【秘話】スティーブ・ジョブズの「長女」が描く、天才の肖像

2018/9/3
スティーブ・ジョブズの婚外子、リサ・ブレナン=ジョブズが9月4日に回想録『Small Fry』を上梓する。父ジョブズと複雑な関係にあったブレナン=ジョブズはなぜ、このタイミングで本を執筆したのか、彼女にとってジョブズはどのような存在だったのか──。ブレナン=ジョブズと複数回インタビューを重ねたニューヨーク・タイムズ記者によるレポートを、前編・後編に分けてお届けする。
冷淡な言動の数々を明かすが
アップルのコンピューター「Lisa」は、お前の名前にちなんでつけたわけではない──。
スティーブ・ジョブズが娘にそう話したことについて、父は幼い少女に残酷なうそをついたわけではないと、リサ・ブレナン=ジョブズは言い張る。
むしろ、父は「親の七光りに頼るな」と教えようとしていたのだ、と。(訳注:ジョブズは後に、1983年に発売されたこのコンピューターを、娘の名前をとってLisaと名付けたことを認めている)
あるいは、ジョブズが娘のベッドルームに暖房を設置するのを拒んだことについて、父は冷淡だったわけではないと、ブレナン=ジョブズは言う。「価値体系」を教え込もうとしていたのだ、と。
「Small Fry」を執筆したジョブズの婚外子、リサ・ブレナン=ジョブズ (Frances F. Denny/The New York Times)
晩年のジョブズが娘に対して「トイレ臭い」と言ったとき、彼は決して悪意を持っていたわけではないと、ブレナン=ジョブズは主張する──父はただ、「正直」であろうとしていただけだ、と。
ジョブズの冷淡な言動の数々を暴露する回想録を書きながら、その一方で、どれも本当のところは冷酷なものではないと訴えるとは一見、矛盾しているようにも感じる。