活況でも課題は山積。コンサルはイノベーションを起こせるのか

2018/10/1

アクセンチュアに怒る広告業界

今、イギリスの広告業者団体IPAが、大手コンサル会社のアクセンチュアに怒っている。
同社が参入したメディア・バイイング(広告枠の買い付け)について、「明白な利益相反」だと糾弾したのだ(「campaign japan」記事より)。
つまり、アクセンチュアは「メディア・コンサル」としてクライアント企業の広告戦略や出稿についてアドバイスをしながら、自ら広告枠を買い、それをクライアントに売っている。その行為は、著しく「中立性を欠く」とをいうわけだ。
(写真:Alamy/アフロ)

一方で、広告会社もコンサル会社の領域に進出している。
例えば電通の子会社である「電通デジタル」は、自社の会社紹介として、「コンサルティング」「開発・実装」「運用・実行支援」の統合ソリューションを提供する、と明記している。
同社HPより
かてて加えて、総合商社の三井物産も、デジタルマーケティング領域に進出し始めた。
クロスデバイスマッチング(スマホやPCなど異なるデバイスを利用する同一ユーザーを識別する技術)分野の第一人者であるシリコンバレー企業「ドローブリッジ」と資本業務提携を結び、すでに数多くの日本のクライアントを獲得している。
一方、アメリカでは元コンサルタントを束ね、プロジェクトごとにマッチングする、「元コンサルのクラウドソーシング」を行う企業も誕生している(特集2回参照)。
このように、同一のビジネス領域の覇者となることを狙って、コンサル会社、広告会社、商社、そして金融機関、はたまたOB・OGなどが、まさに群雄割拠の様相を呈する現象は、M&A領域、イノベーション創出領域など各領域で起きている。
こうした現象を受けて、コンサル業界の中だけでも、新たな「稼ぐ力」を創ろうとする動きが盛んだ。例えば、フィー(報酬)体系を完全成果報酬型やサブスクリプション型にする会社も出てきた。
あるいは、コンサル会社もリスクを負ってクライアントと合弁会社を設立し、共存共栄を狙うといった動きも増えた。
さらには、「情報銀行」のようなプラットフォーム構想を狙うコンサルティング会社や広告会社も出始めた(特集1回参照)。

高額な報酬に見合うのか問題

詳しくは特集1回目で触れるが、今でこそ、コンサル業界は従業員数を大増員するほど、活況を呈している。
しかし、前述した通り、コンサル領域に進出するプレーヤーが増える、あるいは、先のマーケティング領域で言うなら、顧客企業が自ら広告出稿を担うなど「インハウス化」が進む、支払ったフィーに対して確かな成果を求める「アクチュアル保証」が当たり前になる……などの課題はすでに顕在化している。
コンサルはこれまで、その時々で求められる新しい経営課題に対応することで、時間単価を請求するというビジネスモデルを貫いてきたが、そのモデルだけでは限界がある、との見立ても出始めている。

今、求められる「コンサル3.0」

本特集では、成果が出る出ないに関わらず、高額の報酬を請求するというビジネスモデルに疑問を唱えるクライアントが登場する中、コンサルタントは今後、どのような転換を求められるのか、について迫ってゆく。
特集1回目は、今、コンサルティング業界に起きている「5つの大変化」について、インフォグラフィックで、解説する。
2回目は、経営共創基盤の取締役の塩野誠氏が語る「10年後も生き残るコンサルタントと退場するコンサルタント」についての記事を掲載。
コンサルティング業界は大量採用によりサラリーマン化が進む一方で、クライアント企業との合弁会社を設立するなどイノベーション創出型の「コンサル3.0」の需要も増えている。
では、時代の変化により、コンサルタントは今後どのような資質が求められるのか? 現役コンサルタント、コンサルティング希望の就活生必見のインタビューをお届けする。
特集3回目は、つい先日までPwCのパートナーであり、現在は教育に関する新しいプロジェクトを準備中のエリック松永氏が登場。コンサルタントは「イノベーションを起こせない」と語り、その理由について明かす。
4回目は、この9月にVorkersと資本提携し、同社の副社長に就任予定の、リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司氏に、提携の狙いと、今後のプラットフォーム構想について聞いた。
5回目はベストセラー『世界のエリートはなぜ、「美意識」を鍛えるのか?』の著者であり、電通とボストンコンサルティンググループを経てコーン・フェリー・ヘイグループのシニア・クライアント・パートナーを務める山口周氏が登場。
今、コンサルタントに求められる「美意識」について、そしてその磨き方について、語り下ろす。
6回目は、マーケティング会社IMJの株式を過半数取得し、協業することでデジタルマーケティング領域の強化したアクセンチュアの狙いと、現在行っている実際の仕事について、IMJの社長の黒川 順一郎氏に語ってもらう。
そして、特集最後の7回目はベストセラー『転職の思考法』の著者であり、自身もボストンコンサルティンググループ出身の北野唯我氏を直撃。「コンサルタント版 転職の思考法」について、分析してもらう。
(執筆:佐藤留美、デザイン:九喜洋介)