株式会社ユーザベースは、2018年7月2日に、NY発のクオリティ経済メディア「Quartz」の買収を発表しました。同日夜に開催された記者・アナリスト・投資家向け説明会の模様を全文書き起こしでお伝えします。

【買収発表】NewsPicksが米クオリティ経済メディア「Quartz」を買収する理由

Quartz創業者からNewsPicksへのメッセージ

(見逃し配信)NewsPicks が Quartz を買収する理由
「経済情報で、世界を変える」
梅田:皆さま、本日は急な発表のなかお越しいただきまして、大変ありがとうございます。ユーザベース代表取締役の梅田と申します。まず私から本買収の目的と、本買収がNewsPicks事業に意味すること、そして今後の統合プランについて説明させていただきたいと思います。
本買収の目的ですが、これは我々が創業以来一貫して掲げて続けている、「経済情報で、世界を変える」というミッションに対して最短距離であること。これに尽きると思っております。
本買収によりNewsPicksは、今後5年で有料会員100万人、MAU――毎月訪れてくれるユーザー数が1000万人の経済メディアになることを目指していきたいと考えております。5年後、世界で最も影響力のある経済メディアになる。これをまっすぐ目指していくことが、本買収の大きな目的となります。
現在のNewsPicksの有料会員数は7万人強ですが、この数字から考えていくと、先ほどの目標は、今の延長線上の成長ではとうてい到達できません。ですから、この非連続な成長曲線を描くために本買収をする、ということが大きな目的になります。
NewsPicksを開始して今年でちょうど5年になります。5年前、NewsPicksを始めた時期というのは、スマートフォン、SNSソーシャル、この2つの大きな力によってメディア業界が大きな転換期を迎える、そのような時代でした。この2つの大きな波を見て、これはメディア業界が大きく変わるぞと参入を決めたのが、NewsPicksを始めた5年前です。
その後5年間かけて試行錯誤を繰り返しながら、今のNewsPicksの事業モデルを作っていきました。NewsPicksは現在売り上げ成長率で80%近くなってきておりますし、昨年は収益化もし、ひとつの事業体として永続性のあるものとなってきました。
昨年、私は米国に行き、Dow Jones社との合弁会社で事業展開を始めました。そこでさらにNewsPicksは世界に通用する事業モデルである、このモデルを世界に発展させていこうということを確信し、今後5年間、集中して実現していきたいと思っております。
強みは3つのバランス
では、これまで5年間でどのようなモデルを作ってきたのかということを、簡単に振り返りたいと思います。我々が作ってきたモデルの最大のユニーク性であり優位性というのが、(スライドを指しながら)このプラットフォームです。多くのコンテンツがここにある、つまりユーザーがワンストップでコンテンツを発見できるというのが、プラットフォームの価値です。
このプラットフォームという価値と、そのコンテンツに対してユーザーがコメントし、フォローをし、Likeするというコミュニティの価値。さらにそこに独自の編集部、独自の広告のクリエイティブチームを作る。その独自のコンテンツから生まれる有料課金の収益と、ブランド広告の収益。このプラットフォーム、コミュニティ、メディアという、今までバラバラにしかなかったものを初めて統合してひとつの世界観を実現したことが、我々がNewsPicksで作ってきたモデルになります。このモデルをもって昨年、Dow JonesとのジョイントベンチャーであるNewsPicks USA, LLCを作り、米国へ進出いたしました。
米国ではまず日本と同じく、このプラットフォームとコミュニティ、この2つだけに集中してサービスを展開いたしました。
米国版をリリースして8か月になりますが、現在、日本を超える成長を実現しております。
この数値は今回初めて発表させていただきますが、最初のフェーズで最も大切にしているのが、DAU(Daily Active User)というKPIになります。このDAUはどれだけのユーザーが毎日訪問してくれるかという数値で、現在、日本の2倍を超えるスピードで成長しております。この勢いが、「これはいけるぞ!」という私の自信の源になっているひとつの数字です。
