ディズニーの20世紀フォックス買収で加速する米メディア再編

2017/12/27
サッシャ 未来を歩く羅針盤「PICK ONE」。200万ユーザーが使っている経済ニュースアプリ「NewsPicks」とコラボレーションして、未来を読み解くヒントになるような話題をチョイス。
今回は特別編として、12月27日、28日・年明け2018年1月2日、3日とNewsPicks編集長 佐々木紀彦さんをお迎えし、佐々木さんがピックされた記事にフォーカスしてお届けします。
寺岡 初回にお話しいただくのは「ディズニーが6兆円買収 20世紀フォックスを傘下に」(共同通信)という話題です。
サッシャ おはようございます。本題に入る前に、NewsPicksにとって2017年はどんな年でしたか?
佐々木 とにかく忙しかった1年でした。こちらの「PICK ONE」を含め、フジテレビとの動画サービス「LivePicks」の開始や、幻冬舎との「NewsPicks Book」、またイベント事業「NewsPicks アカデミア」など、様々な分野にチャレンジしました。
サッシャ そうですね。来年、更なる起爆剤になることを期待しています!
さて、今回なぜこの記事を選んだのでしょう?
佐々木 今年、ハリウッドのニュースでセクハラのニュースがありましたが、ビジネス面では大きいニュースだなと思い、取り上げました。
ハリウッドの映画会社の中で特に影響を持つ6社“ビッグシックス”のひとつ、21世紀フォックスのエンタメ部門、20世紀フォックスをディズニーが買収するとサービスが集約され、ディズニーが更に影響力を強めます。
またこのニュースから分かるのは、NetflixやAmazonの出現により映画業界・コンテンツ業界の作る側に変革が求められているということ。この流れに合わせるため、今回の買収をしたのではないでしょうか。
サッシャ Netflix独占配信の映画には有名な俳優が出演し、勢いがありますね。映画業界もひとつになり立ち向かっていかなければいけない時代になったということでしょうか?
佐々木 その通りです。今回の買収は、コンテンツ業界の大きな変革が起きていることを象徴したニュース。
Netflixがコンテンツを制作・配信しているので、映画会社にとっては、お客さんとの接点を全て奪われてしまうのではないかと懸念されているんです。
なので、ディズニーはNetflixにコンテンツを出さず、代わりに自分たちでお客さんに対し、配信をすることにしました。ディズニー自らが、20世紀フォックスを含めた、様々なコンテンツを提供し、今後はIT企業になっていくのでしょう。
また、今回の買収の中にはHuluの経営権も含まれているので、Huluがディズニー傘下に入っていくわけですね。まさに、ストリーミングサービスをやっていくということの決意の表れでしょう。
サッシャ 今までは、NetflixとHuluは、関ヶ原の西軍対東軍でしたが、今回の買収によって、全く違う位置付けになるってことですよね。
佐々木 そうです。今後は、Huluの独占コンテンツとして、ディズニーの作品が次々と提供され、Netflixは結構、厳しい状況になるのではないでしょうか。
サッシャ この話が実はすごく身近に感じることがあったんです。
私は「スター・ウォーズ」が大好きなんですが、今回のスター・ウォーズ最新作に合わせて、Huluが、全ての旧作を特別配信していたんですよ。だからあれ?と疑問に思いました。これまでスター・ウォーズの旧作はフォックス系で、新シリーズの「フォースの覚醒」以降が全部ディズニーだったのですが、これも一つになるんですね。
スター・ウォーズファンとしても少し身震いするような出来事なんです。
佐々木 ですよね。そしてディズニーは、既にピクサーやマーベルを持っていますよね。今回、買収したことで「アバター」「X-MEN」などもディズニーの傘下に入ってくる。加えて、グッズ販売もできますし、エンタメ帝国であるディズニーが更に強い帝国になるのではないでしょうか。今回の買収で、ディズニーは新次元に突入するということですね。
Netflixの存在がなければ、買収することはなかったと思うんですよ。そのくらいディズニーに危機感を持たせたNetflixもすごいなと思います。
サッシャ 少し視点を変えて、みてみたいと思います。ニューズ・コーポレーションはルパート・マードックさんが持ってる巨大メディア。ニューズ・コーポレーションとしては、映画部門を切り捨てるということになるのでしょうか?
佐々木 ニューズ・コーポレーションは、今が一番高値でエンタメ系を売れると考えたのでしょう。マードック氏は、どちらかというと、ニュース系のメディアに興味が強いみたいです。フォックスニュースを設立し、現在はウォールストリート・ジャーナルを傘下に持っています。
サッシャ なるほど。そうすると、これをきっかけに来年以降、さらに再編は起きるのでしょうか。ビッグシックスがビッグファイブになり、それが更に変わっていく可能性がありますか?
佐々木 あると思いますね。例えば、いまソニー・ピクチャーズやバイアコムは立場的には強くありません。そのようなスタジオが、どこかに買収され、集約されていく可能性はもちろんあると思います。
サッシャ こうなってくると、日本でも他人事じゃないですね。ソニーがもともとコロンビアピクチャーズを買ったときは、「日本が、ハリウッドを買った」と衝撃的なニュースでした。そんなソニーは今、ビッグとは言えなくなっていますよね。
佐々木 そうですね。映画作品自体が、昔に比べ、結構減ってきているんですよね。しかし、映画のスタッフの人たちもテレビやネットメディアに移っているので、作り手が多様化していくというメリットもあります。
サッシャ この流れは、日本におけるエンタメ業界も変えていく可能性はあるのでしょうか?
佐々木 徐々に変わってますが、やはりアメリカに比べるとダイナミズムは乏しいなと思います。Netflixは、グローバルに通用するコンテンツを作るというポリシーなので、日本のアニメには投資する可能性はありますが、日本にあまり入れ込んでいないんです。あと、Amazonは今バラエティが多いですよね。Amazonの方がローカルコンテンツに強いので、Amazonがどれだけ日本にお金を投入できるかがポイントですね。
サッシャ 日本の映画製作配給会社の東宝・東映・松竹はどうでしょう?
佐々木 無風ですよね。要するに東宝が強すぎるんです。東宝が配給も製作も興行も強く、松竹・東映が全く歯が立たないじゃないですか。しかも、新規参入がないので、面白くない業界になっていると思いますね。
サッシャ なるほど。それも、ダイナミズムがちょっと足りないところなんですね。
佐々木 足りないですね。
サッシャ ディズニーが21世紀フォックスのエンタメ部門を買収したことで、どうなっていくか。これからの流れをしっかりと見る必要がありそうですね。佐々木編集長、明日もよろしくお願いいたします。
佐々木 よろしくお願いします。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
また、今回のニュースをはじめとした佐々木 紀彦さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。