次の金融危機の震源地か。「独裁」が過熱させたトルコ経済
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トルコ経済のリスクは、公共事業が主導する景気の過熱、財政均衡の悪化と債務の増大、インフレ率の上昇、そして通貨リラの下落、が連鎖しています。途上国では、GDPの成長率がよくても、政府の債務やインフレ、通貨の安定は危機に瀕しており、何かのきっかけで崩れる脆さがある、というのはよくあることです。いわゆるアラブの春の前、エジプトもシリアもGDPの数字は政府の公共事業や巨大プロジェクトに牽引されて、高い成長率を示していました。エルドアン大統領は、大規模なバラ撒きによって支持者の歓心を買うのを好むといった種類の政治家であり、公共事業はまた与党の資金源を捻出する手段でもあります。
トルコ経済の崩れるきっかけ、となりそうなのは、米国が課すであろう経済制裁であると思われます。さらに、8月6日に米国がイランに対する経済制裁を開始すれば、トルコ政府はイランとの経済関係継続を強行しようとする、米国はトルコ企業への制裁を適用する可能性が高いです。トルコ政府や国民の多くにとって、米国がトルコを追い込んだかのように映るでしょう。1998年の通貨危機のようにヘッジファンドが通貨の下落を引き起こす、ということになるかはわかりませんが、トルコ・リラの下落はさらに続くでしょう。世界的な金融危機のきっかけ、という規模になるかはともかく、新興国での通貨下落の連鎖を引き起こすことにはなるでしょう。お金を使いたがる立場の政府に通貨発行を任せると、財政規律が緩んで経済が混乱するから、中央銀行は政府から独立性させることが重要だ、というのが何度も痛い目に遭って学んだ先進国共通の知恵。「中央銀行は再び金利を上げて資金の流出を止めた。だがもはや、中央銀行の独立性は大きく損なわれてしまっている」という結びが意味するのは、要は、エルドアン大統領が中央銀行という財政赤字へのブレーキ装置のスイッチを切って、規律ある財政から急速に遠ざかっているということですね・・・ 周辺にロシアの影響を受ける不安定な国々を抱え、欧米との摩擦も強まるなか、そうまでして経済を「過熱」させる戦略的狙いはなんなのか。日銀の量的緩和を頼りに財政刺激を続ける我が国も政治の有り様として似たところが無いでもないけれど、我が国は経常黒字で対外債権国。戦略的な狙いがはっきりしないままトルコが経常赤字と対外債務の増加を容認しているなら、確かに先行きに不安を感じます。
でも、そんなトルコリラ建て金融商品が結構売れてるみたいですね。高い利回りと、購買力平価より割安というのがセールストークになっているようですが、リスクも高そうです。