国内メディア再編、次なる主戦場は?

2017/12/28
サッシャ 未来を歩く羅針盤「PICK ONE」。200万ユーザーが使っている経済ニュースアプリ「NewsPicks」とコラボレーションして、未来を読み解くヒントになるような話題をチョイス。
今回は特別編として、12月27日、28日・年明け2018年1月2日、3日とNewsPicks編集長 佐々木紀彦さんをお迎えし、佐々木さんがピックされた記事にフォーカスしてお届けします。
寺岡  今日、ご紹介する記事のタイトルは、「CCC主婦の友社買収、Amazonに交戦、書店個性高め成長」です。蔦屋などを運営するCCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)の戦力について解説してくださるのは、昨日に引き続きNewsPicks編集長の佐々木紀彦さんです。よろしくお願いします。
サッシャ 昨日は、ディズニーによる21世紀フォックス買収の話でしたが、今度は日本のニュースですね。このニュースのどういうところに注目されているのでしょうか?
佐々木 いま、あらゆる業界で進んできていることの一つとして、SPAがあります。SPAというのは、ユニクロのように店舗も持った上で、自分たちで商品を作るビジネスモデルのこと。この流れは、あらゆる業界で広がっています。書店業界では、出版社と小売りは分かれていて、その間に取次という流通がいました。これまで書店がオリジナルで本や雑誌をつくることはなかったんです。しかし、CCC蔦屋は、日本で最大の書店。Tポイントに象徴されるように、膨大なデータを持っているんですね。このデータで、購入した人の好みを全部知ることができる。けれど、オリジナルで商品をつくることがないので、データをなかなか生かせなかったんです。
寺岡 いろいろな出版社がある中で、なぜこの主婦の友社だったのでしょう?
佐々木 CCCがいろいろと買収するうちに相性が良いと思ったからではないでしょうか。あと、売りに出ていたり、ある程度安い価格で買収できる出版社を狙っているんじゃないでしょうかね。
サッシャ 買収し、製造・小売りを出版社と一緒にやることで、どんなメリットがあるのでしょう?
佐々木 例えば、蔦屋のコンセプトに合ったようなオリジナルな雑誌とか本とかもつくることもできますし、出版社にいる編集者たちのノウハウを、売り場作りに生かすこともできます。主婦の友社は伝統のある出版社なので、編集者たちが持ってるノウハウや、コンテンツの資産、そういうものを生かしていけるのではないでしょうか。
あと雑誌ブランドの「Ray」「mina」などを出版しているので、そういった女性誌のブランドシーンを使い、雑誌に限定せず、イベントの開催や商品を作ることもできると思うんです。いま、宝島社をはじめ、様々な雑誌社でコラボ商品を作っていますよね。買収することで出し手が増えるというのはありますね。
サッシャ この記事に書かれている、このCCCの社長さんのコメントでは、「電子書籍の販売サイトなどのプラットフォームの時代は終わって、コンテンツの時代が来ている」というふうに語っています。これはどのように解釈しますか?
佐々木 正しい流れだとは思いますね。やはり記事のタイトルにもありましたが、Amazonみたいな効率化を追求したところには、どこも勝てなくなってくる。
サッシャ つまり「プラットフォームの時代は終わった」というのは、もうプラットフォームは整備されてしまったということでしょうか?
佐々木 はい、そうですね。Amazonの一人勝ちになっちゃったので、今から戦っても厳しい。なので、Amazonと違った切り口で勝負しなければいけないんです。いま、蔦屋書店の本の並べ方をみると、すごくアーティスティックでセンスありますよね。違った切り口で戦うためには、コンテンツに力を入れていくということだと思うんです。
サッシャ CCCとしては、WEB販売や電子書籍を展開しないのでしょうか?
佐々木 電子書籍もやると思いますが、結構難易度が高いと思います。私の印象では、CCCはセンスやノウハウはあっても、まだIT企業っぽくはないなという感じがする。代表の増田さんの思考を考えると、編集力とかセンスとかで打ち出す方向でいくんじゃないかなと。
寺岡 では、今後は書店の充実に向いていくと思いますか?
佐々木 はい、その書店の充実のためにデータを生かす方向性なのではないでしょうか。
サッシャ  そこにはデータが大事になってくるわけですね。
佐々木 なので2、3年後くらいで、データを基にしてプロの編集者やコンテンツメーカーが何か象徴的なコンテンツを作れるかどうかが勝負だと思います。Netflixもオリジナルコンテンツの「ハウス・オブ・カード」で有名になり、サービスの幅が広がったので、そういう象徴となるものを作れるかどうか、がポイントです。CCCは販売力があるので、製造と流通のベストな組み合わせを作れるか注目です。
サッシャ なるほど。そうすると今後、各業界の花形職業は、キュレーターとかになるんじゃないですか?
佐々木 キュレーターから、制作者にむしろ移っていると思います。我々のNewsPicksの話をするのもなんですが、我々もキュレーションだけでなくオリジナルを作っているのも、選ぶセンスというのは、商品が同じであれば、どこかで似通ってくると思うんですよ。であれば、オリジナル商品を作れるかどうか、というのが最後の差別化の一番重要なところ。それが増田さんの言っている「コンテンツの時代が来ている」の意味だと思うんです。
サッシャ どの業界にも関係なく、そういう流れになっているということですか?
佐々木 そうです。
サッシャ なるほどね。インターネットの時代が急速に進み、色んな分野でプラットフォームはもうだいぶ完成してしまったので、今後はその先のコンテンツであると。
佐々木 そういうことですね。
サッシャ なるほど。何か、昨日と今日と通ずるものがありますね。また次回もよろしくお願いいたします。ちなみに次回は年明けになります。良いお年を!
佐々木 良いお年を!
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
また、今回のニュースをはじめとした佐々木 紀彦さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
1月2日は、引き続き、NewsPicks編集長の佐々木紀彦さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください