「GとLの世界」での日本の戦い方

2017/4/25
NewsPicksでは2月に「NewsPicksカンファレンス」と題したイベントを開催した。その中から「GとLの世界」というテーマで実施した冨山和彦氏によるトークセッションをリポートする。モデレーターはNewsPicks編集長の佐々木紀彦が務めた(全4回)。
トリクルダウンが起きなかった理由
──「GとLの世界」というと、ちょうどトランプ氏がアメリカ大統領選挙に当選したときに冨山さんのインタビューをNewsPicksに掲載しましたが、この記事は過去2番目に多いPick数となりました。
その後のトランプ氏の動きもウォッチしていると思いますが、世界は冨山さんが記事で提言された「GとLの流れ」のイメージ通りに動いているのでしょうか。
冨山 グローバル化が進行していく中で、国と国の格差が明らかに埋まってきました。私がこれまで新興国のプロジェクトをやっていても、それはやはりグローバルな案件でした。
グローバル化は国と国の格差を埋めるという側面がある一方、国の中にある格差はグローバル化の影響を受けやすい。これはもうそういったメカニズムなのです。
(世界は)その格差をトリクルダウンが緩和するという仮説でこれまでやってきたのですが、実際にはトリクルダウンは起きなかった。
なぜかというと、これは私が以前から言っている通り、産業構造上では「グローバルな産業」と「ローカルな産業」の間に直接的な産業連関は存在していないからです。
「ローカルな産業」ニアリーイコール「中小の製造業、もしくは下請け製造業」の世界だったら、トリクルダウンが起きるのですが、いまはどこの先進国に行ってもそのような産業構造ではありません。