誰のための医療か――沸騰する「医療ツーリズム」の光と影
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日本の事情が分かる興味深い記事です。他方、医療ツーリズムがもともと産まれた背景と、日本で語られる医療ツーリズムは、結構事情が違います。そのため、外国での医療ツーリズムを日本の前提で見てしまうと、色々と見誤ります。日本については日本の事情を踏まえて考えれば良いですが、元々の源流のある海外事情は前提が違うという点は、この課題を考える上で重要なポイントです。
アジアではマレーシア、シンガポール、タイ、韓国が強く、中東ではドバイやトルコ。また、医療ツーリズムという言い方よりも、メディカルトラベルという言い方の方が妥当なケースも多いです。最近、研究者の英語書籍や論文はメディカルトラベルと書いているケースが多いかと思います。
真野俊樹先生の下記の本から読むと良いと思います。2009年出版ですが、メディカルツーリズムの歴史とアジアの勃興については未だその価値を失っていないでしょう。
グローバル化する医療―メディカルツーリズムとは何か
https://www.amazon.co.jp/dp/4000226266
真野先生とは研究をご一緒する機会があり、マレーシア、ドバイ、オマーンの医療機関を回ることができました。これらの国々は、マネジメントはマネジメント畑のプロが行っています。日本にもそういう病院がありますが、海外とは随分事情が違いますし、日本は国民皆保険制度との兼ね合いもあります。
さらにご関心のある方は、アマゾン等で英語でmedical tourism, medical travelなど検索を入れて、出版年順でソートすれば最新の情報や研究成果を盛り込んだ書籍をみつけられます。日本では真野先生が日本の文脈でも書かれていますが、他にはあまり書籍は多くありません。困っている人に手を差し伸べたいという気持ちは、医者ですから当然あります。実際、中国から手術を受けに来られる方は決して珍しくありません。
しかしながら、医療って、地域に根ざしたものです。よほど特殊な事情がない限りは、自分が住んでいる土地で治療を受けることをお勧めしています。検診ぐらいならいいのですが、癌の治療は年単位のスパンで考える必要があります。
少なくとも、産業としてお金のためにやることではないような気がするのですが。。医療は産業ではありません。警察や消防と同じ、「公」を目指すべきです。
この記事の中で、
「医療に国境を設けない。国内外を問わず、医療を必要としている人に、必要な医療を提供するのが私たちの役目ですから」
といういかにもかっこいい発言がありますが、粒子線治療は外国人だと500万円、明らかにお金で差別しています。金持ちしか受けられない医療を提供する国は、国際的に尊敬される国なのでしょうか。