[29日 ロイター] -中国のパソコン(PC)大手レノボ・グループ(連想集団) <0992.HK>は29日、米グーグル<GOOG.O>の携帯電話端末部門モトローラを29億1000万ドルで買収することに合意したと発表した。

ハイテク分野では中国企業による過去最大の買収となる。

レノボは先週、米IBM<IBM.N>の低価格サーバー事業を23億ドルで買収すると発表したばかり。

モトローラの買収を通じ、競争が激しい米国の携帯電話市場に参入し、米アップル<AAPL.O>、韓国のサムスン電子<005930.KS>などと競合することになる。

グーグルは2012年に125億ドルでモトローラを買収。グーグルは、今後もモトローラのモバイル特許の大半を所有する。

レノボは今回の買収に伴い、2000件以上の「特許資産」を取得する。具体的な資産の内容は不明。

レノボの楊元慶・最高経営責任者(CEO)は「このような象徴的なブランド、革新的な製品群、素晴らしいグローバルな人材の獲得により、レノボは世界のスマートフォン市場で強力な企業となる」との声明を発表した。

<レノボの狙い>

フォレスター・リサーチのアナリスト、フランク・ギレット氏は「モトローラのスマートフォンはデザインや販売の面で特に際立った存在ではない。モトローラというブランドを通じて手早く認知度を高めることが狙いだろう。デザイン、マーケティング部門を欧米で活躍する人材で強化する狙いもあるのだろう」と述べた。

買収には米中当局の承認が必要。米国では中国企業による買収案件が厳しい審査を受けることが多く、アナリストは今回の買収にも、政治的な問題が影を落とす可能性があると指摘している。

レノボは、現金で6億6000万ドル、レノボ普通株で7億5000万ドル、約束手形(期限3年)で15億ドルを支払う。

<米国で知名度低い中国勢>

中国の3大携帯電話端末メーカーである華為技術(ファーウェイ)<HWT.UL>、中興通訊(ZTE)<000063.SZ>、レノボは、巨大な国内市場を背景に世界上位のスマートフォンメーカーに躍進したが、米国での認知度は低い。

ZTE、華為技術はすでに米国に進出しているが、レノボはこれまで米国の携帯電話市場には参入していなかった。

調査会社IDCによると、ZTEと華為技術の米国での市場シェアは昨年第3・四半期時点でそれぞれ5.7%、3%。アップルは36.2%、サムスンは32.5%だった。

IDCによると、レノボの昨年の市場シェアは世界5位の4.5%だった。

<グーグルの思惑>

グーグルのラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)は、同社のスマートフォン事業について、端末ではなくソフトに注力することでグーグルの力を発揮できると説明。モトローラはこのところ赤字が拡大しており、グーグルの業績の足を引っ張っていた。

米国株の時間外取引ではグーグル株が2.6%値上がりしている。

カンターのアナリスト、キャロライナ・ミラネシ氏は、グーグルのスマートフォン戦略について、自社製造をやめ、同社のアンドロイド端末を製造するメーカーを支援する方針だと分析。

「グーグルは目先、サムスンと密接な関係を維持することで利益を得られる。そして今回の取引で、アンドロイドのエコシステムに第2の強力な走者(レノボ)を送り込むことができる」と述べた。

今回の買収では、レノボ側のアドバイザーをクレディ・スイス・グループ<CSGN.VX>が、グーグル側のアドバイザーをラザード<LAZ.N>がそれぞれ務めた。

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