個人の価値がベースになる「時間経済」の可能性

2017/7/25
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
25日は、NHK出版編集長の松島倫明さんが出演。「経済は選べるようになるか?個人が主役の『時間経済』の試み」(佐藤航陽のブログ)を題材に、時間経済の可能性について解説しました。

オルタナティブな経済

サッシャ 今日は、「経済は選べるようになるか?個人が主役の『時間経済』の試み」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の松島倫明さんです。
松島さんは、NHK出版の放送・学芸図書編集部編集長でいらっしゃいます。これまでに、『FREE』『SHARE』『MAKERS』などデジタル社会のパラダイムシフトを捉えたベストセラーを手掛けられています。おはようございます。
松島 おはようございます。
サッシャ これはどういう内容で、なぜピックされたのでしょうか?
松島 これまでのお金をベースにした経済とは違う「時間経済」がやってくるというのが大きなテーマで、「いよいよ来たな」という思いを持ちました。
僕は今ご紹介いただいたように『FREE』『SHARE』といった本で「無料経済」や「シェアリングエコノミー」と呼ばれるネット時代の新しい経済に注目してきましたので、「資本主義経済とは違うオルタナティブな経済が動き出したな」ということで注目しました。
サッシャ ネットによって色んなものの無料化が進んで、恩恵を受けたり変化を感じたりしていますが、経済は具体的にどう変わってきているんですか?
松島 今まではお金を媒介にしないと、物事が交換できなかったわけです。
ところが今、大きく言ってしまえば、デジタル情報になるものは原理的にはゼロ円でシェアできるんですね。
僕らはネット上では文字も音声も映像も無料で享受していますが、それがこれからどんどん増えて行きます。
最近では3Dプリンターもずいぶん普及してきましたが、これも今まではネットにはつながらないと思われていた「モノ」を3Dの情報にすることで、人とシェアすることができるようになりました。
僕らのテクノロジー社会は、あらゆるものが無料でシェアされる方向に進んでいくと思います。

個人の価値がベースになる

寺岡 その中で、時間経済とはどういうものなんですか?
松島 もともと、シェアリングエコノミーの中では「時間を一つの価値として、人とやり取りをする」ことは、すでにありました。
例えば、「今、時間が1時間空いているので何かお手伝いをするから、今度は君の時間が空いたときに僕を手伝ってね」と時間をシェアするなどです。
時間経済の場合は、この時間に加えて、それぞれの人が持つ独自の価値を紐づけた形になっています。その意味で、時間経済の単位は個人になるんです。
サッシャ なるほど。僕は結果的に、そういう仕事の仕方をしているのでしっくりきますね。この番組「STEP ONE」で言うと、僕の時間を4時間買ってもらっているという感じです。
松島 最近では「VALU」や「Timebank」というサービスが出てきまして、これも個人という価値をベースに、みんなでシェアをするものです。
ここではさらに、その価値や時間を保有することができるんです。
サッシャ えっ、そうなんですか?
松島 例えば、株式は企業の価値が株券に反映されるわけですから、その企業が成長すれば、株券の価値も上がります。
タイムバンクも同じです。僕がサッシャさんの1時間を手に入れた場合、それをすぐに使うこともできますが、長期的な保有も可能です。
将来サッシャさんの時間がもつ価値が高くなった場合には、それだけ価値も上がります。そこが時間経済の面白いところです。
サッシャ ということは、保有することが投資にもなるということですか? 
例えば、僕の1時間を誰かが1000円で買いましたと。そして、自分で言うのはこそばゆいですが、その後僕の価値が上がって1万円になった場合、それを他の人に売ってもいいわけですね。
松島 その通りです。もちろん、売るだけでなく使うこともできるわけです。時間がお金に代わる資本になるので、面白いなと思います。

今後の展開と価値を上げる方法

サッシャ なるほど。これからは会社に所属している個人も、時間を売るようになっていくんですかね。出資する側に回るのはイメージが沸くのですけれど。
松島 これからのオルタナティブな経済というものは、個人が主役になって、時間はもちろん、その人の評価とか信頼、人脈、さらには共感など、個人が単位になった社会関係資本が通貨の代わりになって、どんどんやりとりされるようになっていくと思います。
その意味では、シェアリングエコノミーの究極の姿として、会社員でもフリーランスでも、そうなっていくと思います。
サッシャ 思えば、産業革命以前は、多くの人が農家をはじめとして、個人事業主だったわけですよね。そこでは、自分が時間をかけたものを売っていました。
それが、産業革命が起きて株式会社が生まれると、みんな会社に所属することになり、自分の時間を一括契約で会社に売るようになったわけですよね。
その意味では、今後はみんなが個人事業主に近い形で、個人としてのバリューで仕事をしなければいけなくなるんでしょうか?
松島 そうですね。そして、ただ単にお金に換金しなくても回る経済の仕組みがやってくるということですね。
サッシャ だから、例えば僕の1時間が松島さんの1時間とテリー(寺岡)の1時間を足したものと同じ価値であれば、「僕の1時間を渡すから、二人の1時間を下さい」というやりとりも可能なわけですよね。そこではお金を介していないと。
松島 そうですね。今後のネット社会では、個人の信頼などの価値がどんどん可視化されていくことで、ますますこうしたやり取りが簡単にできるようになっていくと思います。
サッシャ 自分の価値を上げるためには、今のうちに何をやればいいんでしょうか?
松島 人気投票になっちゃうとバブルになってしまうと思います。大切なのは、先ほど挙げた信頼やつながりなどですので、それをつくるためにはどうすればいいのかと考えると、割とベーシックなことだと思います。
「人様の中でより良く生きていくこと」が、そうしたものを高めるのは、間違いないかなと思います。
サッシャ なるほど。「真摯に生きろ」ということですね(笑)。
松島 身も蓋もないですけれどね(笑)。
サッシャ いえいえ、いつの時代もベーシックなことが大事であると。松島さん、ありがとうございました。
松島 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした松島さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
26日はDrone Funf代表の千葉功太郎さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください