【山口周】コンサルにこそ「美意識」が必要だ

2018/10/5
ベストセラー『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者である山口周氏は、電通、ボストンコンサルティンググループなどを経て、コーン・フェリー・ヘイグループのシニア・クライアント・パートナーに就任。長らくコンサル畑を歩んできた。
そんな山口氏は、前掲書で、「論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある」と指摘する。コンサルタントは、まさに論理と理性で勝負する仕事だが、その「差別化」は消失した──と。
そして、これからは内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められるというが、具体的に、どのようなことか? 山口氏にじっくり話を伺った。
「KPI至上主義」の罠
──山口さんは、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で「論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある」と指摘しています。
山口 実際コンサル業界では、いわゆる企業戦略を練る仕事は今あまり売れなくなっていると聞きます。
たとえば新規事業をやりたいがどんなサービスをやったらいいかだとか、あるいは今ある3つの事業のうちどれを売ってどれをどうテコ入れすればいいかといったプロジェクトは、あまり引き合いがない。
一方で、人手がかかるPMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)や、コスト削減などのプロジェクトの引き合いは多く、あるコンサル会社は巨大運輸会社の合併後のPMIのプロジェクトに、コンサルを200人単位で1年間常駐させているそうです。
山口 周 (やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』など。
──戦略コンサルタントの1日の単価はヒラでも約20万円と聞きますから、高級派遣はものすごく儲かるのですね。
億じゃきかないですよね。クライアントは、数十億円の金額を払うのだと思います。ですから、パートナーからしたら、もう10年分の売り上げ目標達成みたいな気分でしょう。
一方で、本当に頭のいい人2、3人が集まり、データを集めてうんうんうなってストラテジーを考えても、実働3カ月分でチャージ(請求)して、やっと1億円ですよ。
では、どっちのほうがコンサルティング会社としておいしいかというと、明らかに前者ですよね。