ファイナンスを知らないと、役員はおろか事業トップすら務まらない
コメント
注目のコメント
ファイナンスは経営にとって極めて重要な要素であり、戦略そのものであると思います。
さすがに今では基礎的な会計知識やファイナンス知識についてはビジネスパーソンの中でも理解が深まりつつあると思います。しかしそれでもなお、実際の経営の現場では、未だに「目先のPLを『つくる』ことが経営の目的である」といった、「PL脳」とでも呼ぶべきPL偏重の発想に基づいた意思決定がなされているのではないでしょうか。
そしてそれはまた経営者に限らず、投資家も然り、アナリストもまた然りです。そうでなければ、アナリストが経営者インタビューで「今期のPL、どれくらいの着地になりそうですか?」といった、「PLの当てっこ」とでも呼ぶべき質問を執拗に繰り返すこともないでしょう。
またこれらに拍車をかけて、すぐに「増収増益」といった見出しを持ち出すメディアの影響も大きいと言わざるを得ません。投資家が重視し、メディアが盛んに報じる以上、経営者が「PL脳」に囚われてしまうのは無理からぬ話です。そこには資本配分や投資効率、リターン、時間といった概念は抜け落ちています。
この「国民総PL脳」とでも呼ぶべき思考の呪縛から脱しないことには、日本からAmazonのような事業が生まれることは到底ないでしょうし、孫さんのような天才の出現に期待するしかありません。非常に深刻な問題だと思います。
経営者にとっても投資家にとっても、真に必要なのはテクニカルな「ファイナンス理論」でも「ファイナンススキル」でもなく、「ファイナンス思考」とでも呼ぶべき発想法ではないでしょうか。
少々大げさですが、本気で日本から新たな産業を創出したいと思えば、「ファイナンス思考」を身につけた経営者と投資家こそが必要であると私は思います。ファイナンスの重要性について、とってもキレイに、かつ、おもしろ、おかしく、読みやすくまとめられています。
『企業のトップと話すことが多かったのですが、そこで「日本企業って何でこんなにファイナンスが分からないんだろう」と感じていました。』
『今でも全然、ファイナンスに関する経験のない経営者が普通にいらっしゃいます。(中略)「営業一筋何十年だけど、財務3表は全然読めない。数字は弱いからね」などと言って済ませている人もいるほどでした。』
私が5年ほど前、日本企業の社長と一緒に、とある新興国へ行ったときのこと。
現地企業とのミーティングでは、CEOやCFOがファイナンスに関する突っ込んだ議論で盛り上がるのはもちろんですが、営業マネージャーまでもが”普通に”CFOアジェンダに口を挟んできたんですね。
対するこちらの日本企業の社長は、ファイナンスの議論になると「私にはわからないから」と、だんまりを決め込んでいました。
向こうの事業部門トップの方が日本の名だたる上場企業の経営者より遥かにファイナンスリテラシーが高いというのが私の5年前の実感。
いまは差が縮まっているはず、と願っているのですが…本記事、NPVが沢山出てきますが、私は大企業の新規事業担当の人には、NPVではなくリアルオプションで事業価値評価をして下さいといつも言っています。これはスタートアップとの連携でも同じ。PL脳ではロジカルに納得出来ないことが、ファイナンス脳だと理路整然と説明できます。期待効用で考えないと、新規事業はできない。
追記:PL脳って表現、よくよく考えたら、(c)朝倉です。失礼。(^^;