さらにその数字の裏にあるKPIが、我々が(7日間)継続率と呼んでいるものです。これは最初にダウンロードした日から7日間使ってくれているユーザーがどれだけいるのか、という数字を表したものです。我々は日本で5年間運営してきておりますので、どのフェーズでどの数字を達成したらサービスは成功するのかしないのか、すべての指標をしっかりと持っています。
この7日間継続率が30%前後であれば、このサービスはいけるぞというサインになります。日本ではここに到達するのはそれなりに時間がかかったのですが、米国ではすでにこの数字を超えてきているということも、NewsPicksに満足いただいているユーザー様がしっかりいる、ということが表れている数値です。米国での現在の初速が今非常に良い状態であり、この成功を確実なものにする、さらに加速させていくために、今回Quartz社を買収いたします。
メディアを強化し、米国でのトライアングルを完成させる
では具体的に何をするのか。NewsPicksが日本で実現したトライアングルでご説明いたします。
プラットフォーム、コミュニティは米国でももう始めており、これは今、いい数値が出ています。最後のメディア、自らコンテンツを作っていくところが最後のピースですが、ここをQuartz社と一緒にやることが、我々のミッション実現を目指すための最短距離だと思っています。
このタイミングは、日本でNewsPicksを始めたときに、佐々木(紀彦・CCO)が東洋経済から移籍して、NewsPicksで独自の編集部を作った時期と重なります。現在から振り返ってみても、NewsPicksの成功要因はやはり、佐々木という人材が来たことが本当に大きかったと思っております。ですから米国で成功するためにも、ベストな人材に来てもらうことは絶対条件です。
この部分に関してはベターではなく、ベストでなければなりません。成功のために最も大切な要因であると考えて、米国での私の力を一番使っておりました。その際には、候補であると思われるメディア関係者をリストアップしてヘッドハンティングする道、ニュースルームごと買収する道、いろいろな選択肢を検討いたしました。その中で、今回買収するQuartz社のKevinとJayの名前は、リストの中でもトップにありました。
そうして実際にKevinとJayにコンタクトをとって話していく中で、Quartz社とユーザベースは目指すビジョン、方向性、バリュー、全て合っていると直感しました。であれば一緒にやったほうがいいということもあり、今回の買収に至りました。ですので、Quartz社は今後、コンテンツを作る機能、ここにフォーカスして、このトライアングルを完成させていくことになります。
Quartzを買収した理由
ではこのQuartz社がどのような会社であるかを、簡単にご紹介させていただきます。Quartz社は2012年に創業。おそらく世界で初めて、本物のジャーナリズムとモバイルテクノロジーを組み合わせた経済メディアだと思います。
当時はまだウェブメディアの世界というのはブログ中心で、本物のジャーナリストがそこに記事を提供することはまだあまりありませんでした。そんな時代に初めて、本物のクオリティジャーナリストが、モバイルファーストでコンテンツを提供するというコンセプトで始まった会社です。
私がNewsPicksの構想を考え始めたのが、2013年。世界の事例を調査していた中でQuartzのことを知り、彼らのコンセプトや非常に美しいデザインに非常にインスパイアされました。これが私とQuartzとの最初の出会いです。
Quartz社の経営メンバーは、いずれもメディア出身者で構成されています。今の経営メンバーはこのスライドの4人ですが、今後も同じメンバーで経営していきます。
共同CEOには、Wired出身のJayと、Wall Street Journal出身のKevin。Kevinはコンテンツ、記事を作るところに責任を持っており、Jayは発行人であり、マネタイズ、広告事業に責任を持っております。そのJayと一緒に広告事業の責任を持っているのがチーフ・レベニュー・オフィサーのJoyであり、チーフ・プロダクト・オフィサーのZachは、Kevinと共にプロダクトに責任を持っております。あの美しいQuartzのデザイン、UIというのはこのZachから生まれています。
Quartz社のカルチャーはユーザベースと非常に似ており、彼らもチーム経営をしています。経営チーム4人が非常に強い信頼関係で結ばれている、これもユーザベースの経営チームに非常に似ていると強く感じました。
Quartz社はクオリティジャーナリズムも追求しており、2012年の創業から5年で、ジャーナリズムにおける数々の賞を取っています。
ちょうど2週間前に、これビジネス金融ニュースの最高峰といわれているジェラルド・ローブ賞も受賞し、話題になりました。
ダボス会議でも、Quartz編集長がホストするパネルディスカッションも設けられました。
今、Quartz社の読者は約2000万人。そのうちの40%がすでに米国外にいます。
Quartzの5つの強み
なぜユーザベースはQuartz社を買収したのか。大きく5つの理由、裏返しではQuartzの5つの強みでもありますが、それをご紹介したいと思います。
1つ目は、NewsPicksがターゲットとしたい2000万人の読者を既に抱えていることです。具体的には若手グローバルビジネスリーダーというものになりますが、Comscore Indexでは、QuartzはC-suiteと呼ばれる若手ビジネスリーダーで最も読者に支持されていることとされております。この2000万人のハイクオリティな読者を抱えていることが、1つ目の理由になります。
2つ目は、彼らの取材ネットワークです。NewsPicksは日本が中心になりますが、彼らは115カ国、19言語にネットワークを広げています。このグローバルな取材ネットワークを持っているとうことは、2つ目の大きなポイントです。
3つ目は、とにかく人です。日本でもつくづく感じていることでありますが、どれだけ優秀なジャーナリストが来てくれるかで競争力が決まってまいります。Quartz社にはすでに世界クラスのジャーナリストが集まっていることが、3つ目の要因になります。
4つ目は、常にモバイルファーストであること。モバイルユーザーに対して美しいデザインとともにコンテンツを届けることをやっている。我々NewsPicksでも、ジャーナリストとエンジニアが横に座りながら一緒にサービスを作っていくという文化を作り上げてきました。同じことをQuartzでも実現しているという点も、我々と非常に似ているなと感じた点です。
最後は、Quartzのクリエイティブを魅力に感じていただいて、すでに出稿いただいている広告主の方々です。世界トップの約320社以上のクライアントを既に抱えているということが大きな特長であり、我々が買収させていただいた大きな理由のひとつになります。
以上のとおり、NewsPicksがこの5年間で培ってきたビジネスモデルと、Quartz社が持っている5つの強みを組み合わせることで、この次の5年間を見据えた非連続な成長を実現していこうと考えています。
どうやって次のステージに向かうのか
ここからは具体的に、どのようなプランで統合していくかをご説明していきます。
Quartz社は創業以来、ずっと右肩上がりで成長してきました。今年も半分終わっておりますが、4000万ドル近い売上高に向けてしっかり進捗しております。ただし昨年だけは、一回売り上げが下がってしまいました。これは彼らのクライアントのひとつで産業セグメントの業績が悪くなってしまい、そこの広告出稿がなくなってしまったことが大きな要因であります。
広告ビジネスをやっている皆さん共通の認識かと思いますが、広告による売上は、課金に比べて外部環境に依存しやすい傾向があります。Quartzもそれによってこの2017年は売り上げが減少してしまったので、我々がコンタクトする前から、有料課金モデルを始めることは彼らのプランの中にありました。
私がコンタクトした際にも、「NewsPicksは日本で有料課金の成功モデルを作っている。だったら一緒にやったほうがいいのではないか」と同じ方向を見ていたということも、大きなきっかけのひとつであります。課金モデルを次の収益の柱にし、日本で作ってきたトライアングルモデルを米国でも実現させていきます。
我々とQuartz社の間では、この戦略を「Membership Funnel Strategy(MFS)」と呼び、いわば共通言語で話をしております。
具体的にご説明しますと、まず一番上の階層が一般的な読者です。Quartz社が今手掛けているのはこの一番上だけです。無料記事を提供し、読者が集まることで、そこから広告収益を上げていくというものになります。
