チームと自身が力を発揮するために

ザ・ジェームズ・エージェンシー(The James Agency)のベロニク・ジェームズCEOは、国際的な非営利団体「起業家機構(Entrepreneurs' Organization:EO)」アリゾナ支部のメンバーで、会長を務めたこともある。
消費者広告、広報、デジタルマーケティングを専門とする総合代理店ザ・ジェームズ・エージェンシーの優れた職場文化は、地元でも全米でも評価されてきた。ジェームズCEOに、社員を育む活気ある職場をどのようにしてつくったのかと尋ねたところ、以下のような文章をシェアしてくれた。
*   *   *
現在のビジネスはペースが速い。業種や職業が何であれ、あなたは間違いなく、平日昼間のほとんどの時間を仕事に費やしているだろう。われわれの多くは、家族よりも、同僚と過ごす時間のほうが長い。週によっては、自分はオフィスに住んでいるのではないかと思うときもあるだろう。
母であり妻である私は、この現実がどれほど厳しいものかを理解している。こうした状況を少しでも改善するには、どうすればいいだろうか。
ポジティブな職場環境の利点については、これまでにたくさんのことが書かれてきた。そのような環境で働くことができれば、創造性や生産性、幸福度が上がり、ストレスレベルは著しく下がる。
会社を率いる事業主として、私はそういう職場をつくろうと努力している。月曜から金曜のほとんどを職場で過ごすことになるのだから、職場は、私のチームと私自身に活気を与え、社員を育む場所であってほしいと思う。
チームと私自身が力を発揮できる職場環境をつくるために、私が心がけてきた7つの方法を紹介したい。

1. まず感謝する

私は、ともに働くということは、権利ではなく恩恵だと強く確信している。われわれの代理店では、週のはじめに全員が参加して15分間のミーティングを行う。最初の議題は、チームメイトを褒めることだ。
公の会議で互いに感謝の気持ちを表す機会をもつことは、グループ全体のやる気を高め、その週に向けたポジティブな空気をつくる。自分は認められている、評価されていると感じるのに役立つ。
どのような仕事においても、感謝から始めれば、人を評価するという目標が設定され、それが組織全体に浸透するだろう。

2. 安全な環境をつくる

有害な職場環境ほど、仕事に悪影響を及ぼすものはない。そのような空気は、新しいアイデアを抑え込み、協調を阻害してしまう。安全な職場環境をつくるということは、ネガティブな雰囲気を排除し、すべてのアイデアを尊重するということだ。
そのアイデアが、新人のものであれベテランのものであれ、関係ない。公正さと誠実さと繊細さを持って、従業員が安心できるようリードしよう。

3. 汚れた皿をシンクに残しておかない

これは「他の人に後始末をさせない」という意味のたとえだ。
他の人が途中までやったプロジェクトを引き継いだとき、ファイルはないし、やり方はめちゃくちゃだとなれば、これほどイラつくことはない。2週間のパリ旅行に発つ寸前に、重要なドキュメントをその人だけのデスクトップにセーブしてしまって、他の人が見られないということもあるかもしれない。
散らかったままにしない、というのは実用面での解釈だ。もう少し情緒的な解釈をすると、「みんなの時間を尊重する」ということになる。
あなたがやったことを他の人がもう一度やらなければならない、つまり自分の仕事をひとまず置いて書類を探すのに時間をかけなければならないとすると、あなたは他の人の時間を大切にしていないと言っていることになる。
時間はわれわれにとって、最も貴重な通貨だ。同僚の時間を尊重しない人は、ネガティブな職場環境に貢献しているのだ。

4. ビジネスには「問題」はない、「チャンス」があるだけだ

感情が高ぶり、ストレスが増大すると、職場のほんの小さな問題が巨大な障害に見えることがある。
私はチームメンバーに、われわれが経験していることは「問題」ではなく、よく考え、分析し、評価するための「チャンス」なのだと伝えている。そうとらえれば、「次」はもっとうまく対処できる。「次」は必ずやって来るのだ。
さらに私は、どんな状況であっても、皮肉やユーモアを見つけようとしている。目の前の状況に展望を示してチームを笑顔にすると、重く張り詰めたオフィスの空気もたちまち軽くすることができる。

5. 一貫性が鍵

企業文化の新しいトレンドはたくさんある。フレックスタイム、チームビルディング、オープンオフィス、無制限の有給休暇、ペット同伴可など、挙げればきりがない。
価値ある福利厚生の話を聞けば、すぐに心ひかれるし、競合他社が提供していることを真似したくもなる。しかし、すべての企業に同じ方法が有効なわけではない。
私のチームは何より、一貫性が大切であることに気づいている。われわれにとっては、職場文化における最新の流行に気を取られるよりも大切なものだ。
変化は健康的なものかもしれない。しかし、良いものを「破壊的に変革」してしまうと有害な場合もあるし、自分の組織の文化的なバランスに影響する可能性もある。

6. ポジティブな考え方を奨励する

人生は短い。だから、あなたのビジネスの倫理的基準に合わないネガティブな行動に時間を費やす暇はない。私は、ポジティブな考え方をするよう、積極的に自分のチームに働きかけている。どんなときも、つねに。
物事がコントロールできなくなっているように見えるときも、あるいは期待した結果を得られなかったときも、ポジティブな考え方をしていれば、最終的にはポジティブな結果が導かれるのだ。
グループとして、1週間、1カ月、そして1年のポジティブな目標を設定しよう。チームの方向性がまとめやすくなり、全員が同じ目標を目指すことができる。

7. 緊急案件のために、重要なことを犠牲にしない

クライアントからの緊急の電話やミーティングがあるからといって、チームメンバーと一対一でつながりをつくる時間を省くのは簡単だ。
しかし、あなたとチームとのつながりは、ポジティブな職場環境を維持するために極めて重要だ。リーダーとして、あなたは会社のチアリーダーであり、あなたの組織を束ねる接着剤でもある。
普段からメンバーとつながりを持っていないと、ビジネスのミッションやビジョン、エネルギーはたちまち弱まり、職場文化の強さが衰えてしまう可能性がある。スケジュールを組み直してもかまわないので、緊急案件や締切のせいで大切な会話がなくなってしまうことのないようにしよう。
信頼、仕組み、明確さ、意義のある仕事という材料が合わさったとき、それらはポジティブな職場づくりのためのしっかりした土台になる。あなただけの素敵な味を加えれば、魔法のレシピの完成だ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Entrepreneurs' Organization、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:scyther5/iStock)
©2018 Mansueto Ventures LLC; Distributed by Tribune Content Agency, LLC
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.