良い影響を受け、「彼が出来たなら、自分も」と、自分が行動を起こすきっかけになりやすい、という利点もあります。

3. コンサル業界の生産性

次はあなたと市場価値を決める、3つ目の要素「業界の生産性」についてです。
その点、コンサル業界は、この「業界の生産性」はめっぽう高い。コンサル会社経営のコストは人件費くらいしかかかりません。よって、業界の生産性は抜群にいい。
もっとも、生産性がいくら高くても、その業界が伸びていなければ、将来的に業界の生産性は落ちていきます。
そもそも、「仕事のライフサイクル」というフレームワークで言うと、すべての仕事とは生まれては消えるものです。
上の図を見てください。すべての仕事には賞味期限があり、①が新しく、④が古い。順番として①の「ニッチ」と呼ばれる、「そのポスト(椅子)の数は少ないが、替えの利かない仕事」から始まり、②③の段階に移行し、最後は「ポストの数も少ない上に、誰でも出来る仕事」となり、最後には消滅してゆきます。
では、コンサルの仕事の場合はどうでしょうか?
結論から言うと、コンサルはアクセンチュアがこの10年で人を2倍以上増やすなど(特集1回目参照)、ポスト(椅子)の数は急増しています。
だがその一方で、「高級派遣型」が増える、プロジェクトの「テンプレ化」が進むなど、③のルーティンワーク化現象も起きています。さらに、コンサルが行っていた仕事をプラットフォーム化することで、将来的にはコンサルをなくす方向を模索する会社もあると聞きます。
そう考えると、コンサルという仕事のライフサイクルは上記で「今ココ」と記した段階にいるのではないでしょうか。
したがって、コンサル業という仕事は近年中にそう簡単にはなくならないものの、コンサルとしてさらに高みを目指すなら、技術資産や人的資産をさらに強化させる必要があります。
また、コンサルが自分の市場価値を測る上で、1つ注意しておきたいのが、転職には、やはり「年齢問題」が存在するということです。
特にコンサルの場合、30歳を超えたマネジャークラスになると給料が急上昇するため、転職しにくくなるという現象があります。
一般的に、コンサルの場合、20代は地頭が良く、問題解決思考があり、プロジェクトを回す経験もあり、大企業に行くにせよ、ベンチャーに行くにせよ、「ポテンシャル採用枠としては最高レベル」です。
一方、30代、40代になると、転職後も、給料で現状維持を狙うとなると、自分で仕事を作り、顧客を獲得してくるようなより高い技術資産と人的資産が求められ、雇ってもらえる会社が限られていく。だからこそ、給料ダウンも覚悟しなくてはいけないことを、念頭においておくといいでしょう。
次にコンサル転職の、業界(会社)選びや、そこに合うコンサルの適性について考えてゆきます。コンサルタントは、昔から転職が多く、その転職先は『3-3-3-1の法則』と言われてきました。
では、「コンサル会社内転職」「大企業への転職」「ベンチャー転職」の「思考法」について、論じていきましょう。

【コース1】コンサル業界をグルグル回る

①は、特に外資系ではよくある話で、②は新卒で第一志望のコンサル会社に入れなかった場合や、より大きなプロジェクトに携わりたいという場合が多い。
③については、どのコンサル会社にもいる“万年プリンシパル”のような人が、社格を下げることでプリンシパル(一般企業で言う部長格)以上を目指す、といったパターンです。
確かに前職の社格が上だった人は、転職で社格を下げれば、おのずとポジションは上がりやすい傾向はあります。
いずれにしても、コンサルからコンサルに転職する場合は、「そもそも、自分はコンサルの仕事が好きかどうか」が、最も重要なチェックポイントと言えます。そして、その見分け方は、2通りあります。
①コンサルの仕事にストレスを感じるかどうか。
コンサルの仕事は、戦略系の場合、お客さんに請求する一人当たりの時間単価が2万円以上という高単価の仕事です。だから、求められる質もスピードも相当なもの。
たとえるなら、上に「今から50メートル走をやります、走ってください」と言われて全速力で走り、ゴールしそうになったら、また上が「今から、200メートル走に変更します」と命令してきて、また走り出す…といった「緊張」を日々強いられる仕事です。
すべての仕事には、学生時代にテストの後はリラックスしたように、「緊張」の後には「緩和」がありますが、コンサルの場合、その「緊張と緩和」のバランスがやや「緊張」に偏っています。
しかし、本来的にコンサルに向いている人は、こうした「緊張」の連続を、さしてストレスとは感じません。むしろ、その緊張を楽しむ人もいるほどです。
つまり、「緊張と緩和のベストバランス」は十人十色。コンサルの場合、ハイスピードで要求される期待値も高い、仕事の「緊張」をストレスと感じなければ、コンサルの仕事が向いていると言えるでしょう(これは他の仕事に関しても同様です)。
②やりたいことが明確にあるかどうか。
もう1つ、自分がコンサルに向くかどうかを確かめる有効な手段があります。それは、自分がやりたいことが明確にあるかどうか、ということです。
そもそも人間は、2通りに分けられます。
先の、短距離走のたとえで言うと、必死で200メートル走を走りながら、「走った後には、何かを得たい」だとか「○○を手に入れるために、走りきってみせる」と考えるような人は、コンサルに不向きです。
そういう人は、「○○がやりたい、○○を作りたい」といった明確な目標があるからです。ところがコンサルの場合、特に目的もないのに必死で走れる人が、結構たくさんいます。そして、そのような人こそ、意外にコンサル向きと言えます。
もっとも、全体の人数とパートナー(役員)の数の差を見れば分かるように、コンサル会社のパートナーまで登りつめるのは、一握りです。コンサル会社に居続けることは、それだけ困難だということは認識しておいたほうがいいでしょう。