ただやはり記事を読んだらすぐ帰ってしまう読者なので、メディアに対するエンゲージメントはあまり高くないわけです。ですから、その読者のエンゲージメントを高めて、NewsPicksのようなユーザーコミュニティに変えていくことが、次のステップとして非常に大切です。ユーザー登録してコメントしてもらい、一方向だったただの読者から、双方向の関係にしていくというところが、ステップ2、コミュニティにしていくところです。
最後のステップ3は、日本のNewsPicksで実現しているように、オリジナルコンテンツを作り、プレミアムユーザー化するフェーズです。読者とコミュニティから広告収益を、プレミアムユーザーとNewsPicksアカデミアのようなハイプレミアムユーザーから課金収益を生んでいき、広告と課金がバランス良く成り立っていく。そのような事業モデルを作っていこうと、Quartz社と話しております。最初のステップは、まずこの一番トップのファネルです。これが全ての入口になりますので、これをどんどん大きくしていきます。
今後のロードマップ
すでにQuartz社は、我々がリーチしたい読者を世界で2000万人も持っております。この2000万人が最初の入口になりますし、もっともっと広げていけると思っております。Quartz社の無料記事は引き続き提供し、集まってきた読者をもっとエンゲージメントの高いコミュニティに変えていくというのがステップ2。Quartz社とは議論を進めており、記事をおもしろいと思ってくれた人がどうやってコミュニティに参加してくれるか、これに挑戦したいと考えております。
次のステップ3が、有料ユーザー、プレミアムユーザーに転換するところ。プレミアムユーザーに転換する上で重要なドライバーが、有料コンテンツです。その有料コンテンツを生み出すのは、どういうチームを組めるかにかかっています。ここに関しましてQuartz社はすでに100人のジャーナリストを抱えておりますので、9月、10月をめどに専用の有料課金チームを作ろうと考えています。その有料課金チームが作るコンテンツをフックに、プレミアムユーザーにしていくことを考えております。
このようにこれまで日本の5年間で作り上げてきたものをベースに、2019年〜2020年に投資をし、一気に世界に広げてまいります。そして2021年に収益化し、2023年までに有料会員数100万人、MAU1000万人の、世界で最も影響力のある経済メディアになることを目指します。
以上が私からの説明になります。最後に、Quartz社の共同社長であるKevinとJayからメッセージをもらっておりますので、そのメッセージを流させていただきたいと思います。
Q. どこに投資していくのか?
司会:それでは質疑応答に移らせていただきます。ご質問のある方は挙手にてお願いいたします。
質問者1:今日はご説明ありがとうございました。統合後のスケジュールについて、今年9月、10月あたりには有料コンテンツを手がけるチームを作るとお話がありましたが、どのくらいのスケジュール感で考えていらっしゃるのかを教えていただきたいです。
またロードマップでお示しいただいたところでは、2019年、2020年は投資を加速させるということだと思いますが、すでにDow Jones社と米国のNewsPicksで投資を踏まれている部分もあると思います。それとの位置づけの違いや、今回発表されているところに関して、主に何にお金がかかるのかということについて、教えてください。
梅田:ありがとうございます。まず1点目のご質問ですが、年内にいったんこの3ステップを全部やってみるということを考えております。日本でもそうでしたが、やはり最初は必ず試行錯誤の期間があります。この試行錯誤のために年内残りの5か月を使い、年内にMFSを作り上げ、2019年、2020年に一気に広めていくことを大枠では今考えております。
2点目の質問ですが、Dow Jones社との合弁会社であるNewsPicks USAも変わらずやっていきます。このNewsPicks USAは、日本のNewsPicksとDow Jonesの合弁会社になっているのですが、今後は日本のNewsPicksの代わりにQuartz社が引き継ぐかたちになります。
そうなりますので、NewsPicks USAは米国No.1の経済メディアであるDow Jones、クオリティ新興メディアNo.1のQuartz社、そして日本のNewsPicksの3社体制で一気に攻めていくということを考えております。
質問者1:お金がかかる部分というのは、例えば編集部を充実させるとか、特にどういうところがありますか?
梅田:Quartz社は現在も収益が上がっている状態ですが、これはまだしばらく広告事業がメインになってきます。有料課金に投資をし新たにチームも組成しますが、日本でもそうでしたが、有料課金というものは徐々にしか結果に出てきません。
ですから最初の2〜3年は、なかなか収益化しないと考えています。ただここを乗り越えていくと、今の日本のNewsPicksと同じように強い事業モデルになると考えています。ですので、投資の大きいところの1つ目は有料課金の部分になります。
2つ目に大きい部分が、マーケティング、コミュニティを作っていくところです。ここは引き続きマーケティング費用がかかっていきますので、この2点が投資のなかで大きな割合を占めていくと思います。
Q. 買収額の82.5億円は高いのか、安いのか
質問者2:買収額が7500万ドル(約82.5億円)とのことですが、これはどう評価されているのでしょうか。高いのか、安いのか。あとはアーンアウト条項が付いてくると思いますが、これはどのくらいの規模になるのか差し支えなければお願いいたします。
梅田:買収額につきましては、我々としては高くもなく安くもなく、適正な金額だと考えております。スライドのAppendixにも載せていますが、米国の新興メディアというものはほとんど赤字であり、収益が上がっているところはほとんどありません。ですから今までの買収額を見るときにも、PSR(Price to Sales Ratio、株価売上高倍率)と言いまして、売上高の何倍で買収されたかということがひとつの基準になっています。
このスライドで過去の買収案件を見ていきますと、今回のQuartz社の買収については、だいたい真ん中あたりです。ここから見ても非常に適正な価格であったと言えるのではないでしょうか。
アーンアウトに関しては、有料課金の要素も入っています。有料会員数と一定水準の売り上げを達成できてプラス3500万ドルを支払います。
Q. 海外企業を買収して成功する目算は?
質問者3:大変恐縮ですけれども、過去に日本企業が海外企業を買収して、成功した例を拝見したことがありません。うまくいかなかった理由のひとつとして、先方のチームが徐々に辞めていってしまうということもあると思います。今回はアーンアウトにしているケースですが、十分なキャッシュを獲得できる人がいるという意味では、やはり人材の離脱が起き得ると思うのですが、何かそういった可能性を低くするような見立てはあるのでしょうか。
梅田:まず株の売却に関しまして、今回の買収がこれまでの他の買収事例と違うのは、Quartzの創業者、今の経営メンバーは株主ではありません。Quartzの上にAtlantic Mediaというホールディングス会社がありまして、その上にDavidという100%のオーナーがいるかたちになります。ですので、今回我々が買収することで、その金額が経営メンバーに入るというわけではないということが、まず1つ違う点です。
また、今回は投資銀行などから持ち込まれた売却ありきの案件ではありません。両社の事業提携の話から始まったビジネス、ビジョンありきの話なので、そこも大きな違いだと思います。
当然、契約でも彼らのコミットメントを明示しております。このように契約でできることは工夫しておりますが、何より大切なのは、我々との信頼関係であり、どれだけ同じビジョンにワクワクしてやっていけるかということです。私は最近米国に拠点を移しましたが、これは米国でも同じだと確信しておりますし、一番学んだことでもあります。
最後に大きなところとしては、経営トップ、創業者がしっかりコミットしているというところです。今回彼らが買収提案を受け入れてくれたポイントも、私が家族とともに米国に移住し、そこにお金も時間も注力しているということも、大きな要素だったと考えております。私自身としてもQuartzの経営メンバー4人と約半年やりとりを続けてきて、このチームだったらやれるぞという肌感覚がありますので、そこも大きな違いじゃないかなと思っています。
梅田(中央)とJay(左)、Kevin(右)
質問者3:資料のなかにあるQuartz社の業績には売上高が3500~3800万ドルで、営業損益でいくと赤字とはなっています。けれども御社の業績修正の資料には、Quartz社の営業利益を取り込めますが営業損益ベースがマイナスの影響ですという表現になっていて、この整合性が少しよく分からなかったので差し支えない範囲でご説明いただけますでしょうか。
梅田:そちらにつきましては太田からお答えさせていただきます。
太田:プレスリリースに記載しているQuartz社の2018年12月期(予想)の売上は3500~3800万ドル、営業利益としてはマイナス300万ドルからマイナス600万ドルでございます。
2018年の営業利益が赤字である一方、同時に発表した当社の業績予想修正では「営業利益を取り込み」と表現していることの関連をご質問いただいたかと思いますが、まず、Quartz社の業績は、年末にかけて特に広告事業の売上が伸びて行く予想でございます。また、本件のクロージングは7月31日を予定しており、業績予想修正では、Quartz社の8月~12月の業績を折り込んでおりまして、Quartz社のここの期間の営業利益は黒字を見込んでおります。
一方で、買収金額とQuartz社の純資産の差額がのれんとして計上されます。日本の会計基準におきましては、こののれんの償却負担があるということ、あとは買収に伴う各種専門家へのコスト等々が発生することを含めまして、営業利益は期初予想を下回る見通しです。買収に伴う一時コストというのは、来年は発生しませんので、そこは今年のみの影響になります。一方でのれんにつきましては今年については5か月分の参入でございますが、来年は通期でのれんの償却負担が発生します。来年につきましては、また精緻な見方が分かり次第、発表させていただきたいと考えております。
質問者3:3つ目が、米国での利用状況について。継続率は日本のときよりやや高いということですが、何年か前になりますのでスマホの普及率も今よりもやや低かったころで、比較すると現在がやや高くなるのは当然なのかなという気もします。米国で手応えを持たれている背景について、具体的にどういったところでそう感じられたのか、梅田さんご自身の景色についてご説明いただけますでしょうか。
梅田:スマホの普及率と先ほどの継続率は、関係しないかと思っております。7日間継続率というのは、1人のユーザーがダウンロードして、そのあと何日間使い続けてくれているかという、入ってくれたユーザーを計測しております。まずNewsPicksをダウンロードしてくれたユーザーがまず分母になっており、そのうち30%のユーザーは7日間まで使い続けてくれているということです。日本でも7日間ユーザーが使ってくれれば、そのあとはほぼ脱落していかないことがわかっていますので、7日間継続率で30%を維持することは非常に大切な指標であり、今も継続して見ているものであります。当然5年前と状況は変わっておりますが、米国において8か月でこの継続率に到達しているというのは、自信を持っていいと思っております。
あとはもちろん、感覚値の部分もあります。5年前に日本で始めたときも鮮明に覚えていますが、米国でもユーザーからのフィードバックや盛り上がりを感じています。ユーザーが習慣としてNewsPicksを好きになっていく。一部のユーザーだけでもそうなっているのを見ていますと、日本で起きていたことが米国でも出てきていることが、今回の自信の背景であり、一気に投資をしていこうと考えた背景になります。
(注:本スライドで使用している7日間継続率は、日本と米国の直近同時期で数値を比較しています。)
質問者3:今回のご決断にあたっては、米国でのパートナーであるDow Jonesさんのご反応はどうだったのでしょうか。Dow Jonesさんにとっては競合メディアであったり、ジャーナリストの囲い込みという観点でいくと、純然たる競争相手だと思いますけれども、その辺りについてはどうだったのでしょうか。
