コーヒーの香りが集中力をアップさせる科学的根拠とは

2018/3/30
ストレスを感じたり、疲れたらコーヒーを飲んでリラックスするというビジネスパーソンも多いはずだ。コーヒーにはその味だけでなく、香りにも高い癒やし効果があることが科学的にも証明されている。その秘密を、コーヒーの香りの研究に詳しい精神科医の古賀良彦杏林大学名誉教授に伺った。
感覚的な「好き・嫌い」が強い「香り」
──古賀先生は、コーヒーの香りの効用について10年にわたる研究を続けています。そもそも「香り」や「におい」は、私たち人間にとってどんな役割があるのでしょうか?
古賀 動物にとって、「におい」は重要な生存本能です。ひとつは自分の行動範囲を知らせたり、敵・味方を判別する手段。もうひとつは、食べていいものか、悪いものかを判断するためのもの。 しかし、現代の人間は前頭葉が高度に発達したことで、香りやにおいで判断するという嗅覚(きゅうかく)が退化してしまったのです。
ただし、感覚的な「好き・嫌い」は、見る、聞くなどより香りのほうが強い。誰もが映像や音楽の好みより、香りの好き嫌いのほうがはっきりしていますよね。これは動物的な本能の名残。人間にとって香りとは、「よい・悪い」ではなく、「好き・嫌い」という嗜好(しこう)品的な感覚です。
──感覚的な好みが大きく反映される香り。その中で、コーヒーの香りの魅力とはなんでしょうか?
香りは非常にパーソナルな領域で、好き嫌いがはっきり分かれるものです。その中でも、コーヒーは万人受けする、誰もが好む香り。香りだけでも十分楽しめて、人を引きつける魅力があります。
同じ食品でも、ケーキは香りだけでは満足感を得られないですよね。それほどコーヒーの香りが持つ魅力は大きいということです。 
コーヒーの香り成分は800種類以上で構成されています。それだけ複雑で唯一無二の香りを持つからこそ、多くの人に好まれ、心身ともにさまざまな効果を与えてくれるのです。
日本人はコーヒー好きで、国別の総消費量はアメリカ、ブラジル、ドイツについで世界第4位。コーヒーは飲む前に香りを楽しみ、口の中で味や香りを楽しみます。仕事中にひと息つきたいと、コーヒーを飲むビジネスパーソンも多いでしょう。私もコーヒーの香りは大好きです。
その点、「ジョージア ヨーロピアン」シリーズは香りにこだわった缶コーヒーだそうですが、いいところに目を付けたと思います。缶の飲み口が広いのも、香りを感じやすくていいですね。
カフェの店員も実感する香りの効果
──なぜ人々がコーヒーの香りに引かれるのでしょうか。実は日頃からコーヒーの香りに触れているカフェ店員100人に、「香り」が持つ効果について聞いたアンケート結果があります。
日本コカ・コーラ社によるカフェ店員100名を対象に「ジョージア ヨーロピアン 香るブラック」を対象に調査
調査期間:2018年1月18日〜1月31日
「はい」は「とてもそう思う」「そう思う」「ややそう思う」の計。「いいえ」は「あまりそう思わない」「そう思わない」「まったくそう思わない」の計
日常的にコーヒーの香りを嗅(か)いでいるカフェの店員さんだけに、香りの持つ力がよくわかっている結果ですね。
コーヒーの香りには、ふたつの相反する効果があります。リラックス効果と、集中力や緊張感をもたらす効果です。その効果の違いを調べるために、6種類のコーヒー豆の香りの影響を科学的に調査しました。
豆によって香りの効果が違う
コーヒーの香りのリラックス効果の調査では、脳に出現するα波の量で科学的に数値化しています。
出典『いきいき脳のつくり方』(古賀良彦著・技術評論社)
上の調査結果にあるように、α波を増やすのはグアテマラとブルーマウンテンの2種類の香り。マンデリンやハワイ・コナは少ないことがわかります。つまり、同じコーヒーでも豆の種類で香りの癒やし効果が違うのです。
──もう一つの効果である集中力も、豆によって違うのでしょうか?
