業績向上を社会貢献に直結させる

ホリデーシーズンは自分にとって感謝すべきあらゆるものに思いを馳せ、不運な人々を助けることに心を向けたい時期だ。だがさらに一歩進んで、1年中、人助けを仕事にしている起業家がいる。
ここで、社会貢献をめざして設立された新興の社会企業3社を紹介しよう。いずれも製品とサービスを提供し、収益の向上をめざす営利企業でありながら、恵まれない人々に恩恵をもたらしている。業績をあげることが、社会貢献に直結する企業だ。

1. 無人機で命を救う「ジップライン」

2017年のクリスマスといえば、個人向けドローンは人気のギフト。その販売額は記録的なレベルだ。だが、ジップラインはこの最先端の技術を利用して、緊急に必要な医療用品や医薬品を配達が難しい遠隔地に届けている。
タンザニア政府は最近、ジップラインと提携して、4つの物流拠点を開設。無人機100機を運用し、1日に最大2000回の輸送を行う計画を発表した。ルワンダではすでに無人機の運用が始まっている。東アフリカはドローン配送において世界で最も進んだ地域となるだろう。 
ハイテク新興企業の例にもれず、ジップラインは顧客の満足度を重視しており、そのために品物が記録的な速さで配送先に到達できることを目指している。
ユーザー(通常は診療所や病院にいる保健医療従事者)がスマートフォンのテキストメッセージで注文すると、ただちに配送に向けた作業が始まる。注文された品物が近隣の流通拠点から集められ、準備され、梱包され、時速110キロで飛ぶ無人機で送られる。納品までの時間は平均15分だ。
このシステムは単に時間の節約になるだけではない。命を救うことにもなる。
ジャクリーン・ウグラムババジは出産後、輸血が必要となったが、それが不可能な状況にあった。ジップラインは注文を受けてから30分後に血液を配達した。命を救う医療の支援は、ピザの配達よりも短時間で彼女のもとに届いた。

2. 身近な問題を解決する「アント・バーサ」

アント・バーサはオンライン検索で人と公的支援サービスを結びつけるサービスだ。
食料配給所や緊急用住居、育児手当、公営住宅などの社会支援サービスに依存する人々は、横のつながりのないさまざまな機関のしがらみのなかで迷子になることが多い。支援を受ける人にとってもケースワーカーにとっても悩ましいこの問題を、アント・バーサは解決してくれる。
アント・バーサはオースティンに拠点を置く公益法人。現在は運営開始から7年目で、全米50州で80万人以上の 「顧客」にサービスを提供している。
大都市で部屋の賃料値上げに苦しむ親から、田舎にすむ高齢の両親を介護中の家族まで、アント・バーサは情報を提供し、最終的に支援サービスが必要な人に行き渡る手助けをする。これによって大企業も、より効率的な業務の遂行が可能になる。
時代遅れの古い仕組みと近視眼的な運営のせいで、大企業は社会福祉関係組織と「話す」ことが難しい。
アント・バーサの高度なデータベース技術は、アンセムやダラス・コミュニテイ・カレッジ、全米退職者協会(AARP)といった依頼者を、保健福祉省のような機関に結びつけ、迅速に支援を展開するための共通言語を作り出す。

3. 食料の無駄をなくす「コピア」

食糧物流は混乱の時期にある。世界中の企業が、より多くの人々により多くの製品をより速く渡すための方法を熱心に追求している。飢えを解消するための取り組みとして、この問題を新たなレベルへと導くのはコピアだ。
アメリカでは大量の食料が浪費されており、実際に食べる量の3倍の食料が廃棄されている。これほど膨大な資源に恵まれた国にいながら、アメリカ人6人に1人が飢えている。その理由は想像もつかない。結局、それは食料の欠乏の問題ではなく、物流の問題だった。コピアはそこに一石を投じようとしている。
生産者であれ、過剰在庫を抱えた食品関連企業であれ、食料が余ったらいつでもコピアのウェブとモバイルプラットフォームを使って、引き取りの依頼を出すことができる。
先進的なマッチングと物流技術のおかげで、食料の適切な行き先がはじきだされ、パートナーの非営利団体に配達される。調理済みの非常に腐敗しやすい食品でさえ、安全に再消費することができる。
だが、多くの社会利益事業がそうであるように、勝利するのは最終利用者だけではない。企業は税金の節約を実現し、過剰在庫処理の担を省くことができる。
コピアはあらゆる種類のパートナーシップを歓迎しており、NFLの人気チーム、サンフランシスコ・フォーティナイナーズとも協力関係にある。彼らは、不運な状況にある人々にスポーツ選手用の1万食以上の高品質の食事を提供している。
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これらの成功した社会的企業の例を見て、ダブルあるいはトリプルボトム(収益と社会貢献さらに環境への貢献を同時に達成する)投資が簡単だと思ってはいけない。
これらの企業が向き合う課題は普通の企業と変わらない。求められる製品やサービスを創出し、大きな市場にアクセスし、適性ある労働力を採用し、営業利益と利益率を確保するための価格モデルを正しく設定し、効果的に拡大すること。そして、非常に困難な状況下でニーズに対応するというプレッシャーもある。
社会的起業を成功させるにはどうすべきか──。インキュベーターやアクセラレータ、共同作業コミュニティなどのプログラムやプラットフォームからのサポートから始めるのが最適だ。
これまでのスタートアップの実績から社会的影響に焦点をあてると、メンタリングやテーマに特化した支援の資源へのアクセスといった従来の仕組みがよりよく働くことがわかっている。
さらに創業者は、どのようなアプローチが成功したのか、そして避けるべき落とし穴はなにかを学ぶために、志を同じくする他の起業家とつながりを持つべきだ。時には、同じ課題を共有する人々を見ることが重要になる。
実際に、アメリカで屈指のスタートアップのアクセラレータ、テックスターズは最近、社会的企業を支援する新たな取り組みを発表した。テックスターズ・インパクト・アクセラレーターは、同社で実証済みのモデルとネットワークを活用し、世界中の新興企業に12万ドルを投資する。
あなたは世界を救うための壮大なアイディアを持っているだろうか。影響力のある企業を作り上げる才能を、困っている人々の火急の問題の解決に向けることができるだろうか。
あなたの専門知識、経験、ネットワーク、そして能力について考えてみてほしい。創造力を働かせ、世界を変えるためにあなたの力を使う方法を考えてみよう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Chelsea Collier/Founder, Digi.City、翻訳:栗原紀子、写真:RomoloTavani/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.