ザッカーバーグ、第二子の育児休暇

フェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)とその妻プリシラ・チャンのもとに、第二子となる娘オーガストが生まれた。それを受けてザッカーバーグは、2カ月の育児休暇をとる(1カ月休んで1カ月働いたあと、また12月に1カ月休めるように調整が施される)。
ザッカーバーグは短期間ながら仕事を離れるつもりだが、現代起業界の大物たちの多くは、ワーク・ライフ・バランスについて異なった考えを持っている。
有名どころでは、フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、そのようなコンセプトは存在すらしないと公言している。それは同氏だけではない。
「ワーク・ライフ・バランスについて語りたがる人たちがいるが、わたしに言わせればそれは間違っている」と述べるのは、シリコンバレーのシリアル・アントレプレナー(連続起業家)で著述家のスティーブ・ブランクだ。
同氏は、自身が手がける最後の企業が株式を公開したのち、「家庭に戻って」子育てに専念すると決意した。「家族に投資するつもりなら、バランスなどとるべきではないとわたしは思う。(その投資先は)家族であるべきだ」
起業界のほかの象徴的人物たちは、このテーマについてどのような見解を持っているのだろうか。そして、どんな行動を通じて自身の考えを示してきたのだろうか。その一部を以下に紹介しよう。

1. イーロン・マスク

マスクは(まだ)、最も裕福な起業家というわけではない。だが、テスラとスペースX、そして「趣味」としてボーリング・カンパニーを経営する同氏は、現代でも最も興味深い起業家の一人だ。ペイパルにおける同氏の役割も忘れてはいけない(NP注:ペイパルの前身であるX.com社を1999年に設立した)。
マスクは、3度の結婚と離婚を経験している。2番目の妻、イギリス人女優のタルラ・ライリーとは、結婚と離婚を2度繰り返している。マスクと最初の妻ジャスティン・ウィルソンは第一子を生後まもなく亡くしたが、2人のあいだには5人の子ども(双子と三つ子)がいる。
ライターのエリック・マックは、2013年のあるイベントでマスクが発言した内容が印象的だったと話す。
そのときマスクは、ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいると断言する一方で、家族といっしょのときも、やりくりして仕事の手を休めないようにしていると語ったという。マスクによると「直接話しているとき以外は、つねに意思疎通をはかる必要はないから」だそうだ。
これは興味深い。この発言を、マスクの最初の妻ジャスティンがQ&Aサイト「Quora」に投稿した「億万長者になるために必要なこと」についての記述と並べてみよう。ジャスティンは元夫を名指ししているわけではないが……。
「あなたには確固とした決意がある。だから何なの? サメがうじゃうじゃいる海を裸で泳いだことはないわよね。身も心もボロボロの状態で無人島に流れ着いて、助けが来る気配すら見えない地平線をじっと見つめているときでも、その決意は揺らがないかしら?」

2. スティーブ・ジョブズ

アップルの共同創業者であるジョブズは、おそらくあなたがいまこの記事を読むのに使っているデバイスのビジョンをもたらした人物だ。
筆者が知る限りでは、同氏がワーク・ライフ・バランスについて特定して語ったことは一度もない。あったとしても同氏は、言ってみれば、そうした規範の一例とは言えなかった。けれども同氏は、力強いコメントをほかにいくつも残している。
最も引用されている発言のひとつは以下だ。「与えられた時間は限られている。だから、ほかの誰かの人生を生きて、それを無駄にするな」
ジョブズの名言のひとつであるこの発言は、一般には他人が立てた計画に従うだけの人生を戒める言葉として解釈されている。しかしこの言葉を、ジョブズの職業人生における成功と私生活における失敗の両方とからめて再考してみる必要もあるのではないだろうか。
誰に聞いても、ジョブズはワーク・ライフ・バランスに長けた人物とは言えなかった。自身が開発し1983年に発売したコンピュータに「Lisa」という娘の名前をつけておきながら、その子の父であることを否定するほどの人物だったのだ。
こうした視点からとらえてみるなら、この言葉は「自身のニーズを他人のそれに優先させろ」と言っているようにも解釈できる。まさにこれは「身勝手さ」の定義そのものではないだろうか。

3. リチャード・ブランソン

もちろん筆者は、ヴァージン・グループの創設者リチャード・ブランソンと面識があるわけではない。だから、ブランソンがどのくらいワーク・ライフ・バランスを成功させているかははっきりとはわからない。
だが少なくとも、同氏がワーク・ライフ・バランスの重要性を訴える努力をしていることはたしかだ。
「超」のつくシリアル・アントレプレナーであるブランソン(67歳)には、結婚して約30年になる2人目の妻ジョーン・テンプルマンがいる。交際期間も含めると、2人の付き合いはさらに長くなる。2人は1979年に生後4日目の娘を亡くしたが、その後、娘1人と息子1人に恵まれた。
2016年にブランソンはある記事で「家族がいなかったら、自分がいまいる場所には到達できなかっただろう」と書いている。その記事のタイトルは、まさに今回のテーマにうってつけの「ワーク・ライフ・バランスの大切さ」だ。
「わたしがまだ若く、駆け出しだったころ、両親は私を励まし、わたしの起業家精神を応援してくれた。私自身も子どもたちを応援しようと努力してきたし、子どもたち、そして妻ジョーンと毎日いっしょに時間を過ごすことを最優先にしている」

4. サラ・ブレイクリー

女性用補正下着メーカー「スパンクス」創業者、サラ・ブレイクリーは次のように述べている。
「かつてのわたしは、母親業というフルタイムの仕事を、スパンクスでの同じくフルタイムの仕事のうえに重ね着していた。そして、どうしてこんなに疲れているのだろうと不思議に思っていた。
わたしは自分の体調の変化に気づくようになり、物事を明晰に考えられなくなっていた。こうしたことは多くの女性の身に起こっているような気がする。
わたしたちは、そのうち解決策が見つかるだろうと思い込んでしまう。だが、マニュアルがなければ、本腰を入れた対策などできるわけがない。いまだにわたしは、開発中の商品のようなものなのだ」

5. ジグ・ジグラー

著述家・講演家のジグ・ジグラーは次のように述べている。
「成功しているとは、人生のさまざまな領域におけるサクセスストーリーが均衡のとれた状態にあることだとわたしは思っている。家庭がめちゃくちゃなら、本当の意味で仕事で成功しているとは言えないのではないだろうか」

6. ゲイリー・W・ケラー

不動産フランチャイズ「ケラー・ウィリアムズ・リアルティー」創業者、ゲイリー・W・ケラーは次のように述べている。
「『仕事』とは、落としても跳ね返ってくるゴムボールのようなものだ。だが、ほかの4つのボール『家族』と『健康』『友人』『高潔さ』はガラスでできている。落とせば、取り返しがつかないほどの深い傷がつき、さらに悪いと粉々に砕け散ってしまう」

7. ジャック・ウェルチ

ゼネラル・エレクトリック社の最高経営責任者を長年務めたジャック・ウェルチは次のように述べている。
「『ワーク・ライフ・バランス』などというものはない。あるのは『ワーク・ライフ・チョイス』だ。自身が選択し、その選択には結果が伴う」

8. エヴァン・ウィリアムズ

Twitter共同設立者で、現在はMediumのCEOを務めるエヴァン・ウィリアムズは次のように述べている。
「事業の失敗は人生の失敗ではない。だが、人間関係の失敗は人生の失敗だ」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Bill Murphy Jr./Executive editor of operations, Some Spider, and founder, ProGhostwriters.com、翻訳:阪本博希/ガリレオ、写真:R_Jasson/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.