ドバイのライドシェア企業カリームは、楽天や滴滴出行、ダイムラーなどから支援を受けている。中東のテック企業各社には、ますます多くの投資家から注目が集まっている。

MENA地域で唯一のユニコーン

かつて、新しい道路をつくることが輸送を改善するための最も理にかなった方法だった時代があった。だがいまは、道路利用の効率を最大限まで高めることのほうがはるかに重要になっている。
そう語るのは、ライドシェア(相乗り)サービスを提供するドバイの企業カリーム(Careem)のムダシル・シーカ最高経営責任者(CEO)だ。
シーカCEOはドバイで行われたインタビューで「ライドシェアをはじめとするこうした輸送サービスこそが、現代の社会に公共交通を整備するための最善策であるとわれわれは確信している」と語った。
中東のある都市では「現在、7億ドルを投じてメトロ・バスシステムがつくられており、20万人の利用が見込まれている。もし同額がライドシェアに費やされれば、150万人の輸送が可能になり、10万人の雇用が創出されるはずだ」とシーカCEOは言う。
カリームは中東におけるウーバーの最大のライバルであり、投資家から大きな関心を集める、同地域のなかで最も突出したテック企業のひとつだ。
中東と北アフリカ(MENA)地域のテクノロジーエコシステムを対象とするオンライン・データ・プラットフォーム「マグニット(MAGNiTT)」によると、2017年は同地域の資金調達にとって記録的な年になる見込みであり、契約数とスタートアップへの投資額が増加しているという。
カリームはMENA地域で唯一のユニコーン企業であり、同社に出資する企業には楽天、サウジアラビアの持株会社キングダム・ホールディング・カンパニー、中国のライドシェア企業である滴滴出行、ダイムラーなどが名を連ねている。

拡大する投資、効率の向上

資金は交通インフラにも注ぎ込まれている。
建設事業の追跡調査を行うベンチャーズ・オンサイト(Ventures ONSITE)は7月に発表した報告書のなかで、湾岸協力会議(GCC)諸国における道路や橋、トンネルなどの事業契約は、2017年の140億ドルから2018年は155億ドルに増加すると予測している。
同報告書では、GCC諸国の経済が多様化し、人口が増加するのにしたがって「輸送部門への投資が最優先事項になる可能性が高い」と述べられている。「既存および新興の高度道路交通システム(ITS)技術を活用すれば、このプロセスを著しく容易にできる」
カリームのシーカCEOは、テクノロジーを自動運転車と統合させれば、新たな公共輸送システムの代替手段になりうると主張する。
シーカCEOは「自動運転車は近い将来に実現する。われわれはそれを見据えて、自動運転の電気ポッドを開発するサンフランシスコ・ベイエリアの企業と業務提携を結んだ」と語り、ネクスト・フューチャー・トランスポーテーションの名前を出した。
そのしくみはこうだ。8座席のポッドが、市街地で利用者を拾う。ポッドは、主要幹線道路では結合して1台の車両になる。ポッドはその後、再び分離しながら、ショッピングモールやビジネス街などで乗客を降ろす。これを可能にするポッドを開発しようというのが彼らの狙いだ。
いっぽう、インフラへの投資とライドシェアへの投資は相互排他的である必要はないと指摘するのは、マグニットの設立者フィリップ・バホーシーだ。
「MENAの全域において、自国内および国家間で、自動車へのアクセスや位置追跡、相互接続性を補完するインフラの整備が続けられている」とバホーシーは言う。そして、「ライドシェアの本質は効率を生み出すことにある」と同氏は指摘した。
カリームは現在、アラブ首長国連邦やパキスタン、サウジアラビア、エジプトなどの国々でサービスを提供している。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Gwen Ackerman記者、Matthew Martin記者、翻訳:翻訳:阪本博希/ガリレオ、写真:ansonmiao/iStock)
©2017 Bloomberg News
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.