東芝は上場廃止にすべき――復活の可能性はどこにあるか

2017/6/7
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
7日は、Jキャピタルパートナーズの田中博文さんが出演。「東芝、決算なく株主総会 上場維持に悪材料か」(共同通信)を題材に、について解説しました。

前代未聞の株主総会

サッシャ 今日は、「東芝、決算なく株主総会 上場維持に悪材料か」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の田中博文さんです。
田中さんは都銀、日系証券でM&A、IPOなどの投資銀行業務に従事した後、 2010年にジェイ・キャピタル・パートナーズを設立。代表として活躍されています。おはようございます。
田中 おはようございます。
サッシャ 今回のお話について、記事では「もう言うのも疲れました」とコメントされていますが、大丈夫ですか(笑)。
田中 ははは、大丈夫です(笑)。頑張ります。
サッシャ 改めて、どういう話題なんでしょうか?
田中 「そもそも株主総会って何なのでしょう」という話からなんですけれど、上場している企業かどうかにかかわらず、定時の株主総会とは、過去の1年間の業績を決算承認してもらって、利益処分の承認を得る総会です。
そこにおいて、「決算が出せませんって、どういうことですか」という話なんです。
サッシャ 株主総会の意味が全くないと。
田中 そうですね。調べたことはないのですが、前代未聞ではないかと思います。
サッシャ 株主総会の延期をすることには、ならないんですか?
田中 そうですね。定時の総会は、決算後3か月以内と法令で決められているので、ここでやらなければいけない。
もっと言うと、会社法の中では定時の総会で決算承認を得ること自体が明記されているので、厳密に言えば今回の件は法令違反ということになります。
サッシャ 東芝は上場企業ですけれど、大丈夫ですか?
田中 そういったことも含めて、東京証券取引所から今までの内部管理体制が「上場に足る会社か分からない」ということで、注意する銘柄に指定されています。

“半導体売却”のポイント

サッシャ 決算が出せなかったとのことですが、東芝問題の現状はどうなっているんですか?
田中 まずは、一連の大きな流れによって、上場廃止になるのではないかというリスクがあります。債務超過で非常に危険な状態が2年続くと、上場廃止になるルールがありますから。
それを回避して、前期の決算を黒字にするために半導体の売却を行っているんですが、これはこれで色々とゴタゴタしているんです。
サッシャ そうですよね。政府も含めて海外には売りたくないという話もあった中、アメリカの2社や鴻海などで、ごちゃごちゃしていますよね。
田中 半導体の売却の話に限って言えば、いわゆるM&Aの世界なので、厳密なルールとしては、相手が誰であろうと一番高い値段を出したところと最初に交渉しなくてはいけないというルールがあります。
そう考えると、一部の報道では鴻海が一番高いとなっているので、その場合は鴻海とテーブルにつくことになりそうです。
サッシャ 鴻海は、日本政府からの圧力もありそうだから、シャープやアメリカのIT企業も入れて、丸く収めようとしているんじゃないかという話もありますよね。
田中 そうですね。結局、何でそういう形になるかというと、東芝が持っている半導体の技術や工場のラインは、今後10~20年の「第四次産業革命」におけるAIやIoTといったサービスに伴う、一番重要な部品の一つだからです。
そこにおいて、東芝の半導体は世界で見ても競争力が高い。これを海外に出してしまうと、日本が今後テクノロジーの国として立ち遅れてしまうと危惧されているんです。
サッシャ かつて、日本の半導体の世界シェアはすごく高かったですけれど、最近は低くなってきていますよね。それでも、東芝が持っている技術は世界的に見ても高いんですか?
田中 高いですね。NAND型フラッシュメモリにおいて、3次元化する技術がサムスンと並んでクオリティが高いことで評価されています。
サッシャ この売却の流れはどうなると思いますか。そして、東芝は窮地から脱出できるんですか?
田中 個人的な気持ちだけを申し上げると、やはり買収側に関しては、何らかの形で日本企業が絡んで欲しいと思います。
それは先ほど申し上げたように、こうした技術は極力海外には出さずに、日本に残しておきたいからです。
ただ、一番高い値段をつけたところに売らなければいけないところもあるので、それであれば海外でもいくつかファンドの会社があります。そうしたところに買収していただいたうえで、将来的に上場してもらうのが、ストーリーとしては一番きれいかなと思っています。

東芝は上場廃止が必要

サッシャ それによって、東芝は健全な経営に戻るのでしょうか?
田中 半導体の売却によって2兆円という額が入れば、会社存続の危機は逃れられます。
ただ、やはり個人的には、今回の決算が出せないことも含めて、内部管理体制ができていないので、一旦は上場廃止もやむを得ないと考えています。
サッシャ 東芝の白物家電を使っている人もいると思うのですが、一般への影響はないんですか?
田中 ユーザーの方にとって、上場廃止の影響はあまりないです。
あるとすれば、東芝の株を持っている株主が、取引の売買ができなくなることですね。相対取引はできますが、そこの不便さは残ります。
サッシャ 今回の件から、どんなことが学べるのでしょうか? 改めて今後についても教えて下さい。
田中 これは非常に根の深い問題で、これまで東芝は日本の総合家電の雄だったわけですが、やっぱり「場の空気」ってあるんですよね。
先代から続いてきた経営について、なかなか反対ができない中で、海外の原発の会社を買ってしまったこともあると思います。
ここはやはり、一度リセットをするために、上場廃止が必要だと思います。
ただ先週、たまたま東芝でエンジニアや営業などに携わる若手の方とお話しする機会がありました。
彼らは東芝本体のことを極めて憂いていたんですが、「僕たちが頑張らなければいけない」と言っていたんです。
サッシャ 立て直す気力があると。
田中 はい。彼らは素晴らしい人たちだと思います。そういう人たちがいる限り、東芝はこれからも頑張っていけるだろうし、そのためには一度しゃがんで、もう一度大きく復活してほしいというのが、個人的な思いですね。
サッシャ そこでは、うまく世代交代ができるか、ということもあるわけですね。
田中 ありますね。
サッシャ 田中さん、どうもありがとうございました。
田中 どうもありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした田中さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
8日はインテグリティ代表の田中慎一さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください