【大室×麻野】「白のリーダー」は「黒の部下」を近くに置け

2018/5/6
産業医の大室正志氏とリンクアンドモチベーション取締役・麻野耕司氏の「アフタートーク」を掲載。本特集を振り返りながら、「なぜ今、こうした議論が重視されているのか」など、メタな視点で特集全体を読み解いていく。

今風のリーダーとは

大室 2つの対談を興味深く読みました。改めて実感したのは、リーダーに求められる能力が明確に変化していることです。かつては、格闘技で言えば受け身から始めて一本背負いを覚え、最後にオリジナルの技を繰り出すといったように、リーダーへの上り方もある程度決まっていました。
僕はこれを「リーダーのスタンプラリー」と言っているのですが、昭和の自民党なら、当選何回かで初入閣し、その後外務大臣か大蔵大臣を務め、幹事長を経験し、そして首相になるという流れがありました。
その流れが崩れたのが、第1次の安倍内閣で、必ずしもスタンプを集めた人がリーダーになるとは限らなくなりました。
では、現在は何によってリーダーになるのか。それはビジョンやカリスマ性です。
大室正志(おおむろ・まさし)
2005年産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医学実務。ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医を経て現在は同友会春日クリニック 産業保健部門 産業医。メンタルヘルス対策、インフルエンザ対策、放射線管理など企業における健康リスク低減に従事。
以前、ソフトバンクの元取締役の方から聞いた話なんですが、孫正義さんは、会社の黎明(れいめい)期は実務家が脇を固めていました。彼らは営業、財務、法務など、一つひとつの能力は孫さんよりも高かった。しかし孫さんがあまりに大風呂敷を広げるために、「孫が言うならしょうがない」と、個別の能力では劣る孫さんについていったのです。