先日、entrepediaより「2018年上半期国内スタートアップ資金調達総まとめ」を公表しました。日本のスタートアップ調達環境は金額ベースでは好調です。
前回、日米のスタートアップのマーケットサイズ、投資規模についてフォーカスしてみました。今回はさらにそれを深めて、それぞれのマーケットの概要を掴んでいきます。

米国はアーリー、レイターが拡大

アツコ 前回までに日本とアメリカのスタートアップの調達額の規模やスタートアップへの投資額の規模についてみてきたね。
ハヤト GDPで調整してもアメリカのほうが規模が大きかったです。でも日本もアメリカも投資規模が大型のものが増えていました。
 アツコ そうだったね。全体の金額の伸びほど、案件数は伸びてなさそうだったよね。というわけで、今回は、アメリカの1件あたりの傾向からみていこう。
アツコ どのラウンドも金額が拡大傾向にあるんだね、面白い。全体の中央値で考えても大きくなってそうね。
ハヤト  2018年上半期はレイターがとくに伸びているんですね。$15Mっていうと・・・だいたい17億円くらいですか。

米国のエンジェル/シードは3年~、アーリーは4年~、レイターは7年~

ハヤト ところで、アーリーとかレイターとかよくいいますけど、どういう企業なんですか?
アツコ 投資ラウンドの段階、つまりスタートアップの成長段階に応じたステージのことを言うんだけど、米国だとシリーズAとBくらいがアーリー、シリーズCとDくらいがレイターといったかんじだと思う。
 企業の年齢からみると下のグラフのイメージになるよ。
ハヤト そうすると、だいたいアーリーが4年目、レイターが7年目くらいのスタートアップなんですね。

日本と米国の大型化はアーリーステージ以降が影響

ハヤト 日本はどうなんですか?
アツコ そうくると思って用意した。
ハヤト ありがとうございます!すごいですね、設立から3年目以降の企業の中央値が爆上がりじゃないですか。
アツコ おそらく2回目以降の調達であるアーリー以降が伸びているといえそうかな。
ハヤト そうすると日本とアメリカと傾向は似ているんですね。あれ、日本の2018年上半期に1年未満の企業の調達額も上がってるんですね!
アツコ あ、それはちょっと罠かもしれない。2018年上半期は速報値なので、entrepediaデータの特性上そう見えている可能性がある。
 entrepediaのデータは常に公表データを元に調査している変動データなのね。そして、調達情報というのは、大型のものほど速く公表されるという特性がある。
 つまり、速報時点の2018年上半期のデータは数値が大きいほうへ偏りがあるとみたほうがいいのよ。
ハヤト なるほどー。同じような数値だったので、普通にみてましたけど、調査によってデータの特性って違うんですね。
アツコ そのとおり。同じ名詞使ってても、じつは定義が違って値が違うということもあるから注意だね。
ハヤト はい!ちなみに、スタートアップの話をしていると、EXITもよく話題になりますけど、日米でそこも違ったりするんですか?
アツコ お、良い質問きた。

EXIT環境には差がある

アツコ 日米のEXIT環境をさらっと確認しておこう。
ハヤト 日米どちらも買収でのEXITのほうが多いけど、日本のほうがIPOでのEXIT割合が高いんですね。
アツコ そうだね、これが日本の特徴。
ハヤト へぇ!あ、アメリカではプライベートエクイティへのEXITであるBuyoutが増えてるんですね。
アツコ EXITの選択肢が多くていいよね。ちなみに、こうくるとついでに速度とか気になるよね?
ハヤト 速度?EXITまでの年数ですか?
アツコ そう!IPOに限ってだけど、上場までの平均年数が印象的なファクトなので持ってきてみた。
ハヤト へぇぇ!アメリカのほうが全体的にIPOまでが速いんですね!あれ、さっき日本のほうがIPO多かったですよね・・・?
アツコ うん。ナスダックの上場要件は株式・時価総額・利益基準とあるけど、それぞれが要求する株主資本、時価総額、利益の額などがマザーズよりも厳しい、あるいはマザーズでは要求項目になかったりするの。
 だから、ナスダックと比較した時に、マザーズの上場要件を指して日本はIPOしやすいと言われている。
ハヤト そうなんですね。これって、つまり、アメリカのスタートアップのほうが短期間で大きく成長してるってことですね!

日米は密度がちがう?

アツコ お金だけじゃなくてヒト・モノにも差があると思うんだよね。確かめるために企業数の規模感みてみようか。
アツコ これをみると、おそらくアメリカのほうがスタートアップ自体の社数も多いと予想されるよね。
 そして、EXIT割合も高い。これが開廃業率にも繋がっていそうだけど、脱線するから置いておいて。
 お金だけじゃなくて、ヒト・モノの量に違いがある。
 そして、Pichbookによれば、VC投資案件の4割くらいが西海岸に集中してることを考えると、密度が違う。
ハヤト なるほど、なるほど!こういった差は何から生まれるんですかね?
アツコ 超気になるよね。
ハヤト 前回みたときに、日本のマーケットもお金は集まるようになっていましたよね。起業しにくい環境なんですかね?
アツコ そしたら、今回はここまでにしよう。
 次回の最終回で、各国の起業活動についてのアンケート調査 Global Entrepreneurship Monitor(GEM)つかって、「日本は起業しにくい環境なのか」という問いについてみていこう。