心と体、魂と精神を育む場所

どんなオフィスなら、人が行きたいと思う場所になるだろうか? 簡単に言えば、心と体、魂と精神を育んでくれるオフィスだ。ヨガクラスめいた言葉だというのは承知している。だが実際のところ、それほど的外れというわけでもない。
オートマティックやザッポスといった複数の企業が、傷つきやすさを受け入れ、ユーモアや個性を伸ばすオフィスの設計を目指している。その基礎となっているのは、いま流行の「ありのままの自分を職場へ連れて行き、職業人の仮面は屋根裏にしまっておく」という考え方だ。
ここでは、未来の職場で提供すべき3つの要素を紹介しよう。

1. 動き

この秋までに、1万2000人を超えるアップル社員が新社屋に引っ越す予定になっている。テーマパークでもあり、遊び場でもあり、オフィスでもあり、そして公園(パーク)としての顔も多分に持つ新社屋には、「アップルパーク」というぴったりの名前がついている。
このアップルパークは、新たなオフィスの青写真として、オフィスというものがもつ可能性を垣間見せている。アップルの新社屋の背後にいるのが、デザイナーのジョナサン・アイブだ。同氏は、故スティーブ・ジョブズとの最後のコラボレーションとして、この白鳥の歌を手がけた。
全体的ビジョンとして、アイブが重視したものは動きだ。駐車場からオフィスまでの4分の1マイル(約400メートル)のハイキングにしても、エレベーターがかなり少ない「インフィニット・ループ」の4階分の階段昇降にしても、社員は絶えず動いていることになる。
つねに動いていると創造性が高まることは研究でも裏づけられているが、ジョブズがピクサー時代に引き起こしたことで知られる、思わぬ衝突につながる可能性もある。アップルはそのほか、キャンパスで2000台近いカスタムバイクを提供し、動きを促進するという。

2. 自主性

工業時代のメンタリティから情報時代のそれへの大きな変化は、自主性のなかに見てとれる。組み立てラインでの仕事では、あまり自由は認められていない。従業員の自主性は、いろいろな意味で安全上の危険をもたらしかねないものだった。
だが現代では、「熟練したリスク管理」には、開放性と柔軟性が求められる。1日をどれだけ賢く使えるかは、自身とチームの自主性をどれだけ高められるかにかかっている。
これは単に、モチベーションを最大限に高めるというだけではない。より迅速に、より良い判断を下せるようにすれば、組織全体の利益につながる。

3. 植物

植物だって? そう、そのとおり。世界でも指折りのクールなオフィスをざっと見ただけでも、植物が広く行きわたっていることがわかるはずだ。それどころか、バイオフィリア=生命愛(自然とつながりたいという衝動を表す素敵な用語だ)は、仕事の生産性を15%向上させると言われている。
植物が健康に良く、認知能力を高める効果があることも、複数の研究で実証されている。広さ30エーカー(約12万平方メートル)におよぶアップルオフィスの景観エリアに1万本近い木が配されているのも驚くことではないだろう。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、円形をしたオフィスの中央に位置する緑地エリアは、「そぞろ歩きや出会い」を促進するためのものだという。そしてもちろん、木になった果実の多くは、収穫され、文字どおり社員の栄養にもなる。
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未来のオフィスでは、この3つの要素を目にすることが多くなるはずだ。アップルパークは始まりにすぎない。レゴの新社屋やオフィスビルの「トウェンティ・トゥ」、中国の伝統を生かした都市プロジェクトの「山水城市」などが、続々とオフィスおたくの夢の実現に乗り出している。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jonas Altman/Founder, Social Fabric、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:Shaye Bigelow/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.