ソフトバンク、小が大を呑む買収劇を支えた「執念の資金調達術」の歴史
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なかにはスレスレないしはアウトな(実際に事後修正手当てをしている個人会社を通じた買収など)手法もありますが、真逆に優等生だが資金が眠ってばかりの大企業が多い事を顧みるだに、本来はここまでアグレッシブにやってこその経営だろうと思わされます。
恐ろしく事業機会の獲得と、財務的戦略性、そしてなりよりその両方をやり抜くエクセキューション能力、そのすべてにおいて優れているのが、並外れたオーナーシップ&リーダーシップを有する孫さん率いるソフトバンクだという事が改めて俯瞰できる良記事です。個人的にはソフトバンクは、2006年のボーダフォン買収でレバレッジを最大限に活かし、そのスキームは日本企業のファイナンス戦略を変えたと考えています。
当時、ボーダフォンは契約数ベースでドコモの約30%
ARPUは他社比下落率拡大傾向でしたが、営業CFは3000億円のポテンシャルがあり、LBO前の財務体質は比較的良好でした。06/3期のDEレシオは0.4倍
自己資本比率55.9%です。
この買収の最大のポイントは証券化でした。
リース債権やオートローン、不動産ローン等の金銭債権を多数集めて、そこから発生するCFを裏付けとして発行された証券をABS(Asset Backed Securities 資産担保証券)といい、ある特定の事業が生み出す将来のCFを裏付けとして証券を発行することを事業証券化,WBS(Whole Business Securitization)といいます。
特別目的事業体(SPE)が発行する社債、ローンに投資を行ないSPEは調達資金を事業運営者に担保付ローンとして貸し付け、その元利金返済には事業運営者が行なう特定の事業のCFが充当されるものです。
今回はWBSファンディングがSPEであり、みずほ信託を通じてソフトバンクモバイルのローンに充当し、供与されたローンを原資としてソフトバンクモバイルはBBモバイルにローンを提供、BBモバイルがLBOローンの出し手であるシニアレンダーにローンを返済すると共に、英ボーダフォンから供与された劣後ローンの一部も返済を行なうスキームでした。
既存のABSでは裏付資産自体が将来のCFを生みますが、WBSでは事業運営者が土地や設備等の事業資産を使用し、事業を行なって初めてCFが発生するため、WBSには事業リスクと事業運営者の信用リスクが混在し、CFの変動性はABSよりも高くなります。
そこで事業リスクに対しては証券の満期まで事業継続性を担保するための仕組みが必要となり、事業運営者の信用リスクに対しては事業運営者がデフォルトしても社債・ローンの返済が可能な仕組みが必要であるため、あの時のWBSにもそのスキームが構築されていました。
格付機関がそのスキームが有効だと判断すればWBSには事業運営者よりも高い格付が付与され、資金調達コストが軽減出来るスキームでした。ソフトバンクの資金調達のスキームがまとめられている。リスクをとって勝負をしてきて、今のソフトバンクがあるのだと再認識。
2004年5月にソフトバンクが日本テレコムを買収した直後、私は19歳でドライカッパーを用いたソフトバンクの直収電話を法人向けに販売しまくっていた。そこにもNTTとの戦い(直収電話もNTT回線を借り受け)があった。
文中に「“何をやるか分からない会社”として、危なっかしさも持つ存在だった。」とあるが、訪問先ではソフトバンクに対してまさにそのような認識を持つ人が多くて大変だった覚えがある。しかし翌年に球団を持って一気にイメージが変わってかなり営業しやすくなったと記憶している。