【コース2】大企業(事業会社)コース

次に、事業会社への転職について思考してゆきます。
事業会社への転職を考える時は、まず「大企業へ行くか、ベンチャー・スタートアップに行くか」で悩む人も多いかと思います。
自分は、どちらに向くか。それには見分け方があります。
大企業は、仕事が分業化され、各人の仕事の中身やミッションが明確です。つまり仕事は「日々の宿題」に似ています。
一方、ベンチャーは仕事の内容が不明確どころか、自分で仕事を作らない限り、そもそも仕事がありません。まず課題を作るところから求められる仕事は、「夏休みの自由研究」に重なります。
もっとも、一口に大企業といっても、その業種も職種も様々です。ただ、私は大きく分けて、これまた2つ、BtoB企業が向く人と、BtoC企業が向く人に分けられると思います。
なぜか? それは、コンサル業界でたまに見かける、「すごすぎる経歴の人」は、一般人の反感を買いやすいからです。
では、自分は人から共感を得られるタイプか? その問いが前述の質問です。なぜ、同性の同世代に好かれる人が共感される能力が高いかといえば、同世代の同性は、相手をもっともシビアに判断するからです。
したがってマッキンゼーやボストンコンサルティンググループなどのトップファーム出身で、なおかつ学歴もハーバードMBAなど最高峰といった「すごすぎる経歴」の人は、一般人を相手にするBtoC企業には向きにくいという傾向があります。
反対に、一般的にBtoC企業に向くのは、一般の人からの共感を得やすいのは、あまり学歴が高くなかったり、ルックスに愛嬌がある、といった「親しみやすい」人です。
ですから、「すごすぎる経歴の人」はむしろ、その高いステイタスと経歴を高く評価してくれるBtoB企業に転職したほうが、個人と会社の双方がハッピーなのではないかと思います。
いずれにしても、転職先を選ぶ上で極めて重要なのは、「自分の価値を高く買ってくれる会社かどうか」が重要です。
その点、コンサル出身者がよく行く大企業としては、外資系製薬会社、外資系消費財メーカー、あるいはリクルートなどが有名です。
なぜ、こうした会社はコンサルをよく採用するのか?  それは、日頃からコンサルを使いなれているため、コンサルの価値も使い方もよく知っているからです。
このように、「自分の価値を、適正に評価してくれる会社を選ぶ」ことは、コンサルに限らず、極めて重要な「転職の思考法」の1つです。

【コース3】ベンチャーに転職

前述した通り、ベンチャー転職に向くコンサルの特徴は、子どもの頃に、『日々の宿題』をやるより、『夏休みの自由研究』にワクワクしたタイプです。
大企業には「宿題を与える先生」や明確な宿題もありますが、ベンチャーは上司もプレイングマネジャーだらけで、「先生」は不在。中途採用者は基本的に放置されやすい。仕事内容も、ざっくりとした役割やミッションが提示されるくらいです。
つまり、ベンチャーに入るということは、なにもない荒野を開墾することに等しい。したがって、荒れ地を耕すこと、ゼロからイチを作るのが好きな人でない限り、いずれは辞めてしまう場合が多いことを、認識しておくといいでしょう。
もっともベンチャーやスタートアップは、玉石混交で、社長の無謀ではじめた将来性が皆無の企業も少なくありません。
そこで、ベンチャー転職は、その転職先が伸びる会社かどうかを、入社前にしっかり見定める必要があります。
では、どうやっていいベンチャーを見極めるか?
なぜ、この質問をすることがベンチャー転職に有効なのか、それには2つ理由があります。
①社長が本当に優秀かどうかを見極められる。
ベンチャー経営は良くも悪くも社長次第です。しかし、起業家は元来、そもそも人を魅了する「人たらし」の能力が高く、面接する転職者や就活生を、その気にさせるくらいはお手の物です。でも、さしもの人たらしも、四六時中顔を突き合わせている側近を騙すことは困難です。
そこで、上記質問を面接などで、幹部クラスに投げかけてみるのです。そこで「え?まぁ」などと話に詰まったり、表情が曇ったりしたら、その社長が本当に優秀かどうかは疑わしい判断して良いでしょう。
②現場の幹部が優秀かどうかも分かる。
この質問が有効なのは、この問い1つで、質問した幹部が社長を信頼しているかどうかも分かることです。
いいベンチャーとは、社長と幹部の信頼関係があることが前提です。したがって、その幹部が、「社長は凄い人で…」などと嬉々として話しだしたら、信頼関係は高いと見ていい。
また、優秀な側近は、社長に惚れたために、他に活躍できる転職先はいくらでもあるのに、あえてその会社に来た可能性も高いと言えます。
2つ目の競合「も」伸びていることが重要な理由は、伸びている市場には、その成長を追い風にしたいベンチャーが複数参入してくるからです。
なぜならマーケットそのものが伸びていれば、各社がそろって成長することが可能ですが、成熟市場では、競合とシェアの奪い合いになりやすいからです。
伸びている業界に身をおくことは、市場価値を上げる貴重な経験が出来る可能性が高く、優秀な人も集まりやすいため、仲間と切磋琢磨することで、自分を成長させることに直結します。
あえてリスクを取ってベンチャーに転職するからには、絶対に伸びている業界に限定すべきです。
(取材・執筆:佐藤留美、撮影:鈴木愛子、デザイン:九喜洋介)