【第2週 予告】リクルート事件後、改革への風圧、経営者失格

2018/2/18
先週までのあらすじ
リクルートからJリーグに“移籍”し、改革を進める村井満チェアマンの半生。

川越市で生まれた村井氏は、子どもの頃からスポーツ好き。進学校の浦和高校サッカー部ではゴールキーパーとして活躍するが、体を酷使したためか2つの大病を患う。

一浪後、早稲田大学法学部に進学して早稲田精神昂揚会に入る。仲間と中国横断600kmの冒険に出かけ、就職活動の時期が終わってしまった。

ひょんな縁からリクルートに就職する。同期入社の社員は150人。個性派ぞろいの面々に気後れし、営業成績も振るわない。社会人生活のスタートは劣等感に押しつぶされそうな毎日だった。

首の皮一枚つながる

リクルートの伝統、新人研修「アポ取り大会」で大失敗
「もういいや、こんな窮屈な会社、もう辞めよう」と思っていました。
そうしたら目の前の部長がいきなり怒り出したんです。しかし、怒りの矛先は私ではなかった。
ギリギリで首の皮一枚つながった私は、それから営業に邁進(まいしん)することになるのです。

リクルート事件後

リクルート事件勃発。倒産危機に人事から立ち向かう
リクルート事件でブランドイメージが悪くなっていたところに、未曽有の不況が襲いかかり、どう考えても、リクルートはこのままいくと潰れてしまう。
私は従業員全員に、会社が危機管理モードに転換したことを、人事の面から知らしめようとしました。

2歳の息子が亡くなる

雇用を保証するのではなく、雇用される能力を保証する
2歳になっていた息子が亡くなったのです。
子育てはもちろん家事はすべて、家内に委ねていました。いつも子どもが寝ているうちに出社し、夜中まで飲んで、午前様もしょっちゅうでした。
土日は死んだように寝ているばかり、長男と遊ぶ時間もろくに持てなかった。

半径10m以内の人間関係

退職理由の8割は「半径10m以内の人間関係」にあり
「半径10m以内の人間関係」という問題は、決してリクルートの社内だけにとどまる話ではありません。
他の企業もJリーグも、まったく同じだと考えています。

社内に「静脈」をつくる

部下が上司に本音を言える組織の「静脈」をつくる
社長として赴任してからは、社内に「静脈」をつくろうという運動を進めました。
経営の中枢が従業員に指示する「動脈」はどんな組織にも当たり前に存在しますが、静脈系は必ずしもそうではありません。
部下からしたら「腹落ちしない」とか「納得できない」などという本音の吐露はあるはずです。静脈系が機能せず、放っておけば、その部下の思いは上司にも経営の中枢にも戻りません。

社名変更に最大級の風圧

経営者失格。リクルートエージェント、希望退職を募る
リクルートエイブリックからリクルートエージェントに社名を変更しました。
ただ、異論は多かったですね。私の人生の中で最大級に大きい風圧を受けました。
先輩たちからすれば、「エイブリック」という社名にはとても思い入れがある。しかも私は、いわばよそから来た人間で、経営者としても未熟者でした。そんな人間が社名をコロッと変更するには抵抗感があって当たり前です。
連載「イノベーターズ・ライフ」、本日、第9話を公開します。
(予告編構成:上田真緒、本編聞き手・構成:織田 篤、撮影:遠藤素子、バナーデザイン:今村 徹)
リクルートからJリーグへ
村井 満(日本プロサッカーリーグ チェアマン)
  1. リクルートからJリーグへ。「改革者」村井チェアマンの半生
  2. “新参者”Jリーグチェアマンの傾聴力と主張力
  3. じっとしていられない、スポーツ三昧の小学生
  4. 上とケンカばかり。負けず嫌いのひねくれ者
  5. 浦和高校3年までサッカーに熱中、2つの大病を患う
  6. ほとんどストーカー。彼女を追いかけて早稲田大学へ
  7. 早稲田昂揚会の仲間と中国横断600kmの大冒険
  8. 銀行の内定を蹴って、リクルート入社を決めた理由
  9. リクルート同期社員への劣等感につぶれそうな日々
  10. リクルートの伝統、新人研修「アポ取り大会」で大失敗
  11. リクルート事件勃発。倒産危機に人事から立ち向かう
  12. 雇用を保証するのではなく、雇用される能力を保証する
  13. 退職理由の8割は「半径10m以内の人間関係」にあり
  14. 部下が上司に本音を言える組織の「静脈」をつくる
  15. 経営者失格。リクルートエージェント、希望退職を募る
  16. リクルート、アジア市場へ進出。日本と違うスピード感
  17. ビジネスで相手の信頼を得る方法
  18. リクルートからJリーグチェアマン、なぜ引き受けたか
  19. 心に火をつけろ。組織の「たこつぼ構造」5段階で破壊
  20. スポーツは難易度が高いビジネスだ。経営人材、求む
  21. ミスを恐れず「PD“M”CA」でいこう
  22. 成功法則は不要。自分を信じて体当たり