今後の日本の教育は、“探究”する力を養うことが重要だ
2017/5/10
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
10日は、コモンズ投信会長の渋澤健さんが出演。「【こどもの日】『未来の仕事』を手に入れるために必要な4つの能力」(Inc.)を題材に、今後の教育において必要なポイントについて解説しました。
“知る”よりも“探究する”教育
サッシャ 今日は、「【こどもの日】『未来の仕事』を手に入れるために必要な4つの能力」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の渋澤健さんです。
渋澤さんは証券会社勤務などを経て、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー、そして07年にコモンズ(現コモンズ投信)を創業しました。多くのメディアや講演などでも活躍されています。
また、「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の子孫でもいらっしゃいます。よろしくお願いします。
渋澤 よろしくお願いします。
サッシャ 今回のニュースをピックされた理由は?
渋澤 3つ理由がありまして、第一に、親として教育に関心を持っていることがあります。
この点で言いますと、いまは競争社会と言われますが、これからは競争だけでなく、共に創る“共創社会”の時代だと思っています。
第二に、私が昨年に経済同友会の教育改革委員会の副委員長に携わっていたことに関連します。
経営者の方は、企業の価値をつくるのは人材であると考えているため、教育改革に関心が高いんです。
そして第三に、私が長期投資の仕事をしているからです。
長期投資とは、自分の子どもが生まれたとき、未来の教育のために10年、20年、30年とコツコツ積み立てるような投資のことです。
そうした時間軸で考えると、二点目でお話ししたように企業が価値をつくるためには人材が必要なので、その側面からも教育について常に考えています。
サッシャ いま3つのポイントを拳げていただきましたが、「基本は人材であり、その根源は教育である」ということですね。
渋澤 そうですね。
サッシャ そのなかで、今回のニュースは子どもが育つうえで4つの能力が必要になるということですが、改めて何が必要になるのでしょうか。
渋澤 ここでは、「チームで仕事をする」「効果的にコミュニケーションする」「数字よりもバターンを学習する」「知ることよりも探求することに目を向ける」の4つが挙げられています。
このなかで、私は4つ目が一番大事だと思っています。
教育は、どちらかというと「知ることが教育である」と思われていますけれど、いまの世の中には正しい答え、一つの答えはないですよね。
そのため、「探究する」「正しい問いかけをする」「好奇心を活かす」という教育のほうが大事じゃないかと思うんです。
寺岡 教育には「詰込み」のようなイメージがありますよね。単語を覚えたり、年代を覚えたり。
渋澤 それに関しては、いまの時代であればスマホで検索すれば答えが出てしまいます。それよりも、探究ですよね。
子どもって小さいときは好奇心の塊です。でも、それが教育を受ける中で、どんどん小さくなってしまいます。
日本の教育の問題点
サッシャ それは、日本の教育のどこに問題があると思いますか?
渋澤 教育の出口において「安定したいい仕事に就きましょう」となっているので、「いい幼稚園、いい学校、いい大学を出よう」という高度成長期のモデルが、まだ続いてしまっているところですね。
そして、企業にも問題があると思うんです。
いままでの日本企業は新卒一括採用だったので、画一的な人材しか入ってきませんでした。でも、色んなルートや経験を積んだ人が入ってくるのが、本来の姿だと思います。
サッシャ 良くも悪くも「変わった人」が少ないですよね。
渋澤 本来であれば、変わった人が新しいイノベーションを起こすわけです。要するに、枠の中からはみ出る人ですよね。
サッシャ 先ほど経済同友会の教育改革委員会に携わっていたとお話しされていましたが、どんな提言をされていたんですか?
渋澤 たとえば、学校の責任者は校長先生ですが、人事権がありません。そういう点などは昔から提言しています。
サッシャ なるほど。また今回の記事では「チームで仕事をする」とありますが、これは日本人が割と得意な気がするんですね。いまの教育でも大丈夫かなと思うのですが。
渋澤 どちらかというと、そうですね。だけど、チームについては、日本は部活という強い文化があります。
僕の次男なんて、1年の360日は部活に縛られている感じで、チームプレーといえばチームプレーですが、他のことが何もできず、あとは勉強とゲームくらいです。
サッシャ 学校教育では、もう少し部活以外においてもチームでやるべきことがあるんじゃないかと。
渋澤 子どもには、もっと色んなことが経験できる「無駄な時間」があっていいと思うんですよね。
“枠の外”に出る力が重要
サッシャ 学校に行き、部活に行き、塾に行くだけでは、そこから先の可能性が出てこないということですね。
コミュニケーション能力に関してはどうですか? 日本人は世界的に見ると苦手だと言われていますが。
渋澤 日本人は、枠の中でのコミュニケーションはすごく上手だと思うんですよね。
お互いに気を遣うとか、非言語のコミュニケーションができますよね。
サッシャ 空気を読むということですね。
渋澤 でも、枠の外に出ると、いきなり話さなくなってしまうことがあります。
そのなかで、この記事にも書いてありますが、コミュニケーション能力に必要なのは言語ではなく、それを支える教養、リベラルアーツだと思うんです。
サッシャさんはドイツ出身ですが、リベラルアーツはドイツでもアメリカでも日本でも共通します。つまり、共通言語なんです。だから、この教育は非常に重要だと思います。
これは、大人になってからわかりました。私は大学が工学部で、そちらの方が実用的だなと思っていたんですけれど。
サッシャ なるほど。また、日本においては言語の部分でも英語教育がまだまだというところがありますよね。ヨーロッパでは数か国語を話せるのが当たり前です。この点も変化すべきですか?
渋澤 そうですね。これに関しては私も親として悩みがありまして。
私自身は帰国子女なので英語を普通に話せるんですけれど、子どもは日本で教育を受けているので、「学習のための英語」になっているんですよね。
つまり、使える“生の英語”じゃないということです。
サッシャ ほかのアジアの国と比べても、英語の能力は抜かれてしまっていますよね。
渋澤 日本における英語の勉強は、正しい答えを出すという訓練ですよね。
でも、言語は本来コミュニケーションをするツールです。
サッシャ その教育の仕方も変えなきゃいけないわけですね。
これからどんどんオートメーション化されて、機械化されていきますから、子どもたちもどんな仕事に就くのか問われる時代になってきます。
どんなスキルを持って社会に出るかって大事ですよね。
渋澤 だからこそ、先ほどお話しした自分で考えられる探究が大事ですよね。
たとえば、AIはすごい技術だと思いますけれど、枠の中にあるデータをすべて蓄積するものです。これに対して、人間の能力は枠の外に飛躍できることだと思います。
ですから、その部分をどんどん活かさなければいけないと思いますが、いままでの教育は幕の内弁当のように枠の中に収めるものでした。
これからは、バイキング方式で「なんでもあり」という部分も必要ではないかと思います。
サッシャ なるほど。人材を生むという意味では、時間がかかる問題ですから早急に変えて行かなくてはいけませんよね。
渋澤さん、ご提言をいただきありがとうございました。
渋澤 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした渋澤さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
株式会社ニューズピックスは、ソーシャル経済ニュース「NewsPicks」を提供する会社。2015年4月に、株式会社ユーザベースより分社化。 ウィキペディア
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