甘いチョコレートの苦い現実。フェアトレードが変える児童労働と不公平貿易
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以前,紹介しましたが,「チョコレートの真実」 http://amzn.to/2sNB9Wt を一読されることをお勧めします.
著者はカナダ人ジャーナリスト.本書冒頭で,著者は,世界のチョコレート生産の35%を占めているコートジボワールの密林奥深くに分け入り,カカオ農園で働く子供たちに出会います.子供たちは自分たちが育てた豆から何が作られるのかを知らない.自分に課された過酷な労働が,先進国の人々が愛するお菓子,チョコレートになることを知らない. カカオの生産に携わる子供たちは,チョコレートをまったく味わったことがないし,おそらくこれからも味わうことはない.
カカオの原産地は中南米.スペインによるアステカ帝国征服後,カカオはヨーロッパに伝わり,現在の我々にも馴染みのある消費方法が徐々に確立されていく.産業革命が起こると,それまで富裕層だけが楽しめたチョコレートは,労働者階級でも手に入れることができるようになり,おなじみの巨大ブランド企業が誕生する.
一方,カカオ需要の増加とヨーロッパ諸国の植民地政策によって,アフリカでカカオのプランテーション栽培が進められ,生産コストを安くするために奴隷労働が活用された.戦後,アフリカ諸国は相次いで独立を達成し,人身売買を含めて奴隷制は姿を消したはずだった.しかし,現在もコートジボワールには,監禁や折檻などを伴う奴隷労働が存在する.しかも,子ども.なぜか?
フランスからの独立後,カカオ栽培を中心とした産業振興により奇跡的な経済成長を遂げ,西アフリカの優等生といわれたコートジボワールは,1980年代後半に,カカオ豆の暴落から経済破たんを起こす.市場開放,内戦による武装勢力の衝突によって,コートジボワールのカカオ生産を支えていた近隣諸国からの移民労働者は去り,復活したのが子どもの人身売買と児童労働.
先進国と巨大企業はこうした不正義を見て見ぬふりをしている.なお,フェアトレードのような取り組みが広がりつつあるが,これも利益を追求する巨大企業のビジネスの一環として,フェアトレードをより安価に製品を市場に出そうと画策するようになっているそう.著者は言う 「チョコレートの本当の歴史は、何世代にもわたって、多かれ少なかれ彼らのような人々の血と汗で書かれてきた。未来を見通してみるとすれば、ずっと昔から続くこの不公正が正される見込みは,ほとんどない。」カカオを中心に途上国の支援に取り組んでいる企業として、Dari Kさんの取り組みには強い関心を寄せています。
「かわいそうだから寄付する」といったやり方ではなく、「技術指導し、高品質の商品をつくれるようにする」ことで、カカオ農家の収入を底上げする。
その取り組みを、ぜひ多くの方に知って頂ければと思います。
▼Dari K社の取り組みを少し紹介
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カカオと言えば『ガーナ』を思い浮かべる人は多いと思いますが、ほぼ同じ生産量をほこる国に『インドネシア』があることは知られていません。
なぜなら、インドネシア産のカカオ豆は日本にほとんど輸入されていないから...
美味しいチョコレートをつくるためには「発酵」という工程が必要なのですが、以下のような理由から、インドネシアでは発酵がされないまま出荷され続けていたのです。
・そもそも生産者が発酵のやり方を知らない
・発酵させて質の良い豆を作っても、発酵させていない低品質な豆とほとんど変わらない価格でしか買い取ってもらえない
そこで同社では、カカオ農家に対し、発酵の啓蒙活動を行うとともに、発酵技術を指導し、さらに発酵させた高品質なカカオ豆を直接買い取ることで彼らの収入環境の改善に取り組んでいます。
「がんばれば質の高いカカオを生産して所得があがる」というモチベーションを与え、「生産者自らが勝ち取るフェアトレード」を実現しています。
http://www.dari-k.com田島さんがコメントされているDari K。先日、京都の本店に伺いました。二年前にはカカオ農家を訪ねるツアーにも参加してきました。そこから見えたものは、フェアトレードの先にあるものです。現在は、カカオ農家のあるスラウエシのポレワリマンダール県にも駐在をおくいう徹底ぶり。農家から適正価格で買い取るという段階を超えて、農家とともに成長する企業と言えます。