【独占1万字】経済外交のプロが語る、中国デジタル覇権の脅威

2018/8/13

「デジタル一帯一路」への警鐘

中国が、インターネットのあり方を変えようとしている──。欧米諸国の間で、こんな懸念が高まりつつある。
欧米のネット企業の多くが中国市場でのサービス提供を阻まれてきた一方で、中国のネット大手は国内市場で成長を遂げ、独自のイノベーションを実現。海外進出を進めている。
こうした企業とともに、中国の習近平政権は自国独自のインターネットのモデルを輸出しようとしているという。
ただ、中国のネットのあり方は極めて特殊だ。13億の国民に富を得るチャンスをもたらす一方で、国家が検閲・監視に利用する空間でもある。また、中国のネット企業は共産党による一党独裁政権と密接につながっている。
中国のネット大手が打って出ようとする地域は、中国・東南アジア・中東・アフリカをつなぐ、巨大経済圏構想「一帯一路」のルートと重なる。実際、習近平国家主席は4月、「『一帯一路』の建設」を通じた「21世紀のデジタル・シルクロード」の必要性を説いた。
この動きに警鐘を鳴らすのが、甘利明・元経済再生相だ。
困難をきわめた交渉の末にTPPを大筋合意へと導いた甘利は、日本の経済外交を知り尽くす政治家の一人。日中友好議員連盟の顧問でもある甘利に、中国の「デジタル一帯一路」構想について聞いた。
甘利明(あまり・あきら)衆院議員、元経済再生相。1949年生まれ、慶應義塾大学卒業。1972年にソニーに入社、1974年に父・甘利正の秘書を務め、1983年の衆院選で政界入り。1998年、労働大臣として初入閣。経済産業相、規制改革担当相、経済再生相を歴任。(写真:Bloomberg)