これから百貨店やショッピングセンターが生き残るための方法

2017/6/19
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
19日は、三井不動産 ベンチャー共創担当の光村圭一郎さんが出演。「街から消えるハレの場。だれが『百貨店』を殺したのか?」(NewsPicks編集部)を題材に、百貨店やショッピングセンターの現状について解説しました。

百貨店苦戦の真犯人

サッシャ 今日は「街から消えるハレの場。だれが『百貨店』を殺したのか?」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の光村圭一郎さんです。
光村さんは編集者を経て、2007年に三井不動産に入社。その後2014年に「Clipニホンバシ」を立ち上げ、スタートアップと大手企業によるコラボレーションを支援する活動をされていらっしゃいます。
サッシャ おはようございます。
光村 おはようございます。よろしくお願いします。
サッシャ まずはこの記事の内容ですけれど、どういったものなのか改めて教えていただけますか?
光村 リスナーの皆さんもよく「百貨店が苦戦している」とか「どこそこの店舗が閉店してしまう」というニュースを聞くんじゃないかと思います。
実際、百貨店全体の売り上げ高のピークは1991年にありまして、大体10兆円くらいありました。
サッシャ ちょうどバブルの頃ですね。
光村 そうその前後です。でも、2016年には4兆円減って6兆円になっているという話なんですね。
こう聞くとバブル崩壊した後の経済の低迷や消費マインドの落ち込みなどが要因になっていると思われるかもしれませんし、最近のインターネットのECサイトが奪っているのかなと思われるのかもしれません。
でも、実は違うというのが、この記事のポイントの一つになっているんです。
サッシャ そうなんですか?!
光村 はい。
サッシャ じゃあ、真犯人というか、売り上げを減らしている一番の要因は何ですか?
光村 先ほど申し上げた、減少した4兆円のうち、景気低迷・消費マインドの落ち込みが1兆円分くらい。
サッシャ ということは、10兆円が9兆円になっているんだったら、辻褄が合うと。ところがそれが6兆円になっている。3兆円分はどこにいったんでしょう?
光村 記事のなかでは、例えばルミネのような、いわゆるファッションビルが2兆円分くらい取っていったのかなと。
サッシャ ファッションに特化したモールですね。
光村 あとは、我々もやっているようなららぽーとやイオンモールみたいな、いわゆるショッピングセンターが増えてきて、これが1兆円分くらいかな、といわれています。
サッシャ でも、意外に1兆円分だけですか?
光村 と、記事では書いていまして。そんなものなのかな、という感じですね。
サッシャ これは、なんでですか?

増えるカジュアルな選択肢

光村 百貨店というと、これまで新宿や池袋などのターミナル駅にあって、ドーンと大きなお店を構えていて、「休みの日は家族揃ってみんなでそこに行きます」みたいなスタイルがあったかなと思うんです。
しかし、ファッションビルとか百貨店より品揃えが良いショッピングセンターが広がりました。皆さんの家の近く、例えば家から車で30分くらいの距離にあって、気軽に買い物ができるような場所が増えていったので、わざわざ百貨店に行くとことが目的にならなくなったと分析されていますね。
サッシャ やっぱり、百貨店が高級なイメージもあるのかな。あと「全部高級なものを買わなくてもいいじゃん」みたいなのもあるじゃないですか。
光村 それはあると思いますね。
サッシャ 百貨店は惣菜も割といいものが揃っていて、一方、ショッピングモールだとリーズナブルなもので済ませられるとか、そういう選択肢が増えてくると。
光村 カジュアルなのもありますよね。

