【証言】カンヌ受賞者が語る、映画監督が困窮する「3つの理由」

2018/5/24
2018年5月19日、是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ国際映画祭の最高賞、パルム・ドールを受賞した。
日本の映画が、カンヌで最高賞を受賞するのは1997年以来実に21年ぶりで、業界内外で、久方ぶりの受賞を喜ぶ声は大きい。
ただ日本映画は、長い低迷の時代を本当に抜けたと言えるのか。実は、映画業界には製作費を取り巻く構造問題が横たわっており、1つの作品の受賞をもって「映画業界復活」と宣言できないだけの事情がある。
一見、華やかな世界に見える映画業界だが、その内情は決して楽観できるものではない。国際映画祭で受賞をするような著名な監督で、生活は楽ではないのが現状だ。
NewsPicksは、今回、そんな映画界の現状を語ってもらうべく、映画監督の深田晃司氏を直撃した。
深田監督は2016年、俳優の浅野忠信氏が主演を務めた「淵に立つ」でカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で審査員賞を受賞。今年にはフランスの文化省の芸術文化勲章の授与が決まるなど、世界の映画界で評価の高い人物だ。
しかし、そんな深田監督でさえも、楽な生活を送れるような金銭面の余裕はないという。連載3日目の本日は、映画監督が儲からない構造問題を解き明かしていく。
深田晃司(ふかだ・こうじ)/映画監督1980年生まれ。2002年に自身初の長編映画「椅子」を製作。その後「ざくろ屋敷」「歓待」「ほとりの朔子」「さようなら」などを製作したのち、2016年「淵に立つ」が、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞。2018年フランスの文化省の芸術文化勲章の授与が決まる。5月26日最新作「海を駆ける」公開予定。(写真:Ian Gavan via Getty Images) 

貯金残高は「8円」

──華やかなイメージのある映画監督のお仕事ですが、その大半はギリギリの生活をされているようですね。
はい、その通りです。あまり貧乏ネタを話すのもお恥ずかしいのですが、私は4年前に、「貯金残高8円」という記録を叩き出したことがありました。