【夏野剛】水を制する者が、ビジネスも制す

2017/12/26
食事、運動、睡眠など、仕事のパフォーマンス向上のためにも、健康志向が高まる昨今。日々忙しい生活を送っている日本のビジネスパーソンが、毎日の食事に気を使い、運動を習慣化し、質の良い睡眠時間を確保するのは簡単ではないかもしれない。しかし、一番身近で人の健康を左右する「水」の存在を見落としてはいないだろうか。健康と水について、慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏と、三菱ケミカル・クリンスイ営業本部長の柴英樹氏に伺った。

健康マニアの健康法

──100年人生において、ビジネスパフォーマンスを上げる、維持し続けるには、健康であることが第一です。夏野さんが、具体的に実践されている健康法について教えていただけますか?
夏野:僕は健康マニアなので何でもやっていますよ。
運動面では、14年前からパーソナルトレーナーをつけて毎週トレーニングをし、運動、食事、睡眠などをトラックするウェアラブルデバイスも7年くらいつけています。
このデバイスが面白いのは、毎日のアクティビティをデータで見られること。たとえば、 昨日は夜12時に寝て朝6時30分に起きているので、「6時間半寝た」と本人は思っているけど、データでは33分目覚めた状態だったと出ている。
ただ、これを見たところで、あまり意味はないんですけどね(笑)。ログが残ることが面白いので、毎日チェックして満足しています。

健康マネジメントは仕事に通じる

──健康管理を本格的にやり始めたのはいつごろからでしょうか。
夏野:30代後半ですね。体重が増えて「カッコ悪いな」と思ったのがきっかけです。口に入るものが気になるようになって、水や食事を変えました。変えると味覚も敏感になって、今では野菜にわずかに残った農薬の味もわかるし、水の違いも敏感にわかる。一見清潔そうでも、そうじゃないものはわかりますね。
やっぱりね、自分の健康をマネジメントできない人は、仕事もマネジメントできないと思うんですよ。そういう思考が一時期流行ったので、日本でもある程度常識になっていると思いますが、口の中に入るものには、もっと気を使った方がいいと思っています。
:特に、水は体の60%を占める大切な存在ですしね。
夏野:本当にそう思います。水はできるだけたくさん飲むべきだし、その水の質には一番こだわった方がいい。それも、湧き水をくんだペットボトルよりは、日本の水道法の厳しい基準をクリアした水道水を浄水する方が、よっぽどいいと思っています。
我が家では、家の水道管の根元に浄水器をつけて、キッチンもお風呂も浄水した水を使っています。
浄水器だけでなく、常にお湯が出るウォーターサーバーを利便性の面から設置し、妻がスープや味噌汁などの料理に使いたいという水をガロンボトルで別に買って常備したりもしています。

世界トップレベルの水道水を活用する

──水道水をさらに安全においしく飲むのに手軽で有効なのは浄水器だと思いますが、若い世代には「高い」「面倒」という印象があるようです。
:世界で水道水を飲めるのはわずか15カ国、なかでも日本は世界トップレベルの水質です。ただ、日本の水道水は、浄水場ではとてもきれいなのですが、家庭に届くまでのプロセスが問題。古い配管だとどうしてもサビや雑菌が入ってしまう可能性があります。
夏野:配管をメンテナンスしていない古い建物は危ない可能性がありますね。
:それに、安全を維持するために塩素が入っていますから、水道水を飲みたくても残留塩素の臭いが気になる方も多いと思うんです。
だから、我々は安心安全でおいしい水を飲めるよう、浄水器を提案しているのです。でも、カートリッジの交換時期を定期的に守ってもらわないと効果が徐々になくなってしまう。毎日気にするものではないので、交換日は忘れてしまいますよね。
夏野:そのマネジメントが面倒なんですよね。正しく使っている人は少ないんじゃないですか?
:弊社の調査では、正しくカートリッジを交換しているのはユーザーの3割程度です。1本約3000円のカートリッジで約3カ月使えるのですが、2リットルのペットボトルに換算すると約450本を浄水できるため、コストパフォーマンスはかなりいいんです。ペットボトルのごみの低減にもつながりますしね。
水道水は実はミネラルが豊富なので、それを生かしながら、残留塩素や雑菌などを浄水した、おいしい水を飲んでもらいたいと考えています。
浄水場で高度な技術で作られた水を、家の蛇口でもう一度浄水してあげれば、経済的にも地球にもやさしく、おいしい水が飲めます。それを広めたいですね。

これまでの“面倒”を解決するIoT浄水器

夏野:僕は、カートリッジの交換が面倒なので、家の根元に浄水器を設置して、家中まるごと浄水しています。業者が2カ月に1回メンテナンスに来てくれるので、自分でスケジュール管理する必要がないのがいい。
自分でメンテナンスだと、「そろそろカートリッジの換え時かな」と気付くのは家にいるときなので、「買い物に行ったら買って帰ろう」と思うんですけど、買い物時には忘れているんですよね。
:まさにその課題を解決するために開発したのが、IoT浄水器です。
この浄水器は1本のカートリッジで900リットルを浄水でき、現在の使用量や、使用量に応じた交換予測日が専用アプリに表示されます。交換日前にはプッシュ通知でも教えてくれますし、アプリから簡単に交換カートリッジの購入もできるため、メンテナンスの手間を大きく減らせます。
三菱ケミカル・クリンスイが発表した、IoT浄水器「クリンスイCSP801i」
夏野:いいですね! 何を使ってアプリと情報を連携させているんですか?
:フェリカです。
夏野:さすがです。消費電力の観点からも、フェリカを使うのが正しいと思います。
:そうなんです。最初はBluetoothで検討していたのですが、消費電力など現状では課題が多かったので、フェリカを採用しました。
夏野:Bluetoothでアプリとつながっているデバイスは、アプリが起動するまで結構待つんですよね。
:その点、起動は早いです。しかも、浄水器本体の電池は約2年使える想定ですので、気にする必要がほぼありません。
夏野:面倒なことがなくなっていて、本当に素晴らしい。あとは、アプリでいろんなグラフが表示されるようになったら面白いなあ。毎朝水をちゃんと飲んでいることを確認したいですし。
:次のアップデートで検討します!

和食は水で変わる

──水を変えると料理の味が変わるため、結果、食材へも気を使うようになると思います。
夏野:水を変えたら本当に料理の味が変わりますよね。僕は、食材はもちろん、出汁(だし)にもこだわっています。昆布は老舗の奥井海生堂さんのを使い、お出汁に利尻昆布、普段使いに羅臼昆布、そして、根昆布をガム代わりに食べています。
鍋をするときは、利尻昆布を24時間水に浸けて出汁を取るのですが、24時間後にとろんとした昆布を取り出して、刻んで佃煮にしています。最高ですよ。
:そうなんですね。クリンスイには和食のためのシリーズがあり、お米がおいしく炊けるポット型浄水器や、お出汁がおいしくとれるタイプなど、和食に合う商品もラインアップしています。「お出汁のためのクリンスイ」は開発の際に奥井海生堂さんに監修していただきました。
夏野:それは、欲しい!(笑)
:海外の硬水では昆布から出汁が出にくいそうで、国内でも西日本と東日本とでは同じ昆布を使っても出汁が思うように出ないことがあるそうです。でも、この和食のためのクリンスイを使えば、たとえば海外でも同じような出汁がとれる。世界から注目されている和食を、水で支えていければと考えています。

浄水器は「クールジャパン」

夏野:水を良くするって、一番簡単にできる自己防衛でもありますよね。ちなみに、中国でも使えます?
:日本よりもカートリッジの交換が早い地域もありますが、使えますね。中国向けの専用機種も展開していますよ。
夏野:僕ね、浄水器って「クールジャパン」だと思うんですよ。世界に浄水器ムーブメントを起こせるんじゃないかな。「あなたの水をジャパンクオリティに変えます」と。蛇口をひねれば、浄水した水道水をがぶがぶ飲めるのは、日本ならではの価値だと思います。
やっぱり、どう考えても水に気を使うことは本当に大事ですよね。運動や睡眠は、あとからでもできるけど、口に入るものは直接体を作っているわけなので、時間をかけながら、じわりじわりと効いてくる。
いちばん身近で大切な「水」に気を使えない人は、ビジネスでも成功するとはあまり思えないですね。
(取材・文:田村朋美、写真:北山宏一)