ECに向くモノ向かないモノ

サッシャ そこに、さっきは関係ないという話もあったんですが、EC、いわゆるオンラインショッピングに関してはどうなんでしょうか。
光村 記事のなかでは「ここ数年の動きなので」とは書かれてはいるのですが、やっぱり、ここ数年で一気に広がっている実感値はあります。
サッシャ 明らかに買っていますもんね。
光村 私が勤めている三井不動産も、銀座あたりにいわゆるファッションビルとかららぽーとみたいなものも作っているんですけども、そういう影響は日々感じるんですね。
実は、経産省で「日本のEC化率」、どういったものがECでどれくらい買われているのか、を調査しているんですが、2016年は個人向けのECの市場規模が8兆円くらいあったんですよ。
サッシャ 8兆円もあるんですか。
光村 はい。ただ、8兆円というのは、全体のものの売り買いのなかの5%分くらいと言われていて、まだまだ実は、そんなにいってないんですね。
サッシャ そんなに少ないんですか。
光村 いわば、全体の95%はいまだにリアルなお店で買われているんという話なんです。ただ、アパレル関連に絞ってみると、だいたい1.5兆円くらいECの規模があるらしく、EC化率が10%超え、というところです。
サッシャ アパレルに関しては、10%がオンラインで買われているんですね。
光村 「まだ10%」という見方もできるんですが、一方で、全体に占めるECの割合が5%であることからすると、その比率は高いので、かなり急速にEC化が高まっているのかなと感じます。
サッシャ ZOZOTOWN的な?
光村 みたいな感じです。
サッシャ ほぉ、そうなんですね! そうなると逆に、オンラインで買われていない商品ってあるんでしょうか。
光村 先ほどの経産省の調査によると、「食品・飲料・酒」というカテゴリーに関しては、実は2%くらいのEC化率になっているので、これはまだまだ全然広まっていないと思います。
サッシャ 一部、アマゾンとか楽天とか1時間以内に持ってくるサービスはあるんですけど。
光村 生鮮品を扱っていますけど、やっぱりまだまだ食品をネットで買うこと自体、定着していないのかな、という感じですね。
サッシャ その他は?
光村 アパレル関連でいうと、実物を見たり試着をしたりということが必要なものは、まだまだECに流れていないという印象がありますね。サイズのフィット感などは重要なので。
寺岡 Tシャツくらいだったらいいかなと思っちゃうけれど、靴とかはちょっと難しいですよね。
サッシャ ああ!
光村 まさに。靴の場合は「履いてみたけれどやっぱり痛かった」とか「サイズが合わなかった」というのは致命的になっちゃうケースが多いので。
寺岡 女の人は、特にヒールとか履くと大きさだけじゃなくて、履き心地とかもあるので。
サッシャ 女性はそういうのもあるんですね。
光村 なのでその辺は少しリアルな店舗の強みが活きるかなとは思うんですけれど、落とし穴もあるんです。
靴は、色や形、柄など種類もたくさんある。しかもサイズも小刻みに揃えないといけないので、在庫を揃えるのがすごく大変なんですよね
サッシャ 在庫管理がリスクになると。
光村 ええ。バックヤードの面積もとってしまうし、試着のために探してきて出す、という人件費もばかにならないのとで、本当はこういうのこそECに向いているはずなんですよ。
ビジネス的にはサイズが合わなければ返品できるなど、工夫をしているところは伸びています。

生き残り策は地域別セレクト

サッシャ 新しい買われ方がされているんですね。そうなってくるとリアル店舗、ショッピングセンター、百貨店、この後どういう選択になりますか? 
当然、オンラインショッピングが増えてくことはまず間違いないと思うんですけど。
光村 記事のなかでは、百貨店やショッピングセンターの生き残る道として、いかにネットと融合していけるかが挙げられています。最近、いわゆるオムニチャネルという言葉が流行っていますけれど、そういうキーワードが挙げられています。
先ほどの靴の例で言えば、「フィッティングは大事なので店頭でしていけるけれども、それを買うのはECにして、お客さんは持ち帰らずに家に届くのを待ちましょう」そういう仕組みの例も紹介されていますね。
私としてはこれに加えて地域のニーズに即したショッピングセンターのあり方というのが必要なのかなと感じています。
サッシャ と言いますと?
光村 正直我々が作るものも含めて、全国どこに行っても同じような顔ぶれのショッピングセンターというのがあるのかなと思っているんです。
サッシャ 入っているブランドも似てたりとかね。
光村 それをいかに、地域の方々が本当に欲しいものをセレクトして入れられるか、きめ細かくやっていくかが大事かなと思っています。
すごく大きいショッピングセンターを作っていく上でも、小さく(地域に)フィットして作っていくのが、方向性としてあるのかなと思っています。
サッシャ なるほど。
光村 もうひとつ大事だと思うのが、ショッピングセンターで過ごす時間自体を豊かにしていく必要があるのかなと思っています。
「そこに行けば楽しいことがある、何か体験できるからショッピングセンターに行くんだ」としていくのも大事ですね。
サッシャ イベントスペースというか、エンターテインメントスペースになるってことですね。
寺岡 ショッピングモールには、よくライブをやっていたり映画館が併設されていたり、そういったイメージがありますね。ただ、百貨店となるとそういうのは難しいのかなと思いますが。
光村 最近、百貨店のなかでもそういった取り組みを進めているようなところがあります。
例えば、ものづくりの体験ができて、そのもの自体の良さを実感してもらって「だから多少高いんですよ」ということを説明できるとか、そういったことは広がっていますね。
サッシャ 僕は百貨店とかは、もうちょっと子供の遊ぶ場所とか、もうちょっとファミリー向けにした方がいいんじゃないかと思うんですけどね。
光村 我々が作っている施設の中には、例えばキッザニアみたいな施設が入っていると、子供が「買い物」をして「楽しむ」ことで「学習」とか「教育」ができる、といった掛け算みたいなことが増えています。
そういった要素が増えてくるといいなと思いますね。
サッシャ そうですよね、百貨店もそれがもうちょっとあると行きやすくなるかなと。ありがとうございました。
光村 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした光村さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
20日はみずほ銀行国際為替部 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください