AIが予測するアマゾンの第2本社の場所とは

2018/3/22

第2本社の最終候補の20都市

現在、アメリカで人々が息をのんで結果を待っているのは、アマゾンの第2本社がどこになるか、だろう。
第2本社計画は2017年9月に発表され、これに応えて全米の240近い都市が名乗りをあげた。
テクノロジー企業にフレンドリーな政策があることや、主要な交通ハブから遠くないことなどの数々の条件が出されていた。
だが、各都市にとっての魅力は、何と言ってもアマゾンがこの第2本社計画に50億ドルの資金を注ぎ込もうとしていること、そして5万人の高給職が発生することなどである。
アマゾン本社があるシアトルでも、その周りにレストランやカフェなどが生まれ、数字に表すのが難しい影響も加えて、大きな「アマゾン効果」を与えている。それと同じものが欲しいと、各都市は渇望しているのだ。
そんな中、同社は1月半ば過ぎに最終候補となっている20都市を発表した。現在は、各都市を訪れて関係者に会い、敷地を見学し、条件をネゴしているところと見られる。
全米の注目が集まっているわけだが、そこへあるAIが最強候補は「ボストン」だと判定した。
このAIは、アメリカ最大規模の銀行のひとつであるウェルズ・ファーゴが開発したAI「アイエラ」だ。

最強候補、ボストン

アイエラは、深層学習技術を用いて、最終候補の20都市を比較した。2017年9月から2018年3月の間、SNSやメディアで言及されたアマゾンの会社名、本社や第2本社という言葉、各都市名などをデータとして採集。
その話題が拡散されるスピード、語られ方、センチメントなども分析され、同時に、マクロ分析や同社の株価への影響なども考慮された。その中からパターンを読み出して予測した結果が、ボストンだという。
ボストンとは、納得のいくところでもある。第2本社は、現在のシアトル本社と同規模、同機能を目指すとされているので、当然超優れた人材が必要になる。
テクノロジーが企業競争の核心となっている現在、シリコンバレーを除けばボストン以上にふさわしいところはないだろう。
MIT、ハーバード大学と優秀な教育機関や研究所も多い。アマゾンが買収したロボット会社も、ボストンが拠点だ。
マサチューセッツ工科大学 (MIT) ステイタ センター(写真:diegograndi/iStock)
西海岸のシアトル本社に対して東海岸に第2本社というのも、地理上、納得がいく。ひょっとして、わざわざAIに聞かなくても、最強候補になっただろう。

82%の的中率を誇るアイエラ

実はこのアイエラは、通常は株価を予想することが仕事のAIである。したがって、株価を左右しそうな世の中の動きを統計的に捉えて、広く市場や人々が期待する場所としてボストンを選んだという。
アイエラは、株価の動き予想ではこれまで82%の的中率を示してきた。
ただ、株価とはあまり関係ない、アマゾンと地元政府との関係、労働力の適合性、既存のアマゾンの事務所との関係といったことをアイエラは分析に盛り込んでいないようだ。
アイエラによると、ボストンに続く最適都市は、シカゴ、アトランタ、ニューヨーク、トロント、オースティン、ワシントンDCなどだ。
一方、人間的に考えると、ワシントン・ポスト紙の社主でもあるジェフ・ベゾスが住まいを構えるワシントンDCも上位候補になるかもしれないが、アマゾンを敵視するトランプ大統領の近くにするのも嫌だろう、といった判断が入る。
あるいは、他の人間の専門家によると、さらに別の都市が有望だと指摘されている。
例えば、アマゾンが勢力を伸ばしているヨーロッパとの時差が少ないニューヨークやその近郊地域、地価も安く渋滞も少ないながら、東海岸に近く優秀な卒業生を輩出するジョージア工科大学があるアトランタ、大学や研究所が集中し、テクノロジーの三角地域と呼ばれる一角、ノースカロライナ州のローリーなどだ。

一方、アレクサは……

いずれにせよ、今後こうした適所を選択するためにAIが使われるだろうことは間違いない。
企業の本社、コンサート、あるいは個人の転居まで、様々な条件や予想を組み合わせて最適な場所をこうして探すようになる。
思わぬ場所を発見したりする驚きがあるだろう。
ところで、肝心のアマゾンのAI、アレクサはどう考えているのだろうか。
早速質問してみたところ、「北米都市になります」と言った後、最終候補の20都市をアルファベット順に教えてくれるだけだった。PR的にも、優等生風の回答だ。
*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。
(文:瀧口範子、バナー写真:Guirong Hao/iStock)