梅田:まずDow Jones社が我々と合弁でNewsPicksを始めようとした背景には、プラットフォームビジネスをやろうという決断があります。プラットフォームビジネスをやるということは、ほかの競合メディアであるBloombergやReuter、そういうところとも協力関係を築いてやっていきますという判断があるわけです。今、FacebookやTwitterに依存している構造から、主導権をもてるプラットフォームを目指すということになりますので、まずこの合弁会社をつくったところから、競合メディアとも協力していくというところは、彼らの決断の中にもともとあるというものになります。
なおかつ、Dow JonesはFactivaというBtoB向けのプラットフォームサービスをやっております。このFactivaでほかのメディアとも非常に良好な関係がありましたので、今回Quartz社が入ってくることで、何か大きな問題提起をしてくるかというのは考えにくいと私は思っています。
質問者3:おそらく今後、太田さんの米国での役割は重要だと思うのですが、マネジメントにおいて太田さんの心掛けたいと考えているご抱負をいただければと思います。
太田:私も現経営陣のJay、Kevinと会ってまいりました。一番重要なことは、彼らとの信頼関係をつくることです。今回、かたちとしては当社がQuartz社を買収ということになりますけれども、我々がオーナーシップを持っているから上ということではなくて、彼ら自身が飛躍できる環境をどうやって作っていくかが大事で、まさに当社とQuartz社はパートナーの関係だと思って臨んでいます。
私は過去、投資銀行時代にM&Aに関わっておりましたが、M&Aで失敗するパターン、成功するパターンを多数見てきました。ですので今回は、過去いろいろ見てきたM&Aの教訓を活かしながら、いかにうまくやっていくかが問われていると思います。
繰り返しになりますが、今後、私が一番時間を使わなければいけないことは、彼らとの信頼関係をつくること。今、Quartz社の経営トップとは信頼関係を構築できておりますが、各メンバーとも信頼関係を築いてまいります。この点で重要なのは、当社とQuartz社は、企業カルチャーが似ているということです。これが似ていない買収では、統合の過程で衝突することがあります。
今回、我々が自信を持っているのは、ここの企業文化が似ている、いわゆる言語が共通で、目指す世界が一緒ということです。ですので衝突することはあまり考えていなくて、お互いが本当に信頼し合いながら、5年後にNo.1の経済メディアに向かってやっていけると考えております。信頼関係をつくりながら、一方でビジネスとしての数値管理を徹底しながら、しっかり結果を出していきます。
数値管理と申し上げているのは、すぐに何か利益を求めるというよりも、先ほどありました通り今後2年間の投資が結果として出てきているかどうかを見極めながら、2021年の黒字化に向けたロードマップをつくること。それこそが私の使命だと思っていますので、そこに向けて全力でやりたいと考えております。
Q. NewsPicks・Quartzの日米共同コンテンツの可能性は?
質問者4:Quartzの米国版と日本版の関係性についてお伺いします。今後、Quartz社がつくられたオリジナルコンテンツが日本語で配信されるのかということですとか、例えば、リアルのイベントで、日米共同で何かされていかれるなど、構想を教えてください。
梅田:そこは十分あり得ると思っております。NewsPicks日本版の編集部も、今年5月にシリコンバレー支局をつくりました。今後はシリコンバレー支局の洪(由姫)がQuartz社と共同で取材していくことも考えておりますし、ユーザベースとして計画している9月の大型イベントに、Quartz社のメンバーに来てもらうことも話をしております。これらの連携が結果としてNewsPicks日本版のコンテンツのクオリティアップにつながっていく、その貢献も大きくあるのではないかというふうに思います。
質問者4:あと現在、プロピッカーは日米でそれぞれ何人ぐらいいらっしゃいますか。
梅田:米国で約30人ぐらい、日本版で約200名です。
質問者4:ありがとうございます。
司会:それではただいまを持ちまして、ユーザベース・NewsPicks説明会を終了させていただきます。本日はお忙しい中、ご出席いただきまして誠にありがとうございました。