テクノロジーが変える医療の未来

テクノロジーは信じられないほどのペースで世界を変えている。コミュニケーション、移動、仕事──。
そして、最もワクワクするような進歩のいくつかは、医療とヘルスケアの世界で起ころうとしている。自分の体を管理する方法、さらには命を救う方法がテクノロジーによって再定義されようとしているのだ。
医療の世界に大きな変化をもたらそうとして、たくさんの企業がしのぎを削っている。これから紹介するのは、今後10年間にあなたのヘルスケア体験を一変させる可能性がある企業のほんの一部だ。

1. 23andMe

23andMe(23アンド・ミー)は、遺伝子検査サービスでおなじみの企業だ。ほっぺたの内側を専用の綿棒でこすってそれを送付するだけで、祖先に関する情報などを入手できる。
ただし、同じDNA情報が、医薬品の開発を助けるためにも使用されている。すでにパーキンソン病のリスクを示唆する17の遺伝子マーカーを新たに特定したそうだ。

2. Silene Biotech

米食品医薬品局(FDA)の認可を受けた幹細胞保存サービスとして、Silene Biotech(シレン・バイオテック)は唯一、消費者と直接取引している企業だ。
自分の幹細胞を保存しておけば、病気になったときに、その細胞を治療に使用できる。他人の幹細胞を使用するサービスより実行可能性が高い。採血するだけで幹細胞を採取でき、必要になるまで保存してくれる。

3. Emulate

Emulate(エミュレート)の生体機能チップ(Organs-on-Chips)技術では、マイクロエンジニアリングによってつくられた環境にヒトの細胞を置き、人体の内部を再現できる。医薬品の開発やオーダーメイド医療の研究で、人体がどのように反応するかを予測できる。

4. HumanDx

医師同士で連携し、分野の垣根を越えて専門知識を共有できるクラウドソーシングシステム「Human Diagnosis Project」。治療が効率的になり、結果的に、より多くの人の健康を守ることができる。

5. CrowdMed

CrowdMed(クラウドメッド)も、医療従事者が連携し、互いに提案や支援を行うクラウドソーシングプロジェクトだ。患者の病歴や症状を参照し、調べたうえで、診断の助けとなるようなアドバイスを行う。

6. POC Medical

乳がんは、女性の主要な死亡原因だ。POC Medical(POCメディカル)はこの現状を変えたいと考え、モバイル検査キットを開発した。数百ドルの費用が掛かる従来の検査の代わりに、1回わずか3ドルで乳がんのリスクを知ることができる。
予防医学やスクリーニングは、がんの早期発見、女性の生存に大きく貢献する可能性を秘めている。

7. Glow

多くの女性にとって、生殖能力の追跡は重要だ。妊娠を望んでいる場合も、避けたい場合も、最も妊娠しやすい時期は把握しておいたほうがいい。
Glow(グロウ)は、女性たちの願いをかなえるアプリを開発した。あらゆる年代の女性が生殖能力のサイクルを追跡し、自分の体を深く理解する助けになるはずだ。

8. Medisafe

米国だけでなく全世界で、多くの人々が処方薬を服用している。薬を効かせるためには、最適なタイミングで最適な量を服用しなければならない。
そこでMedisafe(メディセーフ)の出番だ。薬を飲むという体験にゲームの要素を加えたアプリで、服用の時間と量を通知してくれる。友人や家族を1人登録することができ、薬を飲み忘れたら、その人物にも通知される(高齢の家族や支援の必要な知り合いがいる場合、この機能はとても便利だ)。

9. Google

Googleは検索だけではない。秘密プロジェクトを担う部門である「X」を通じて医療業界に参入しようとしており、すでにVerily Life Sciences(ヴェリリー・ライフ・サイエンシズ、旧Google Life Sciences)という部門が立ち上げられている。
医師や研究者は、患者の治療と病気の予防にデータを有効活用しようとしている。そのためにさまざまなプロジェクトを利用しているが、なかでもGoogleが持つデータの山は重宝されている。

10. Counsyl

Counsyl(カウンシル)は遺伝子検査のスタートアップ。人々が自身の健康について十分な情報を得たうえで、より良い決断ができるよう支援している。
具体的には、顧客が自身の遺伝的な特徴を理解し、健康維持の方法について賢い選択をできるよう、遺伝子カウンセラーが手助けを行う。さらに、妊娠を希望する女性や妊娠後の胎児の検査も行っている。

11. PatientPing

現代社会では、家を離れているときに医療が必要になることは決して珍しくない。 PatientPing(ペイシェント・ピング)を利用すれば、あなたがどこかで医療を受けると、かかりつけ医に通知される。
遠く離れた医療チームが協力し、より良い医療を提供できるだけでなく、患者にとっても時間の節約になる。

12. PatientsLikeMe

多くの場合、病気の診断を受けると孤独感に襲われるものだ。PatientsLikeMe(ペイシェンツ・ライク・ミー)は同じ病気の人たちをつなぎ、共感し合ったり、アドバイスを共有したりする手助けを行っている。
多くの人にとって最終目標は病気の治癒だが、同じ境遇にある人と絆を結ぶことができれば、希望を持つことができるかもしれない。

13. Empathetics

医師は驚くほど多忙で、1日にたくさんの患者を診察している。しかし、患者と人間的な関係を築く医師のほうが、患者の予後が良いという研究結果もある。
Empathetics(エンパセティックス)はそうした良い関係を築くことができるよう、医師を対象に、対人スキルのトレーニングを提供している。

14. meQuilibrium

多くの病気はストレスによって悪化する。さらに、ストレスが原因で病気になることもある。meQuilibrium(ミー・クイリブリアム)を利用すれば、組織や個人は一人ひとりに合わせたストレス管理プランを作成できる。
現代社会はとても動きが速い。レジリエンスを手に入れることは、健康的な生活を送るのに欠かせない要素だ。
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ヘルスケアの世界は目まぐるしく変化している。医師たちは新しい治療法だけでなく、人々が健康に長生きするためにできることを絶えず研究している。
現在、最高の評価を受けている医療行為も、10年後は時代遅れになるだろう。今回紹介した企業だけでなく何千もの企業が、未来の患者に大きな変化をもたらそうとしている。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jordan Kasteler/VP of marketing, Hennessey Consulting、翻訳:翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:RomoloTavani/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.