「4つの性格分類」では判断できない

企業の人事部や経営者が雇用や昇進の人選を行う際に「4つの性格タイプ」が参考にされることがある。
この4タイプ(A、B、C、D)の性格分類は本来、バランスの取れた組織を作るために提唱されたものだが、実際には人材の格付けシステムのように用いられることが多い。「タイプA」性格の人が最高で、ほかの3タイプはダメだとされるのだ。
だから、自分が仕事熱心な「タイプA」であることを自慢する人は多いが、八方美人で反復作業を好む「タイプD」だと言いたがる人は少ない。
しかし、誰かの夢を壊すつもりはないが、「4つの性格タイプ」は心理学とは関係がない。天文学にとっての星占いのようなものだ。これらの性格分類はいかにも科学的なようだが、実際には人々が信じたがっているだけのものであり、確たる根拠はないのだ。
なぜこんな話をするのかというと、そもそも筆者はこの記事で4つの性格タイプのうちどれが在宅ワークに向いているかを明らかにしようとしていたからだ。
しかし残念なことに、4つの性格タイプが考案されたのはインターネットが誕生するずっと以前の話。多くのオンラインツールを使い、リモート環境で仕事を進められるようになるなど考えられなかった時代のものだ。
4つの性格タイプは、全員が同じオフィスや製造施設に集まって働くことを前提としている。仮想現実の進化によって、1カ所に人を集めるオフィスが過去の遺物になろうしている時代には、単純にそぐわないのだ。
したがって、在宅ワークに向いている性格タイプを明らかにするには、別のところにヒントを求めなくてはならない。
偶然にも、筆者はおそろしいほど在宅ワークに向いている人間だ。たとえば、ある人物と共著で本を書いたことがあるが、相手は、筆者の自宅兼仕事場から南へ1時間の距離に住んでいた。それなのに、相手と一度も直接会わずに本を書き上げたのだ。
ほかにも同様の例を何十と挙げられる。一緒に仕事をする編集者やクライアントの多くと、筆者は一度も顔を合わせたことがない。
さらに、20年以上も在宅ワークを続ける筆者の元には、秘訣を教えてほしいという相談が寄せられる。これまで相談を受けたフリーランス志望者は10人を下らない。個人的に指導のようなことをするうち、筆者はどんなタイプの人が在宅仕事に適性がないかを学んだ。
その経験から、在宅ワークで成功できる人にみられる5つの特性を以下で紹介しよう。

1. 内向的である

筆者がこれまで何度も説明してきたのは、最近の仕切りの少ないオフィスは外交的な人には好ましい刺激となることが多いが、内向的な人にはまったく向いていないということだ。代わりに在宅仕事では、内向的な人のほうが外交的な人よりはるかに適応しやすい。
以前、筆者がパーティションで区切られたオフィスで働いていたころ、自分の仕事はほかのチームの会議に出て自分のチームのトップに報告し、自分たちの縄張りがほかのチームに荒らされないようにすることだという同僚がいた(そう、そんな仕事があるのだ)。
今の私にすれば、そんな仕事は地獄でしかないが、その同僚は自分の仕事を楽しんでいた。ところがその後、彼は解雇され、フリーランスでマーケティングの仕事をすることにした。筆者は一足先に同じ仕事を始めていたので、元同僚にいくつか助言をしてやった。
元同僚はうまくやろうと頑張ったが、フリーランスの孤独に耐えかね、就職の機会に飛びついた。そして結局、以前とまったく同じような仕事に就いた。といっても、前より大きな会社だ。彼は大喜びしていた。

2. 自分に厳しい

職場には、外的な動機付けになる大きな存在が2つある。こちらがサボっているのに気づくと腹立たしげに睨みつけてくる同僚、そしてオフィス内を「散歩」してこちらが仕事をしているか肩越しに覗き込んでくる上司だ。
しかし、在宅仕事にはそのどちらの存在もない。毎日、自分で自分の尻を叩き、仕事を進めなくてはならないのだ。たとえ数時間ビデオゲームで遊んでも、誰も気づかない。
食べ物の誘惑もある。以前、筆者のクライアントだった人物に、地元のジムでばったり会ったことがあるのだが、彼は在宅で働くようになって半年で9キロ太ったと言っていた。
さいわい、彼には自分の行動を変えるだけの自制心があった。そうでなければ、今ごろ深刻な肥満に陥っていただろう。

3. 被害妄想的なところがない

先ごろ『ハーバード・ビジネス・レビュー』に、ある調査結果が掲載された。オフィスワーカー1153人を対象にしたもので、そのうちの52%が少なくとも一時的に在宅で勤務していた。以下がその調査結果だ。
リモートワーカーのほうが「自分は、同僚たちから不当な扱いを受けていて、のけ者にされていると感じる」と回答する率が高い。
自分のいないところで同僚が悪口を言っているのではないか、自分に相談なくプロジェクトを変更するのではないか、自分に不利な働きかけをするのではないか、自分の優先事項をないがしろにするのではないか、という不安を抱いているのだ。
この調査の興味深いところは、そうした不安に正当な根拠があるのかについては問題にしていない点だ。個人的には、この手のことを心配する人は被害妄想の傾向が強いと思う。おそらく同僚たちは、自分の仕事をしようとしているだけだ。不安に駆られている人も、自分がオフィスに戻ってみればそれがわかるはずだ。
筆者は在宅ワークを始めた最初のころに、自分の中の被害妄想を抑えることを学んだ。最近、被害妄想にとらわれたことといえば、自宅の修繕に来た大工がテラスに板を打ちつけながら、私のことを「被害妄想まみれの変人」と呼んだときくらいだ……ただし、モールス信号でだが。

4. テクノロジーに明るい

ほとんどの職場にはITの専門家や専門チームがいて、われわれの使用するコンピューター環境に日々発生するトラブルに対処し、原因を突き止めて直してくれる。この「IT担当者」とのやりとりは多くの場合、愉快なものではないが、それでも彼らがいてくれるおかげで、細かい技術的な問題に煩わされずにすんでいる。
しかし、自宅で仕事をする人は、ほぼ自分だけが頼りだ。コンピューターの調子がおかしくなって、最低限の技術的な知識もないとなると、カスタマーサービスとの電話に多くの無駄な時間を費やさなくてはならない。
そこでアドバイス。「マック」を利用すれば、そうした面倒ごとは「ウィンドウズ」の100分の1ですむ。在宅で仕事をしていて、マックではなくウィンドウズを使っているという人は、テクノロジーには強いかもしれないが、費用対効果を分析するのが得意とはいえない。

5. アピールが上手い

最後の、そして最も重要な点は、在宅ワーカーはつねに自分のサービスを雇い主やクライアントに売り込まなくてはならないということだ。「去る者は日々に疎し」を実感したとすればそれは、先ほどの被害妄想とは違う。人間、目の前にいない相手のことは忘れるものだという事実を学んだだけにすぎない。
オフィスで働いている場合は、出勤して忙しそうにしているだけで、間接的に自分をアピールしていることになる。しかし、在宅仕事ではそうはいかない。こまめに進捗や最新の状況を知らせ、上司に何か指示されたら「すぐ行動に移る」姿勢を見せることが大切だ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Geoffrey James/Contributing editor, Inc.com、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:gpointstudio/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.