集中力への効果は、「P300(情報処理能力)」という脳波で調べました。P300は、うそ発見機にも使われる脳波で、その反応の速度が早いほど、集中力を高める効果があるといえます。
情報処理スピードを示すP300が早く出現したのは、ブラジルサントス、マンデリン、ハワイ・コナの3種類。α波とは正反対の結果となっています。
ブラジルサントスやマンデリン、ハワイコナは情報処理のスピードが速い。これらの香りには脳の働きを活発にする効果があるといえる。出典『いきいき脳のつくり方』(古賀良彦著・技術評論社)
シーンに合わせてコーヒーの香りを使い分け
──調査結果から判断すると、リラックスしたいときと集中したいときで、飲むコーヒーを変えたほうがよいということですね。
その通りです。コーヒーの香りには「リラックス効果のあるもの」「頭の回転を速くして集中力を高めてくれるもの」があり、その種類は豆によって違う。シチュエーションに合わせて、コーヒーを飲み分けするのがおすすめです。
疲れをとったり、イライラを鎮めるならブルーマウンテンやグアテマラ、シャキッと集中したいときはブラジルサントス、マンデリン、ハワイ・コナの香りを楽しみながら飲むといいでしょうみなさんがよく飲むブレンドコーヒーでも、ブレンドする豆によって同じような効果が期待できます。
ビジネスのサイクルをうまく回すコーヒーの楽しみ方
──コーヒーの香りをより楽しんだり、その効果を実感するための飲み方というのはあるのでしょうか?
コーヒーを飲む前に、まずはその豊かな香りを十分味わうことですね。それによって、気分が良くなったり、意欲が高まるなど、香りの高い効果を実感できると思います。もちろん、コーヒーを飲んだときも香りは感じますが、一度飲んでしまうとコーヒーの持つカフェインやクロロゲン酸なども作用してきます。やはり最初は香りだけを堪能するのがおすすめです。
──コーヒーを淹れるにはさまざまな工程がありますが、それらが香りに与える影響も気になるところです。
確かに、豆の選び方にはじまり、焙煎のレベルや挽き方、そして淹れ方によってコーヒーの香りはずいぶん違ってきます。それらにすべてこだわることで、豊かな香りが生まれるのだと思います。そういった本格的な香りがビジネスパーソンにとってもプラスの効果をもたらしてくれるでしょう。
──ビジネスに効くという視点で捉えたときに、コーヒーにはほかにどんな効用がありますか?
仕事に集中するという意味で、まずはコーヒーの香りで頭の回転を速めるのがおすすめです。15〜20分程度すると、カフェインが効いてくるので覚醒(かくせい)効果も出てきます。
大事な会議やプレゼン前など、ここぞというときにコーヒーを1杯飲むのを習慣にするのもいいですね。そうやって、緊張した仕事を終えた後は、リラックスできる香りのコーヒーで、気持ちを緩めてあげる。そういうサイクルを上手に使うといいでしょう。
──コーヒーの香りやそのほかの効果をより楽しむ方法として、缶コーヒーも手軽な手段です。
ジョージア ヨーロピアンのように香りの豊かさにこだわった缶コーヒーが、自動販売機やコンビニで手軽に手に入るのは便利ですね。日々の仕事や生活の中でそういうものを上手に取り入れて、もっとコーヒーの香りを味わってもらえたらと思います。
忙しいビジネスパーソンにとって、コーヒーの香りは、ストレスから解放してくれたり、気持ちをリセットして新たに仕事に集中させてくれるもの。嗜好品としてだけでなく、オンとオフを切り替え、パフォーマンスを上げる飲み物として、コーヒーの味と香りを楽しんでください。
(取材:久川桃子 構成:工藤千秋 撮影:稲垣純也 デザイン:九喜洋介)