(Bloomberg) -- 村田製作所は米アップルの「iPhone(アイフォーン)」向け電子部品の供給体制を拡充する。薄く曲げることも可能な独自開発の基板「メトロサーク」について、生産拠点を増やし、工場の稼働率も上げる方針だ。村田恒夫会長兼社長が14日、京都本社で行ったインタビューで明らかにした。

メトロサークは液晶ポリマーを使った樹脂多層基板で、多層化して折り紙のように折り曲げた形状を保持できる。村田氏は「需要が拡大するとみているので、その分生産拡大が必要」と指摘。富山や岡山の生産拠点に加え、ソニーから土地建物を取得した石川県能美市の工場も転換し、一部工場をフル稼働させる計画という。

メトロサークはスマートフォン(スマホ)向けなどで需要が旺盛で、11月に発売されたiPhone Xにも使われているという。村田氏は生産性向上に最近も苦労した経緯を明らかにし、体制整備の必要性を強調した。同社はメトロサークの生産コスト増で今期の連結営業利益予想を2260億円から1700億円に下方修正している。

村田製は旺盛な需要に応じるため、一度に多くの基板製品を作れるよう生産方法の見直しを進めたが、これが一時歩留まりを悪化させる要因となった。試行錯誤を重ね徐々に改善を進めた結果、この方法で生産する基板の歩留まりは「95%程度まで改善している」という。

買収先の「ムラタナイズ」優先

村田氏は11月末に都内で開催した説明会で、仮想現実(AR)体験に使うウェアラブル端末やデータセンター向けに用途を拡大し、2021年までにメトロサークの売上高を1000億円に伸ばすと表明していた。ただ、今回のインタビューでは、需要拡大が確実視されるアップル以外への外販は「今のところはお断りするしかない」状況だと語った。

村田製は2008年ごろからメトロサークの開発に着手。16年11月に樹脂多層シート技術を持つプライマテックを買収したことで、より技術を進化させた。過去10年間での企業合併・買収(M&A)は、ヘルスケアや半導体部品の企業14社にも及び、同社の重要な事業拡大戦略の一環となっている。

今後も注力分野であるエネルギーやIoT(モノのインターネット)事業の拡大、強化にM&Aを活用する方針。村田氏は「余り急いで次の分野に広げるつもりはない」と述べ、買収先企業の強みを生かしながら、村田製の文化を植え込む「ムラタナイズ」を優先させたい考えを示した。

9月に買収したソニーのリチウムイオン電池事業については、今後2ー3年で国内外の設備投資を加速させた上で黒字化を目指す。村田氏はウェアラブル端末向けなども視野に「電力容量の低い領域で安全を認めていただくためにスマホやパワーツールの市場で実力を付けたい」と述べたが、車載向け電池には言及しなかった。

(第4段落に製品の歩留まり改善について追加しました.)

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